古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

脳はなにかと面白い(1)

2010-06-23 | 読書
気鋭の脳科学者池谷裕二さんの新刊がでました。『脳は何かと言い訳する』(新潮文庫)です。

同書から面白い話を紹介しましょう。

体と脳の関係

 理学療法の先生方と話をする機会がありました。リハビリをすると、若い人と年配の方では、若い人の方が早く買い回復して、早く退院します。それについて、一般に、若い人の方が「神経の再生」が早いからだと言われているのですが、今、これとは視点の異なった説も唱えられています。

 脳自体は、若い人も歳とった人も、比較的、回復するのは早い。つまり、神経はあまり老化しない。では、何が年齢によって違うかというと、体の元気さです。若い人のほうが、体がよく動くので、体から脳にバシバシと情報が送られます。一方、歳をとった人は、同じ時間だけリハビリをやっても、体があまり動かないので、結局、脳の回復が送れてしまうというのです。

 ですから、どちらかというと脳よりも体の方が大切で、「体に引っ張られる形で脳も活性化してくる」と私は考えています。よく人類の未来像として、脳は異常に発達しているけれども、体は退化してしまっているSF生物のイラストを見かけますが、実際には、体が衰えれば脳も衰えるだろうなあと、私には思えるのです。

私の解釈:魚類や鳥類、爬虫類にも脳はあります。それら動物の脳の機能は体をうまく動かせるようコントロールすることです。つまり、脳の神経細胞は、体の各部から送られてくる信号に反応することが基本的な機能。ですから、体を動かして脳に信号を送ることで、脳細胞のトレーニングはできる。

 脳は10%しか使っていないのか?

 水頭症という病気がある。成長の過程で脳に水が溜まって、脳が正常に発達できなくなってしまう病気です。精神遅滞などの症状が現れることがあるが、まったく正常に成長することも少なくない。社長として会社を経営したり、大学で数学賞を取るくらい優秀な人もいたほどだ。こうした例では、たまたま病院で脳を調べたときに初めて彼自身が出納症であることを知るケースも多い。ときに脳は正常者の10%程度の大きさしかなかったが、そんな小さく不完全な脳でも、人間として正常に判断したり行動したり思考したりできたのである。

つまり、人間の体をコントロールするには10%の脳細胞で事足りるのだが、しかし、このことは、人間が10%しか脳を使っていないということを意味するわけではない。脳の神経細胞は、あれば一応、100%使っている。(続く)