古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

将軍さまの日本経済論

2017-06-26 | 経済と世相

『なぜ日本経済が21世紀をリードするのか』(徳川家広著、2012年2月NHK新書)という本を大学図書館で見つけ借りてきました。

著者は、世が世なら将軍さまですが、政治経済評論家、翻訳家として活躍されてみえるようです。

徳川さんは、「今から10年経たないうちに、日本が全世界から憧れの目を持ってみられる“唯一の先進国”となり全世界が日本モデルの模倣に躍起となる」しかも「世界における日本の立場が劇的に変化するであろう原因は日本ではなく、今の世界経済の在り方にある」と説きます。

「1980年頃に復活した資本主義経済が、ついに力つきようとしている」

つまり、資本主義が変容することが、日本の社会を世界のリード役に押し出す。従って日本経済の本当の強さを理解するには、資本主義の本質を知らないといけない。全6章のこの本で第1章から第4章までを資本主義経済の解説に費やしています。

資本主義の終焉を、徳川さんは、米国経済の現状から説明する。

アメリカ企業はIT技術による労働力の代替と海外の低賃金国への労働過程の「輸出」という手段で人件費をどんどん圧縮し利潤を増やしている。

産業革命は、エネルギーを労働力の代替としてきた。自由主義的法制の下で、資本家が利潤を増やそうとしてエネルギー使用を増やすことで、労働者は職場から駆逐され、その結果、需要が縮小するというのが資本主義の根にある病理です。

この病理を持つ米国を支えているのが、ドルの基軸通貨制とエネルギー。

米国の「帝国主義」は植民地と言う形をとらない。米国自体が植民地状態から戦争を通じて独立を勝ち取った。植民地支配は国是に反するのです。米国の採用した帝国主義戦略は第二次世界大戦後の米国の経済的優位に基づいた「ドル本位制」。冷戦の中で米国の軍事力を支えなくてはいけないという要請から、いわゆる西側諸国はアメリカが金本位制を離脱した後もドルを基軸通貨として受け入れてきた。米国政府の金の備蓄量と無関係にドル紙幣が発行され、しかもそのドルが世界のどの国でも受け取ってもらえる基軸通貨であるという現実を、米国は徹底して活用しました。輸入をどんどん増やして国民の生活水準を維持し、輸入代金を輸出で稼いだ外貨で支払うのでなく刷り増したドルで支払い、国内経済活性化のために発行する国債を、外国政府にひきうけさせてきたのです。

 その一方、エネルギーは社会の労働力に追加される富の源泉である。平均値を見れば、エネルギー消費の多い社会ほど生活水準が高い。

現在の米国は日本や仏・独に比べ一人当たりエネルギー消費は約2倍です。平均的米国人が本当に日・仏国人の2倍の豊かさを享受しているとも思えないが、彼らがエネルギーを大量に消費する独自の生活様式を打ち立て、それを当然とみなしていることは事実です。米国人の一人当たりGDPは、日・仏国人とあまり変わらない。一人あたりで米国人の生み出す富が日本人やフランス人とさして変わらないのに米国人のエネルギー消費が日本人やフランス人の倍だということは奇妙です。

 一人当たりGDPと一人当たりエネルギー消費(生活水準)の間のこのズレは、なぜか?ドルが基軸通貨であり、石油輸出機構の決済通貨という事実に原因がある。

もしドルが基軸通貨として諸外国に受け取ってもらえなくなったら、米国人は売れるものは何でも売らなくてはならない。そうなったとき米国にとって最も輸出しやすいのは石炭や天然ガス、石油などエネルギー資源であう。また原油輸入を減らさざるを得ない。ドルが基軸通貨でなくなることで、米国人のエネルギー消費は日本人やドイツ人の水準へと降りてきます。

ドルが1基軸通貨でなくなり、米国が覇権国でなくなる日は近いと思われます。

 さてその時日本の命運はどうなるか。

現在の先進国のうちで先進国にふさわしい経済力と生活様式を維持できるのは日本だけになると徳川さんは言う。

 

日本には、移民問題がない。エネルギー消費効率が高い(GDP1ドルを生み出すに必要なエネルギーは世界で一番低い)。技術水準も高い。

米国の覇権が終焉を迎え、日本は思わぬ恩恵を受けることになる。それは「ドリ幻想」から覚醒するからです。

日本は現在1兆ドルを超える外貨準備の非常に大きな部分を米国財務省証券で保有している。外貨準備が膨れ上がるのは、日本が貿易黒字を、特に米国に対して出し続けているから。国民全体の利益を考えれば、米国に対して貿易黒字が出ない水準まで円をきりあげ日本人お購買力を強化すべきでしょう。あるいは輸出企業の競争力が大切だというのなら、国内で大規模な所得再分配を実施して低所得者層の購買力を増やし輸入を増大させる。脳駅黒字を減らし円の上昇圧力を抑えるべきです。