古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

世界にだぶつく資本

2010-10-30 | 経済と世相
 10月24日の中日にロナルド・ドーアさん(ロンドン大学名誉教授)が「世界にだぶつく資本」という論説を寄稿していた。
 1970年代、IMFは「資本の自由化教会」だった。そのIMFの専務が「資本統制(資本の国際移動の統制)も視野に入れるべきだ」という「異説」を唱え始めた。
 その要旨は
 【IMF、世界銀行、米財務省という「鉄のトライアングル」が作った「ワシントン・コンセンサス」の枢軸的心情は市場原理主義だった。グローバルな資本市場の金融移動は、世界の資本のもっとも合理的な配分をもたらし、開発途上国の経済にも先進国の経済にも最上な成長率をもたらすといった。(金持ちの利益を最大化するシステムでもあった)
 もう一つ、無視された開発途上国を危機に陥れる効果。89年のメキシコ、97年タイ発アジヤ危機、98年ロシヤ危機、2003年のアルゼンチン危機など全部同じパターンだった。
 景気ムードが明るく、成長見込みがよいというと、ホット・マネーが流入。さらに景気はよくなるが、投資は生産手段より、大半が資産市場に集中、そしてバブル。
バブルが破裂の時期に近づくと慎重な外資投資家が2,3逃げ出す。すると、群集行動を特徴とする他の投資家がどっと出口へ。その国の通貨が底を尽き、世界の投資家はその国債を売る。利子率が高騰し、IMFに取りすがるしか国家の赤字対策はなくなる。
「キングコング」という映画の有名なポスターがある。摩天楼より背の高いゴリラと、足元のアリのように小さく、恐れおののく人間。「キングコング」は、気まぐれな国債市場。
戦くのは各国のマクロ経済の立案者だ。・・・
 IMFが「資本統制」云々と言い出したのは、ウオール街の資本がゼロ金利、量的緩和のアメリカに愛想をつかして、利回りの高い新興国へ投資されているためだ。既に1兆ドル近い金が動いたそうで、世界金融システムを混乱させる心配が大きい。】
 ドーアさんの問題提起は、「自由な資本移動は、はたして世界各国の国民の経済的福祉にとって、プラスなのだろうか?」
 資本移動が自由であると、高い金利が得られそうな国に資本は流れる。高い金利が得られるのは、経済成長が高い国だ。高い経済成長が見込める国は新興国だから、新興国にどっと流れ込む。そのメリットはある。かつての日本を見てもわかるように、発展途上国は、経済を成長させる資本が不足するものだから、成長に必要な資本を輸出で稼いでからでないと、経済を成長させることが出来なかった。ところが現在の新興国は、海外から資本を借りてこられるから、急速な経済成長が可能になった。ところが海外の資本というものは、いったん「これはヤバイ」と思ったらすぐ逃げ出し、その国の外貨準備が底をつきデフォルト(支払い不能)の危機になる。 かつてのアジヤ危機、ロシヤ危機などこれである。
 で、IMFが「こうした資本移動の制限も必要では」と言い出したのは、これまでは「資本の自由な移動は、国外から資金を一度米国に集め、その金を世界中で運用して儲けられるという(主として米国の)お金持ちにとって、都合のよいシステムだったからだ。それが、米国に集まるどころか、米国から逃げ出すようになった(最近の円高もその結果と思われる)ためであろう。
 さて、国債である。
通貨は各国の中央銀行が発行し、国債は政府が発行する。ところが近年、政府の発行する国債が“通貨”の役割を果たすようになった。米国政府は米国債を発行することで、政府財政の赤字を補填する。日本政府も同様である。最近の為替介入でも、ドルという通貨を買い支える資金は、短期国債を発行することで賄っている。こうなると、通貨は中央銀行が発行するが、政府も“国債”という名前の”通貨“を発行しているのではないか?国債の増発が、お金のだぶつきを助長し、それが国際的投機を助長している?と疑われます。