古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

武器輸出

2016-09-08 | 経済と世相
 『武器輸出と日本企業」(望月衣塑子著、角川新書、2016年7月刊)を読みました。
著者は、東京新聞社会部記者です。
武器輸出については、佐藤内閣の「武器輸出3原則」がありました。
1967年佐藤首相の国会答弁で
① 共産圏諸国への武器輸出は認めない。
② 国連決議により武器等の輸出が禁止されている国への武器輸出は認められない。
③ 国際紛争の当事国またはその怖れのある国への武器輸出は認められない。
さらに76年2月、三木首相が「政府の統一見解」を発表した。
① 3原則対象地域については武器の輸出は認められない。
② 3原則対象地域について武器の輸出を慎む。
③ 武器製造の関連設備の輸出については、武器に準ずる。
基本的に政府は武器輸出に慎重な姿勢をとってきたが、多くの防衛企業は武器輸出の解禁を強く要望してきた。
2014年4月、安倍内閣の下で事実上解禁になった。解禁は安倍首相により急速に進められたという見方もあるが、それは一面的である。製財官一体となった地ならしは09年~12年の民主党政権下でも着々と進められ、11年12月、野田政権の藤村官房長官談話で、武器輸出を大幅緩和する方針が決定された。
安倍内閣が閣議決定した「防衛装備移転3原則は
① 国連安全保障理事会決議などに違反する国や紛争当事国には輸出しない。
② 輸出を認める場合を限定し、厳格審査する。
③ 輸出は目的外使用や第三国移転について適正管理が確保される場合に限る。
この原則では、「紛争の怖れのある国」は禁輸対象から外されイスラエルや中東諸国への輸出にも制限がかからない。新原則で禁輸対象になる国は、北朝鮮、イラン、イラクなど12か国だけだ。
 2015年10月には、「防衛装備庁」が設立され、防衛庁の外局として武器輸出の旗振り役となりました。
防衛装備庁の動きは素早く、国際協力銀行による武器輸出支援を検討中。武器輸出の支払いが滞り、日本企業が赤字になれば国が不足分を補てんする「貿易保険」の適用も議論されています。
「貿易保険」適用の第1号案件として中止されていたのが、オーストラリヤでの潜水艦建造事業だ。
2014年4月、オーストラリヤと日本は船舶の流体力学分野に関する共同研究を進めることに合意、水面下で日本の「そうりゅう」型潜水艦のオーストラリヤゆしゅつを画策した。
幸か不幸か、この案件はフランスが受注することになって、日本の輸出は沙汰やみだ。
要するに、これまで原則として武器輸出はしないという方針だったのですが、安倍内閣の方針は、このところ武器輸出に積極的に取り組むという姿勢に転向しています。

このことが意味するところを考えてみたいと思ったのが、この本をぃ手にした動機です。「戦後70年、日本は武力の放棄・交戦権の否認を掲げてきた。それらを捨て、これからを担う子供にとって戦争や武器を身近でありふれたものにしようとしている。この状況を黙って見過ごすわけにはいかない。」と筆者ものべています。
ドローンについても一章を設けています。
世界で進無人戦闘機開発に対して、どんな美辞麗句をならべて、安全保障上の意義を強調しても無人戦闘機の被害者を前にして、人を殺めることの正当性は主張できない。武器輸出を促進する欧米各国では、軍産複合体の巨大化が進み世界中に被害者が生み出されている。
私たち日本人は、武器輸出に踏み切ったことで、欧米と同じ世界に一歩踏み出した。本当にこのままでいいか。
なしくずしに進んで逝っていいか。
説得力ある論述が述べられていました。
しかし、私が知りたいと思っていた次の二点の解説は、残念ながら不十分でした。
 一つ。かつて湾岸戦争の頃、「日本はお金を出しても戦争には参加しない(血の貢献はしない)」と、国際的に批判されたことがあります。
でも、テロ組織やフセインが手にしている武器は欧米諸国の生産・輸出したものです。だから、兵器を輸出している国が兵士の血の貢献を果たすべきであり、武器輸出していない日本が血の貢献を迫られる理由はない、「日本の政治家は何故このことを主張しないのか」、

 もう一つ、アベノミクスの一環としての武器輸出です。金融の超緩和は、景気にとって一時的な対策であって、本格的な景気拡充には需要の喚起が必要です。この需要拡大策として武器輸出を考えている、と思うのです。民主党政権が武器輸出路線を採ったのも大企業の景気拡大に武器輸出による需要拡大のねらいがあったのでは?と思います。