古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

人工知能の核心

2017-06-28 | 読書

中学生棋士の29連勝で将棋の話題がにぎやかです。そこで、将棋に関連する本を読もうと、『人工知能の核心』(羽生善治&NHKスペッシャル取材班著、2017年3月NHK新書)を図書館で借りてきました。読み終えて、羽生善治と言う人は実によく人工知能を勉強していると感服しました。

将棋ソフトの基本的考えは、指し手でする変化盤面の評価関数を計算して指し手を選択するというものですから、膨大な計算量、ビッグデータ処理を可能にするハードウェアの進歩が、必要になります。

次のような記述ぶりに羽生さんの勉強ぶりがわかります。

人工知能には「時間」の概念がない。

人工知能の開発には「時間」の要素を取り入れることが課題になります。

例えば静止画像のデータを扱うのには人工知能は長けている。しかし動画になると、画像データを連続でとらえる処理は計算量が爆発的に増えてうまくいっていない。

 逆に言うと、がんの診断で人工知能が成果を出しているのは、X線写真がそもそも静止画像だからです。

 私は「美意識」には「時間」が大きく関わっているように思うのです。

 たとえば、棋士が将棋ソフトの指し手に覚える違和感、煎じ詰めると一つ一つの手は素晴らしくても、そこに秩序だった流れが感じられないことに由来しているように思います。

 人工知能が「時間」の概念を獲得できるかという問いは、これから大きなテーマになっていく。

 対極の際、棋士はおおまかには三つのプロセスで将棋を考える盤面に向き合った棋士は、相手の指し手を受けて「直観」で大まかな判断をするところから始める

将棋は一つの局面で。平均80通りの指し手があると言われる。そこを、「ここは中心ではない。急所、要点ではない」と思い切って2,3手に絞るのです。それ以外の可能性は考えません。ありうる手をすべて検討していたら膨大な時間がかかってしまいます。

こうして手を絞り込んだ後に、今度は「読み」に入る。これが第二のプロセスです。「直観」によって手を絞り込んでいるにも関わらず10手先をすべて読むことは多くの人が想像する以上にはるかに難しい。

そこで登場するのが、3番目の「大局観」。一手一手を検討することからあえて離れて序盤から終盤までの流れを総括して、先の戦略を考える。

この「大局観」の1番のメリットも、第一のプロセスである「直観」と同じで無駄な考えを省略できることです。

つまり、考えずに済む手を引き算するのが大局観であると言えます。

「直感」と「大局観」では「図形の認識能力」が鍵です。

アルファ碁を開発したヂープマインド社は、大きな目標として「汎用人工知能」をめざしている。囲碁を学習させた時の内容をそのままで他の分野に転用することは出来ないにせよ、学習の仕組みは同じヂープラーニングを用いているからだ。更にいえば、汎用性を持つ人工知能の開発を目指すベンチャー企業は世界中にある。一筋縄ではいかないだろうが、ここ数年の進歩のスピードをみていると、その実現の日はそう遠くはないかもしれない。

そのときかつてのワープロとパソコンのように、パソコンが人工知能にとって代わられている可能性もある。