古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

続・バブルのしくみと日本の先行性

2012-09-21 | 経済と世相
前便の本について、もう一つ(カッコ内は小生の補足です。)。
以前(2011年)、こう書いたことがあります。
「イラク戦争でフセインは処刑されたが、米国が開戦に踏み切った背景には、フセインが石油の決済をドルでなくユーロで行おうとしたことがあると私は考える。世界の金融システムは戦争に訴えても争われる問題なのだ。」
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20110210

 資源国と先進国との間の交易条件が、先進国側で悪化しことが、今日の先進国の不況の真因であり、アメリカは、これに対応するため、金融のグローバル化を行って、世界中の資金をアメリカに集めるシステムを構築したと、水野さんは説く。
(私は、製造業でアメリカが稼げなくなったために、金融のグローバル化で稼ごうとしたと、考えていましたが、水野さんはアメリカに限らず、資源価格の高騰から先進国側すべてが稼げなくなって、金融に走ったと考えているようです。)、
萱野 アメリカは、金融の自由化や石油の金融商品化などを通じて、ドル機軸通貨体制に基づいた金融帝国化の道を歩んでいきます。とりわけその動きは、1995年以降顕著になる。2003年のイラク戦争は、そうした金融帝国をささえる国際経済のシステムを防衛するために軍事力が使われた。(アメリカはシステムを守るために軍事力を行使するが、領土を守る、或いは侵攻するために軍事力を使わない)
水野 フセインがユーロで石油代金を受け取ることにしたのは、2000年11月でしたね。アメリカとしては、冷戦後、石油に裏付けられたドル機軸通貨体制の中で金融大国を築いてきたところに、フセインにユーロ建てにされたら、その土台が完全にぐらついてしまうということなんですね。
萱野 アメリカからすればたまったもんじゃない。基軸通貨だからこそ、アメリカの財政赤字や経常赤字がいくら膨らんでも、各国はドルを買い支えてくれるわけだし、そこでのドルの循環によって自分たちは世界中のモノを購入できるわけですからね。
水野 フセインが(石油取引を)ユーロにしてしまったら、おそらくその段階でユーロは機軸通貨になる条件をぜんぶ満たします。アメリカがイラクを攻撃したのは、ここだけは譲れない最後の砦だった・・
萱野 71年にニクソン・ショックがあって、ドルと金の兌換が停止されますよね。それ以降、ドルが機軸通貨としての価値を担保できるのは石油とのつながりでしたから、もしそれがなくなれば、ドルは基軸通貨であることの土台を失ってしまうことになりかねない。そこでフセインがドルの代わりにだしてきたのが、ユーロだったという点も、アメリカを震撼させたのでしょう。
水野 軍事的な面でいうと、サウジアラビヤとアメリカとの間には、アメリカ軍がサウド王家を守る、その代わりにサウジアラビヤはアメリカの国益に貢献する、という「密約」があるといわれています。アメリカの国益に貢献する、とはつまりドル建てで石油代金を受け取るということです。
萱野 アメリカのもっとも特徴的な点は、植民地支配をせずに経済的なヘゲモニーを確立してきたところです。・・・ モンロー主義はさらに、アメリカがヨーロッパとは異なる覇権原理をアメリカ大陸で打ちたてようとしたことの表明であると考えています。――グローバルな経済空間を支配することで、各国の領土主権を無効化する。そうした方法で覇権を確立していったのです。(TPPもその流れ)
 そうしたアメリカによるグローバルな経済空間の支配も、今回の金融危機で曲がり角にきているのかもしれません。