古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済(2)

2017-09-03 | 読書

2013年3月20日、黒田東彦が日銀総裁に就任し、4月5日、国債購入額を2倍の60兆円にする「異次元量的緩和」に踏み切りました。その際「逐次投入」はしないと大見得をきったが、2014年10月には国際購入額を年80兆円にしました。量の拡大が困難になると、2016年1月にマイナス金利付き量的・質的金融緩和」しました。

 金融機関の所有する国債の多くは、国民や企業が金融機関に預けたお金をもとに購入されるのですから、国際のマイナス金利化とは、国民の側から見れば、金融資産を少しずつ削り取られることを意味し、実質的に資産課税に等しい。本来、国家の徴税率を決めるのは国会で、国会での議決を経ずに徴税権を日銀が手にしたと言える。

中央銀行が徴税権をなし崩し的に手に入れることは、民主主義の崩壊です。

そもそも中央銀行は貨幣価値の維持が本務なのに、「物価を上げる」と主張するのは、奇妙です。物価上昇をさけぶ日銀は困ったものだと考える一般国民は多い。日銀のアンケート調査でも「1年前と比べて物価が上がったと考えた人(7割)に、その感想を聞くと「8割第雄人が「どちらかといえば困ったことだ」と回答している。日銀は生活者の立場にたっていないのです。

 

 「テロとゼロ金利」の常態化は国民国家と資本主義からなる近代というシステムが機能不全になっていることを示す。これを直視せず成長至上主義にしがみつこうとすればするほど社会の秩序は崩壊に向かう。

 成長は近代の産物で、近代システムが盤石であるためには、利益を獲得する空間の存在が必要です。空間が無限でなければ、利益獲得空間がいつか限界になり、システムは転換を求められます。

1970年代後半に国民主権国家と資本主義の限界が明らかになり、その後21世紀に突入した後の世界にはアメリカ金融・資本帝国とEU帝国と言うふたつの「帝国」が登場しました。アメリカもEUも公式に「帝国」を名乗っているわけではないが、非公式の「帝国」です。金融空間を拡大するには、他国の金融制度にも金融制度の在り方に干渉せざるを得ない。公式であれ、非公式であれ、他国の内政干渉をするのが、帝国主義です。

 アメリカ金融資本帝国が完成したのは1995年。国際資本の完全自由化が実現し、ルービン財務長官によって「強いドル政策」が打ち出されました。これは、ニクソン大統領が1971年にドルと金のリンクを断ち切って以来のドル安から一転、ドル高に舵を切ることで、世界中のマネーをアメリカに集中させる政策です。

これに脅威を感じた欧州は、EUを立ち上げました。1979年、欧州通貨制度の導入に踏み切り1992年、マーストリフト条約でEUが創設され、1999年にはユーロを導入、通貨統合も完成させました。(欧州に限定され土地に立脚しているという点では、旧帝国です。)

 

アメリカ「帝国」は、土地に制約されず「電子・金融空間」に立脚することで、「無限空間」を前提とする新帝国です。

国境なき「電子・金融空間」の中で資本家や巨大企業のおりなすネットワークは、もはやアメリカ金融・資本帝国というよりアメリカという土地に立脚しない無国籍の「資本帝国」と呼ぶほうがふさわしい。

 そして資本帝国は、その誕生地であるアメリカの国民すらも帝国の臣民にしようとしている。それに対する謀反が2016年のアメリカ大統領選挙だった。

 それに対してEUは、アメリカ「帝国」に対抗すべく構想されましたが、・・・・・

「結論を、一言でいうと、世界の経済構造が変わっているから、従来の経済構造を前提に考えられた政策は成功しない。その世界の経済構造が変わった証左が、ここ数十年続いているゼロ金利である。

 

「麦わら帽子」(喫茶店)に行き週刊文春(8月31日号)を見たら、宮崎哲也さんのコラムが面白い。

アベノミクスは成功しているというのです。

去る6月19日IMFが年1回の対日審査を終え日本経済の現況について声明を発表した。フィナンシャル・タイムズはこれについてアベノミクスは成功と報じた。2012年の『導入以来、企業利益の増加、雇用と女性の労働参加率の引き上げに成功している。見本経済は過去5四半期連続で潜在成長率を上回る成長をとげてぃる。民間消費の伸びは2016年にプラスに転じ、民間投資も増加した。失業率は過去最低水準に低下し、有効求人倍率は過去最高水準になった。』ところが、日本のメデイヤは報じていない。

FTの5月1日の社説は「アベノミクスは失敗しておらず、打ち止めにするどころか継続すべき政策だ。」

「成功への障害がいくつもあった中で、もっとも深刻な障壁として達はだかったのは、安倍政権自身の失策だった。それは消費税の5%から8%への増税だ。」

「理論上、アベノミクスは積極財政による景気刺激策を含むはずだったが実際には、それは2013年しか行われなかった。この4年間日本は財政を大はばに引き締めた。予想通り物価上昇に向かう勢いは失速した。

「安倍氏が4根に錠も首相として権勢を誇ってこられたのは、経済に展望をひらいているからだ」

「安倍氏は経済対策に集中すべきだ・」

 

宮崎さんのこの評価を水野さんの所説とくらべると、アベノミクスは、アメリカの金融・資本帝国への対応を目的と考える、即ち、輸出企業の輸出能力の増強で対応できると考えるのなら、成果を上げていると評価できるのではないでしょうか。