先日野暮用で名古屋駅に行った際、一寸時間があったので、本屋に寄って文庫本3
冊を衝動買いしました。内1冊は村上春樹著「シドニー(下)」(文春文庫)でし
た。(上)を買わずに(下)だけ買ったのは、マラソンが下巻に載っていたからです。
作家の村上春樹が、シドニーオリンピック3週間を現地で取材して書いたルポル
タージュですが、本文より最後に付された3人(大塚製薬陸上部河野監督、犬伏孝行
(シドニーマラソン出場(38Km過ぎ棄権)、大塚製薬)、有森裕子)の取材の方
が面白かった。有森裕子は、その年出場したNYシテイマラソンで11位に終った直
後の対談で、いわば3人とも敗者の立場に立ってマラソンを語っていました。どのよ
うに面白かったかを、河野氏の次の語りから、推察してください。
【高橋尚子が24日に金メダルを取った瞬間から、犬伏の中にあった「金メダルを取
りたい」という気持ちが、「金メダルを取らなくては」という気持ちに変わっていっ
たんです。そういう意味では、高橋尚子の優勝をいちばん素直に喜べなかったのは、
男子マラソンの選手たちじゃないですかね。】
【レースの2週間前に疲労のピークにくるように設定されています。それを、レース
当日に向けて、徐々に回復していくわけです。普段ならその辺はわかっていて、これ
で大丈夫と落ち着いていられるんだけど、今回は「今身体が重い」というのが、すご
く不安になったみたいです。】
(マラソン選手って随分ナーヴァスなんですね。)
【犬伏が途中で走りやめたとわかったのは、ずいぶん時間が経ってからでした。選手
はみんなチップをつけて走っていますので、ポイントの通過タイムが全部コンピュー
タでたどれます。ところがいつまでたっても犬伏の40Kmのタイムが入ってこな
い。タイム的にあり得ないことです。だからそこで「ああ犬伏は走りやめたんだな」
と推測できました。推測はできるんだが、何が起ったかはわかりません。
・・・それで携帯に電話しました。荷物の中に携帯を入れスイッチを入れておけと、
犬伏に指示していたんです。何があるか分からないから。そこに何分かおきに電話を
かけていた。そのうちにつながって、競技場の医務室で点滴を受けていることがわ
かった。もう声がほとんど出ていない状況でした。・・
それで脱水を起こしたんだということがわかりました。1時間で1リットルの点滴
をしまして、1時間後にはなんとか回復していました。体温も35度7分まで上がり
ました.声も出るようになっていた。・・・本人はたぶんまだわかっていないでしょ
うが、実はかなり危険な状態だったんです。走りやめてすぐに車が来てくれるわけ
じゃないんです。もっと後の方から収容車が来ますので、それを長い間待っていなく
てはならなかった。気温もどんどん下がっていきますし、一時は体温は33度まで下
がりました。32度まで下がったら、生命が危ないところでした。】
冊を衝動買いしました。内1冊は村上春樹著「シドニー(下)」(文春文庫)でし
た。(上)を買わずに(下)だけ買ったのは、マラソンが下巻に載っていたからです。
作家の村上春樹が、シドニーオリンピック3週間を現地で取材して書いたルポル
タージュですが、本文より最後に付された3人(大塚製薬陸上部河野監督、犬伏孝行
(シドニーマラソン出場(38Km過ぎ棄権)、大塚製薬)、有森裕子)の取材の方
が面白かった。有森裕子は、その年出場したNYシテイマラソンで11位に終った直
後の対談で、いわば3人とも敗者の立場に立ってマラソンを語っていました。どのよ
うに面白かったかを、河野氏の次の語りから、推察してください。
【高橋尚子が24日に金メダルを取った瞬間から、犬伏の中にあった「金メダルを取
りたい」という気持ちが、「金メダルを取らなくては」という気持ちに変わっていっ
たんです。そういう意味では、高橋尚子の優勝をいちばん素直に喜べなかったのは、
男子マラソンの選手たちじゃないですかね。】
【レースの2週間前に疲労のピークにくるように設定されています。それを、レース
当日に向けて、徐々に回復していくわけです。普段ならその辺はわかっていて、これ
で大丈夫と落ち着いていられるんだけど、今回は「今身体が重い」というのが、すご
く不安になったみたいです。】
(マラソン選手って随分ナーヴァスなんですね。)
【犬伏が途中で走りやめたとわかったのは、ずいぶん時間が経ってからでした。選手
はみんなチップをつけて走っていますので、ポイントの通過タイムが全部コンピュー
タでたどれます。ところがいつまでたっても犬伏の40Kmのタイムが入ってこな
い。タイム的にあり得ないことです。だからそこで「ああ犬伏は走りやめたんだな」
と推測できました。推測はできるんだが、何が起ったかはわかりません。
・・・それで携帯に電話しました。荷物の中に携帯を入れスイッチを入れておけと、
犬伏に指示していたんです。何があるか分からないから。そこに何分かおきに電話を
かけていた。そのうちにつながって、競技場の医務室で点滴を受けていることがわ
かった。もう声がほとんど出ていない状況でした。・・
それで脱水を起こしたんだということがわかりました。1時間で1リットルの点滴
をしまして、1時間後にはなんとか回復していました。体温も35度7分まで上がり
ました.声も出るようになっていた。・・・本人はたぶんまだわかっていないでしょ
うが、実はかなり危険な状態だったんです。走りやめてすぐに車が来てくれるわけ
じゃないんです。もっと後の方から収容車が来ますので、それを長い間待っていなく
てはならなかった。気温もどんどん下がっていきますし、一時は体温は33度まで下
がりました。32度まで下がったら、生命が危ないところでした。】