古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

工場見学記

2010-06-26 | 経済と世相
「工場見学させてください」とD社の総務にメールを入れたら、「22日10時、犬山駅までお迎えにいきます」と返事が入った。
 10時、曇り空の犬山駅に着いて東口の階段を下りると、「こんにちは」と声がかかった。見ると、常務のKさんだ。「やぁお忙しいのに、すみません」、「どういたしまして」
 Kさんの車でD社の子会社の岐阜県関工場に向かった。Kさんは4月からこの子会社の社長を兼ねている。以下、車内の話。
「業績は順調に回復してるの?」
『昨年度後半から受注が急増して、作りこむのに四苦八苦です。人も減らしているものですから・・・でも、仕事がない時の苦労に比べるといいですね。』
「やはり、インドや中国の好況が影響してるわけ?」
『いやー、インドの景気は凄いですね』
 グローバル化で、経済が国単位でコントロールするのが難しくなっている。政府が景気刺激策をとっても、国内の景気が良くならない。逆に、景気刺激しなくても、海外の景気がよくなれば、それが国内に波及して、好況になる(しかし、家計が好況になると言うわけではない)と言う時代なのだ。「サバイバル本部長をやってると聞いたのだけど、サバイバルって具体的に何をやってるの?」
『一言で言うと、“選択と集中”。仕事が少なくなったら、その工場を閉鎖して、仕事の多い工場に設備と人を持ってくる。』
「じゃぁリストラもやるわけだ。」
『やりますけど、世間で批判されているようなことは、やってませんよ。
働く人の考え方も変わっているのです。
 技能の伝承という点から、優秀な人には、正社員になりませんかと声をかけても、ここで働いてお金を貯めたらこういう仕事を始めたいと思っています、と断られる。』
(でもそれでは、技術・技能を有する従業員の育成はどうなる?)
 「皆さん元気かな?」
『一応皆健康ですが、みんな健康に気を使うようになりました。昨年のO君以来です。』
O君はD社の執行役員だったが、昨秋勤務中に急死した。
『健康でいたかったら、NOZUEさんみたいに運動すればいいのですが、みんな薬やサプリメントです』
 えらくなると、運動する時間もとれなくなるのかな?
11時10分前、工場に着いた。見学はKさん自ら案内をしてくれた。設備の内容は1年前に見たときと変わっていない。
「Uラインを造ったら“運動場じゃないか”とトヨタさんに言われた(一つ一つの機械が大きいので運動場ほどのスペースになった)と言っていたが、小さな製造設備の開発はうまく行ったの?」
『図面は引いたので、設備投資のOKが出たら取り掛かるつもりですが』
 昼時が近づいて、「関まできたのですから、鰻を食べましょう」と老舗の鰻やに連れて行ってくれた。
ここは、20年ぶりだったが、昔ながらの老舗の味でした。
 食事の後、犬山に向かう。
 材料工場は、1年前に来た時は“仕事がない”と閑散としていたが、フル操業のようだった。こういう熱を扱う工場は連続操業にしないと効率が悪いから、景気の動向で収益が大きく動く。
 加工工場は、量産設備をすべて関に移したので、メッキ設備と試作ライン的設備だけ。
 「船の関係は、どうなの?一頃、全社の稼ぎを船関係だけで稼ぐほどだったと聞いたが」
『あれから落ち込んで、今回復基調ですが、前の状況にまで戻ってはいません』
「風力発電の軸受けを手がけている、と聞いたが」と聞くと、『ご案内しましょう』と、新しい事務所の下の工場に案内してくれた。
『ボールベアリングより持久性が良い。M社の世界市場でのシェアがまだ3%程度ですから、数がでているわけではありませんが、M社が伸びれば期待できそうです。』想像していたよりは大きな製品だった。
3時前、見学を終えて、応接室でしばし閑談。
『新しい社員を見ていると、体験したことしか対応できないんですよ』
「つまり、論理的思考が出来ないということ?」
『そうなんです』
それに類した話を先日聞いた。ゆとり教育の所為かな?当然のことながら、D社も世の中の動きを反映するのだ。
犬山駅まで送ってもらい、1年ぶりの工場見学を終えました。
追伸:ご関心のある方は、昨年の工場見学記と比較してください。
http://blog.goo.ne.jp/snozue/d/20090624