古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

「経済物理学の発見」

2009-10-28 | 読書
 「経済物理学の発見」(高安秀樹著、光文社新書)という本を5年ほど前に買いました。読み始めたがどうも面白くないので、書棚に置いたまま放置していましたが、ふっと思い出して再読してみました。

 ところが、今読むと面白いのです。どうも、5年前の小生は、この本を読むには経済学の知識が不足していたらしい。

どんなところが面白いのか。例を挙げます。

株価はときには、暴騰暴落します。どういうメカニズムで暴騰暴落するのか?検証するために、コンピュータ・プログラムを作ってシミュレーシヨンをやってみる。株を売買するトレーダーの判断の仕方に、「ここ当分は今のトレンド(傾向)が続く」と判断する癖をプログラムするのです。そうすると、必ず暴騰や暴落を起す。ところが、トレーダーの判断に、そうした過去の傾向から判断すると言うやり方を一切入れないというプログラムにすると、いかなるケースにも、暴騰・暴落を起さないというのです。

 人間の脳のしくみは、過去の体験を脳に保持しておいて、それを基準に判断するわけですから、過去の傾向が少なくとも当分は続くという判断を除外することは、トレーダーが人である以上不可能です。従って、株価は、時に暴騰・暴落することになります。

 株価を説明できる経済理論は現時点では発見されていない。今までの経済学は、経済現象に微分方程式を適用することで発達してきました。ところが世の中の現象には、微分方程式が適用できる現象(関数で表現したとき滑らかな連続曲線になる)よりも、微分を適用できない現象の方がはるかに多い。株価もその一つです。

学問の進歩は、その学問の解明に使われる道具に、左右されるのです。近年、コンピュータが発達したため、コンピュータ・シミュレーシヨンという道具が経済学にも使えるようになったと、説明しているのです。

歴史上のインフレを分析して、著者は「インフレターゲット論」を批判する。

インフレは集団心理で発生・成長し、物価上昇率が短期間に1億倍にもなるハイパーインフレも起こりうるのに対し、デフレの価格下落に関してはそれに対応するようなことがないので、両者は全く異なる現象とみなすべきです。近年のデフレ気味なので、人為的にインフレを起した方がいいと言う人もいますが、これは、現実に起こったことを考慮していない全く無謀な考えです。

近年、外貨預金が簡単に出来るようになり、年々その総額が増加しています。これは1998年に外国為替法が改正されたことによって、日本国内で通貨を自由に使ってもいいし、自由に外貨を売り買いしてもいいということになったおかげです。

外貨預金に関心を持っているのは、若い世代が中心で、シニア世代は外貨を持つこと自体にあまり積極的ではない・・

しかし、仮に円がインフレを起しだして、円の価値が下がってくると、外貨預金が見直されます。外貨預金が帰省されていたときには、通貨がインフレを起すならものを買うことが合理的な行動でしたが、外貨預金が自由にできるなら、わざわざものを買わずに外貨預金に切り替えるのがインフレに対する最も合理的な行動です。

もしも、シニア世代の持っている金融資産の10%、すなわち、100兆円くらいが外貨に換わったとすると、それだけで為替レートは100円くらい動いてもおかしくない。