古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

劣化ウラン弾

2014-10-03 | 経済と世相
「劣化ウラン弾」をご存じでしょうか。
私も知らなかったのですが、堤未果著「もう一つの核なき世界」(小学館文庫、214年8月)を読んで知りました。本の著者は参議院議員の川田龍平氏の夫人。著書に『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波新書)。
【劣化ウランとはウラン235の同位体存在比が天然のものより少ないものをいう。ウラン238を大量に含む、原発からの廃棄物だ。
放射性物質なので廃棄できず、原発所有国にとっては長い間悩みのタネだった。アメリカ政府はこの廃棄物をどうにかして利用できないかと研究に研究を重ねてきた。その結果生まれたのが、この劣化ウランを機関砲弾にするという方法だ。
劣化ウランからなるこの弾は、分厚い戦車の鋼板を貫通し、破片を出さずにガス化する際の高熱で、戦車に乗っている兵士を即死させ、放射性ガスを放出する。処理できずもてあまされていたこの<核のゴミ>の国内蓄積量は1940年代に原爆を開発した「マンハッタン計画」以来50万トンにのぼり、使いたければエネルギー省がタダ同然でいくらでも支給してくれる。こうして、<安い、固い、便利>と三拍子そろった小型破壊兵器「劣化ウラン騨」が誕生した。
 劣化ウラン弾が発する2酸化ウランや8酸化3ウランは、高度3000メートルの範囲で約2か月かけて微粒子をまき散らし風に乗って拡散される。ゆっくりと地上に舞い降り、土や水、食べ物を汚染していく。湾岸戦争では320トン、イラク戦争では2200トンの劣化ウラン弾が使用されたという。
 アメリカ武器弾薬化学兵器司令部は、1990年に作成した劣化ウランについての報告書の中で「体内に残留し被曝する場合、がんの要因になり、科学的毒性は腎臓に損傷を与える」と明記している。たとえ被曝量が少なくとも長期間繰り返し粉塵にさらされると、時間が経った後でがん化するという。】
第1章「アメリカの被爆者」で、劣化ウランの影響で悩む米国の帰還兵の実態を述べています。さらに、
イラク戦争のもたらした最大の被害は、「がん」と「障害児」だという。
「それも普通のがんではありません。普通のがんは一度に1か所から発病する。ところが今、イラクで急増しているのは、1人の体のあちこちから同時に種類の違うがんが発生する現象なのです。たとえば一人の患者が、肺がんと乳がんと血液がんを一度に発症する。そして、親のどちらかでもがんに侵された場合、生まれてくる子供は先天性の障害を持つケースが非常に多い。もはや、日本のみが唯一の被爆国だとはいえない。
第2章「戦勝国の歴史教育」
 歴史認識や歴史教育が、日中、日韓の外交問題で、しばしば話題になるが、日米の間にも歴史教育を考える。原爆投下の意思決定をめぐる問題です。
第3章は「核なき世界」vs「核ある世界」
オバマ大統領のプラハ演説を詳述しいています。
第4章は「日本が起こすチェンジ」
と記述していますが、この本の意義は、(元防衛庁官僚)柳沢協二氏の解説が明確に述べています。
 本書において著者が取り上げている劣化ウラン弾による被ばくも・・・
私自身、」イラクにおける劣化ウラン弾の健康被害についてはほとんど知識を持っていなかった。当時、官邸にいてイラクへの自衛隊派遣を統括してきた立場にいたが、米軍による劣化ウラン弾の使用について、政府として全く情報を持っていなかったし、米軍に問い合わせることもなかった。それは、米軍の戦争であり、自衛隊に犠牲者がいない以上、日本政府かかわるべきことではない、と認識されていた。
アメリカにとっての脅威は、他の国による核攻撃よりも、テロ組織による核使用だ。そのため」核の拡散を防止するために、「核なき世界」が望まれる事態になった。
「オバマ大統領のプラハ演説のもつ最大の意味は、世界最強の核保有国であるアメリカが、ソ連の崩壊とグローバル化の進展の中で、核の戦略的優位性よりも核を含む大量破壊兵器が拡散し、抑止が効かない非国家主体による使用の危険のほうがより大きな危険になると認識したことにある。それは、核の廃絶が、理想としてではなく、戦略目標として追及されるべき時代の到来を予感させるものだ。
「有事核持ち込み」の密約が問題になった。密約は確かに問題だが、より根本的な問題は、日本政府が、日本を拠点としたアメリカの核攻撃を是認するかどうか。
日本から出撃した米軍機が核攻撃を行った場合、今度は日本が当該敵国の核報復にもなりうるのである。日本の海岸沿いにある54基の原発は電源喪失させれば容易に原爆になることを3.11は証明した。
アメリカ任せでない、日本の核戦略(核認識)が求められる所以です。