古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

信号機の壊れた社会

2009-08-17 | 経済と世相
 『信号機の壊れた「格差社会」』(岩波ブックレット、佐高 信、雨宮処凛、森岡孝二共著)を読みました。先日読んだ『円と日本経済の実力』が拾い物でしたので、ブックレットは、2~3時間で読み通せて、面白そうだと図書館で検索して3冊ほど借りてきたのです。

07年12月の立教大学の経済学部100周年記念シンポジウムの講演を本にしたものですが、佐高信は歯に衣着せぬ評論家として高名だそうですが、聞きしに勝る毒舌家ですね(でも言っていることは間違いない)。

「私は経済評論家です。経済を知っている評論家、ではなくて、経済を知らない評論家です」、「ただし、竹中平蔵よりは経済がちゃんとわかっています。」

「元首相の小泉純一郎氏とは、幸か不幸か、私も同じ年に同じ大学を出ていて、何度か一緒に食事をした間柄―――「仲」といいたくないから間柄といいます―――ですが、私の知る限り、奥行きの感じられない人物です。はて、彼と何をしゃべったか、と考えると、何か特別な記憶は私にまったくない。5,6人で食事をするのですから、彼が何をしゃべったか、ほんとうは私もよく聞いているはずなのですが、その記憶がありません。」

小泉政権の批判を、この言葉から始めます。

書名の意味は、信号機が赤だったら停止するというのは、交通のルールだ。経済社会の競争も、ルールのない競争は、ありえない。小泉・竹中政権は、そのルールの基本になる信号機をぶち壊したという意味です。

・・・(小泉・竹中路線について)これはおかしいんじゃないか、というムードが出てきました。それが2006年1月ころです。

当時、いちばんきな臭かったのが、MHK。Mは村上ファンド、Hはホリエモン、Kは木村剛です。Kの彼は日本振興銀行という新しい銀行をつくって、いまそこの会長です。この人は日銀出身で、仲人が日銀総裁(当時)の福井さん。日本振興銀行をつくって、自分の妻が社長をしている会社に、3%という非常に低い金利で1億8千万円を融資していた。銀行法のイロハのイに違反するような話。しかしなぜか金融庁は検査に入らなかった。木村氏は竹中チームの一員でした。

・・・逮捕されたのはKでなくHでした。私に言わせればK隠しのH逮捕だった。ニッポン放送株を、市場外で取引したこと、あるいは株価を吊り上げるために株式を細かく分割したなどの話が出て、これらの行為が「アウト」とされた。つまり赤信号を無視したとされたわけ。ここにおかしな点があります。Hが実際にそれらの行為をやっていた当時には、それをアウトだと言った人間はいなかった。つまり、実際にそれらを行っていたときには、信号機は赤ではなかった。伊藤金融担当大臣(当時)は、わざわざ記者会見でセーフと言っている。

雨宮処凛氏は作家で、ワーキングプア問題に取り組んでいます。雨宮氏の非正規社員の実態にふれた稿を読んで、「世界第二の経済大国が、何故こういう貧困層を作らねばならないのか?」と思いますし、森岡孝二氏(関西大学教授)の正社員の過労死の実態を述べた稿を読めば、「自民党は国民の生命と財産を守る」という、選挙に臨んでの麻生さんの発言のむなしさを感じます。