古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

老人漂流社会

2015-09-02 | 経済と世相
日曜のNHK特集で「老人漂流社会 急増する親子共倒れ」なる放送がありました。ご覧になった方も多いと思います。失業した子供が親と同居し、親子共倒れになるというルポでした。同居する子がいることで、生活保護は打ち切られるというのですから、昔は、子供を育てれば、ひとまず老後は安心でした。それが、かえって子がいることで、生活が成り立たないというのです。
先日読んだ本(『会社本位主義は崩れるか』奥村宏著岩波新書、1992年)にこういう記述がありました。
【(日本は法人資本主義であり)法人資本主義とは、法人である会社に富が集中する。
例えば土地、国土庁が発表した1991年度「土地白書」によると、私有地のうち法人所有地の比率は91年1月1日現在で13.7%、1年間に0.8ポイント上昇した。70年代にはその比率は8%台だった。
土地の法人化現象を生んだ要因の一つとして社宅が挙げられる。社宅の着工件数は88年度から急増し91年度は4万戸に達した。
 住宅を建設することは従業員福祉になると同時に会社の含み資産の蓄積になる。企業はエクイテイ・ファイナンスなどで調達した資金で土地を買いあさった。
 社宅と言う制度は欧米にはあまり見られない。住宅は国や地方など公共機関が整備していくと言う政策があるからだ。ところが日本では従業員の福祉対策として社宅を立て、労働組合もそれを要求する。その結果、社宅に住める人と、そうであい一般の人との事実上の所得格差を拡大していく。
株式については、土地よりもっと早くからもっと激しく法人化が進んだ。個人持ち株比率は戦後間もなくは70%近い比率だったが、1991年度23.2%にまで低下している。
(以上はバブル時代についての記述ですが以下の点は今も同じでしょう)
 日本の社会は、会社に富が集中し、その結果個人も会社人間と、非会社人間という区別ができてくる。会社に属している会社人はハッピーだが、会社からはみ出した人間は誰も面倒をみてくれない。
 われわれの生活はすべて会社で成り立っている。サラリーマンとしての会社人はもちろん、その家族も、子供も老人も、みんななんらかの形で会社と関係を持っている。】
つまり、日本の社会保障は会社が担い、政府の社会保障はそれを補う形でできてきたのだ。
2000年代に入って企業は、契約社員などの制度を利用することで、従業員の非正社員化で人件費を軽減してグローバル化に対応しようとした。
正社員と非正社員の格差は、賃金以外の従業員福祉の格差が大きい。雇用保険、医療保険、年金などの社会保障面が更に大きい。昔の制度は、会社に属している正社員を前提にして作られていたので、会社からはみ出した人の社会保障はまったく不十分なのです。
だから、介護が必要になって息子と同居し、その息子が非正社員で職を失った場合、放送されたような悲劇になる。
会社員の身分を持つ人を対象とするのでなく、国民一人ひとりを対象にする社会保障制度にしなければなあない。安保法制などに血道を上げている時期ではないと思うのですが・・・

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