古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

変人の研究

2012-02-26 | 読書
先日、大学図書館の新着本の棚に新潮社刊「落合博満 変人の研究」という本を見つけました。
手に取ってみると、著者は小説家のねじめ正一、初版は08年4月だが、この本は11年10月の3版です。
 中日の昨年のセ・リーグ制覇で売れると見込んで増版したのだな、と目次を見てみると、全8章のうち、第2章で江夏豊、第3章で赤瀬川原平、第4章で豊田泰光(元西鉄内野手)、
第5章で富士真奈美(女優)+高橋春男(漫画家)と筆者との「落合を語る」対談を入れている。

これは面白そうだ、と借りてきて読みました。

 終始一貫、落合の言動を引用して、彼は変人と説いているが、私には、さっぱり変人とは思えないのです。

落合が変人だと考える日本人社会のほうがおかしいのでは?と思ったのですが、・・・・

さわりを紹介します。まず、落合語録(太字)から。
人それぞれ、からだの造りも頭の構造も違う。だから、今までの選手もみんな自己流というか、我流でやってきたんだと思う。
カラダのバネからものの考え方まで、なにからなにまで自分とそっくりな人間に教えられれば、それはその人間のレベルまではいくだろう。
ところがそんなことはありえない。完全に同じコピーを作るのは不可能なのに、日本の社会はそれをやりたがる。」
つまり選手は一人ひとり違うので、一人ひとりの状態を見ることが大事だ。
監督一年目のキャンプで、一軍、二軍を一緒に練習させましたね。同じグラウンドにいれば、二軍の選手が一軍の選手と比べて、どれくらい力が劣っているか、自分で見極めることができますね。(筆者)
骨董屋の目利きの方法です。骨董屋には人を食ってる人がいる。落合も人を食いますね。人を食うということで思い出したのは細川護熙さんのことですね。
いま、とてもいい焼き物を作っているんですが、もともと知識や心得があった人じゃないんです。総理を突然辞職して、だいたい自分であたりをつけて、辻村史朗さんという陶芸家のところにいきなり住み込んじゃう。奈良の山奥で一人やっている人なんですが、弟子を取らないので知られていて、細川さんは、作品を見せて頂きたいといって対面して、互いに名前も告げずに、そのまま居ついちゃうんです。いいとも悪いともいわれず、ただ許可されて毎日ロクロを廻し、修行を始めた。
とってもきたないところで、野生の暮らしをしている陶芸家でね。ただ、その世界では凄い人なので、たまに客が来ます。“おや、元首相に似た人がぼろぼろになって焼き物をつくっていますね“と思って質問するんです。でも、「うん、みんなそういいますね」というぐらい・・・細川さんはさんざん悪口を叩かれながら修行して、一年ほど経ったら「もう来んでもええやろ」と言われる。これは卒業したかな、と思って、細川さんは自立してやっていくんです。(赤瀬川)
ある種の人の食い方です(辞任は、総理よりも陶工に向いていると思った?)。
(落合氏とは)野球の話が多いですか?(筆者)
野球の話しかできないの、あいつは。一般常識ゼロです。(豊田)
落合采配の是非は、山井大介の完全試合問題で、一気に全国区になりましたよね。・・豊田さんのご意見はどうですか?
オレなら代えないね。采配を云々する以前に、あのまま山井を投げさせたって、中日はシリーズを負けることはなかったでしょう。やっぱり、52年間日本一になっていない、という重圧が、どこかにあったんですかね。・・
―――私は、あのとき、中日の白井オーナーの顔が浮かんだんじゃないか、という気がしてなりません。落合は白井さんに拾ってもらった人でしょう。これはぜひ豊田さんにお聞きしたかったんですが、本来なら落合は監督になれる人間じゃなかったですよね。
普通はなれませんよ、あんなのは。(豊田)
よく、上の方が落合を使っているよ。(江夏)
(監督)就任する時は、現役選手時代の「オレ流」がたたって評判が悪く、白井オーナーが押し切った形で監督に就任した。周囲は不協和音だらけ。
「球団オーナーも時代と戦わなきゃ駄目なんですよ。中日の白井オーナーはすごいですよ。中日を辞めたら高く売れるようなイメージもあるようですけれども、実際はなかなか球団が来ないと思います。白井オーナーみたいな方が何人いるかが問題でしょう。」(筆者)
そして・・・(2004)開幕戦の川崎先発。中日に高額な年俸でFA移籍したものの、肩痛で3年間一度も当番機会のない川崎の先発・・・
「川崎の先発は1月3日に決めていた。このチームを変えるために必要だったんだ。チーム全員で先発した彼の背中を押してやることがな。」
川崎は5点を取られてノックアウトされた。しかし、この試合中日が逆転して勝った。
立浪は将来の中日監督と筆者は言う。
「レギュラーを剥奪され、代打の切り札とはいえ、黙っていいように使われている感のある立浪こそ、なかなかの逸材である。
元中日監督の星野は選手としての立浪の才能を見抜いた人であるが、落合は立浪の監督の才能を見抜いた人である。」
「プロ野球に這入ってなかったら、今でもずっとサラリーマンをやっていたと思う。だって会社に行ってれば、おカネくれるものね。一生平社員というのは楽でいいんだろうな」。こういう発言を聞いても どこが変人なのだろう、と考えこんで、結論は「彼は自分の頭で考えて行動する」!
野球をやる場合に、一生懸命如何に野球するか考えて野球をする。野球人としては当然です。しかし彼の場合、24時間、自分の頭で野球する時を考えて、行動している。つまり、日本人は、自分の言動を自分の頭で考えて行うのでなく、世間の人が考えた言動に従ってそのまま行動する。そのほうが面倒でない。
すべてを自分で考えて行動する人間は、日本人の社会では変人?