古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

ハードランデイング?

2015-05-08 | 経済と世相
人気のエコノミスト二人の本を読みました。
浜矩子著『もうエコノミストに騙されないために』(毎日新聞社、2015年3月刊)
藤巻健司著『吹けば飛ぶよな日本経済』(朝日新聞、2015年3月刊)
The purpose of studying economics is not to acquire of ready-made answers to economics questions ,but to learn how to avoid being deceivedby economists
「経済学を学ぶ目的は、経済の諸問題について出来合いの回答を手に入れることではない。経済学を学ぶ目的は、エコノミストに騙されないようにするためだ」[
お浜さんの本は、この経済学者ジョーン・ロビンソンの言葉で始まります。
一体世の経済学者は、「何について騙そうとしている」と、彼女は怒っているのか¥1100(税別)のこの本をGETしてしまいました。
 金融と通貨を専門とする浜さんは、「中央銀行は通貨価値を護る存在」であるべき、と考えているのでしょう。だから、中央銀行が「物価を上げる」(換言すると貨幣価値を下げる)とか、為替を安くする(これも自国通貨価の価値を下げる)ことを目的とする政策をとることなど我慢できないのでしょう。そうした経済理論に反撃を加えるたため、この著を著したというのが、読み終わっての私の感想です。
 こうした政策を続ける結果はどうなるでしょう。
 これについて詳述するのが藤巻さんの著書です。藤巻さんはこういう。
残念ながら、この期に至っては「財政破綻/ハイパーインフレ」のハードランデイングは不可避だと思います。
『自国通貨の価値をどんどん下げることに情熱を燃やす中央銀行。そのような日銀のありさまが投資家たちの不信感に火をつけてしまえば、誰も円を買わなくなる。そうなれば、円相場は暴落、崖から転落しあの世行きです。次の恐慌はひょっとして日銀恐慌として歴史に名を留めることに?』
 浜さんの主張は、藤巻さんのハードランデイング論と同じです。
円が下落し、財政が破たんするって、具体的にどんなことが起きるの?」この疑問に二人の本がどう描いているかを辿ります。
 私は、正直に言って、財政が破たんするとどういうことが起きるのか、良くわからない。企業が破たんすると、約束した支払いができなくなります。国が破たんしたら公務員の給料や年金が支払えなくなるのか。だがそうなれば、政府は当然日銀にカネを印刷してくれるよう依頼する。そうなれば、日銀は拒否しないでしょう。お札を印刷して給料も年金も払うことになる。そうすると、今だって政府は不足するお金(予算の半分)を、国債を発行して日銀に引き取ってもらい、日銀はその代価にお札を印刷しているのです。そのお金で政府は支払いをしている。今とどう変わる?貨幣価値が暴落するからインフレになる。と言う人もいる。では。不動産を買っておけば、困らないのでは?
藤巻さんによれば、
トレーダーは、「ある国で行われている経済政策が正しく、景気がこれからよくなる」と思えば「その国の株・通貨を買い、債権を売る」。逆に経済政策が誤っている」と思えば、「その国の株、通貨を売り、債券を買う」のが原則です。
  藤巻さんの主張は、勿論ドル資産を買って置け、です。FRBの方針がドルの価値を保存するであれば、私も全資産をドルにします。しかし、日銀と同様通貨価値の保存に関心がないみたいです。日銀だけでなく、各国中央銀行とも、異次元の金融緩和に熱心でお札の増刷に熱心です。
 その場合、各国資産に分散するという手があります。が、幸いにして分散しなければならないほど沢山資産を持ち合わせません。
 藤巻さんは、「事ここに及んでは、ハイパーインフレというハードランデイングしかない」と言います。しかし、消費者物価上昇は消費税増税の影響を除いて計算すれば、2%未満です。
ここで80年代後半のバブルの時代を振り返ってみます。円高不況を恐れた政府は超低金利政策に走りました。その結果物価は上がったか。当時は円高であったため、モノの値段が上がると、海外から安いモノが入ってきました。しかし、海外から入らない不動産や日本株は暴騰しました。今回はどうなるか。今回は円安なのです。当然物価は上がる筈です。でも、現状それほど上がっていないことを藤巻さんはこう説明しています。
コップに水を注ぐ時、水がコップの容量以内なら溢れない。しかし、容量を越した瞬間、水は周りに溢れる。今は溢れ出す直前の状態だというのです。
藤巻さんの説が当たるかどうか、わかりませんが、ハイパーインフレが起こるか否か、日本の金融政策の行方を注視している必要を、2冊の本を読んで感じます。