古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

新自由主義の帰結

2017-07-29 | 読書

福井大学教授の服部茂幸さんが、近年岩波新書を3冊出している。

『新自由主義の帰結』 2013年5月

『アベノミクスの終焉』2014年8月

『偽りの経済政策2017年

目次をパラパラめくってみたら、この著者のいいたいことは、小生の思っていることと同じだと感じて、読んでみることにした。3冊を通読しましたが、要するに最初の本で述べていることを最近のの本経済に適用して、2冊目、3冊目は「アベノミクス」の批判で、2冊目が中間報告と言う位置づけのようです。

そこで、「新自由主義の帰結」から紹介します。

「新自由主義の帰結」の前に「自由主義の帰結」の説明が必要です。

1930年代、ケインズは世界大恐慌は自由放任経済の帰結であると論じ、政府による総需要管理の必要性を訴え、アメリカではニューデイール政策が実施された。ケインズやニューデイールの考え方を受け継ぎ戦後資本主義を形成していたのは、福祉国家であり、大きな企業、大きな政府、大きな労働組合の資本主義であった。むき出しの市場の力を規制する制度によって、戦後の資本主義は経済成長と経済的平等を両立させてきた。多くの人々は、少なくとも先進国においては古典的な貧困は過去のもの、あるいは近い将来には解決できるものと考えていた。

しかし、ハイエクやフリードマンなどの新自由主義経済学者たちは、大きな政府による経済管理は非効率であるだけでなく、人間の自由を奪うといい、ケインズ主義に反対した。

こうしたケインズ主義、福祉国家、混合経済に対する反対は戦後直後にはすでに存在していた。しかし、大恐慌と第二次世界大戦の記憶が生々しい時代には、彼らの主張が広く受け入れられることはなかった。

 しかし、70年代のスタグフレーシヨンは、戦後資本主義とケインズ経済学を失墜させた。代わってハイエク、フリードマンなどの影響力が強まった。フリードマンはスタグフレーシヨンはケインズ経済学に基づくマクロ経済政策が原因であると論じた。80年代、イギリスのサッチャー、アメリカのレーガン、日本の中曽根といった新自由主義に基づく政権が誕生し、彼らは福祉国家、大きな政府、労働と金融の規制と言った戦後資本主義を支えていた制度を解体する。

 同時にアメリカは世界各国に新自由主義の制度と政策を押し付けた。アメリカのソフトパワーに支配されたIMFの構図調整政策によっても新自由主義の政策はアメリカから世界各国に広がり、かくして新自由主義の時代が始まった。

 新自由主義は、市場の見えざる手による資源配分が効率的であると主張する。それだけでなく、市場における選択は自由の基礎であり、政府による規制は個人の自由を奪うと論じてきた。

 こうした新自由主義の帰結はどうであったか。これがこの本での主題です。

 2008年の世界的金融崩壊で、新自由主義の考えに従って政策が行われ、結果、アメリカとイギリスの経済は復活したと思われた。英米とは逆に1990年代の日本経済は長期に停滞していた。そのため、日本でも、英米を見習い、新自由主義の考え方による改革を行うべきという考え方が強まった。小泉政権の構造改革はこの考え方であった。結論を言うと、

 2002年~07年の主要先進国の一人当たり成長率を見ると、米国の成長率は高くない。日本は長期停滞の中にあると思われ散るが、アメリカとさほど変わらない。「経済復活を遂げたアメリカ」と「長期停滞が続く日本経済」というイメージは誤りである。

 アメリカ経済が成功したのは、スーパリッチに富と所得を集中させることであった。