shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

アルテックのスピーカーを買った日

2023-06-04 | その他
 前回、愛機アルテック・ヴァレンシア復活の話を書いていて、このスピーカーを買った時のことを思い出した。購入日は1999年7月22日だから今から約24年前のことになる。過去のことはどんどん忘れていくのだが、音楽関連の記憶だけは何故か鮮明に頭の中に残っている。しかも幸いなことに当時の感動を書きなぐったノートが出てきたので、今回はそれを元に今現在の視点から見て加筆修正し、我が音楽日記であるこのブログに記しておきたいと思う。
 私は高校→大学→社会人と、ずっとサンスイのプリメイン・アンプとケンウッドのスピーカーという国産オーディオの組み合わせで音楽を聴いていた。しかし、初めて行ったオーディオ・ショーでJBLの最新スピーカーを聴いてから、何とか自宅でもあの凄まじい音を全身で浴びたいという想いに取りつかれ、絶対にJBLの大型ホーンスピーカーを買うぞと固く心に誓ったのだった。
 しかしデカいスピーカーを駆動するにはそれなりのアンプを使わねばならない。当然セパレート型である。スピーカーがJBLとくればアンプはマッキントッシュと決まっている(←決まってないってwww)。オーディオに興味を持ち始めた頃から “JBL + マッキン” の組み合わせには強い憧れを抱いていたし、ジャズ喫茶の薄暗い空間にほんのり浮かび上がるブルーの文字には抗しがたい魅力があった。そんなこんなで色々調べていた時に知り合いに紹介されたのが大阪の西田辺にある「オーディオ南海」というお店だった。
 早速お店に行ってみると、平日の昼間だというのに数人のマニアらしき人たちで賑わっている。奥の方を見ると巨大なスピーカーがたくさん並んでおり、EMT、ガラードといったアナログ・プレイヤーやマッキンのアンプなんかもゴロゴロしている。どれもこれも銘機ばかりだ。まるでお店自体がヴィンテージ・オーディオ・ショーの会場のような感じでその雰囲気に圧倒されていると、奥からご主人の尾崎さんが出てこられた。
 私が ①大きなヴィンテージ・スピーカーで60年代ロックンロールと50年代ハードバップジャズをガツン!とくるヤクザな音で聴きたい... クラシックやECM系ジャズのような眠たい音楽は大嫌い、②スピーカーの第一希望はJBL4344、アンプはマッキントッシュで、とこちらの希望を伝えたところ、“インスト専門ですか?それともヴォーカルも聴かれますか?” と訊かれたので “もちろんヴォーカルも聴きます。ペギー・リーやドリス・デイみたいな温かみのある女性ヴォーカルが好きです。” と答えた。すると、“でしたらJBLも悪くはないですが、中低域を重視したアルテックの方が好みに合うかもしれませんね。幸いお好みにピッタリ合いそうなヴァレンシアという機種があるので、ご希望のJBLと聴き比べてから決められたら如何ですか? それと、古い音楽を中心に聴かれるようですから、アンプは真空管タイプがいいでしょう。” と仰った。
 私はお言葉に甘えて持参した愛聴盤を試聴させてもらうことにした。愛聴盤と言っても当時の私はまだオリジナル盤LPなど持ってはおらず、聴くのは専らCD... というオーディオ初心者である。尾崎さんはマッキンのプリとパワーの組み合わせにリンのCDプレイヤー(!)を繋いで、JBLとアルテックを比較試聴させて下さった。
 まず「Art Pepper Meets The Rhythm Section」ではアルトの音色自体もCDのデジタル臭さなど微塵も感じさせない柔らかい音にビックリ。自宅のシステムでは奥の方に引っ込んでいたペッパーが前へ出てきてマイルスのリズム隊と“闘って” いるのが手に取るようにわかる。マッキン240がヴァレンシアの38cmウーファーを楽々と動かしてポール・チェンバースのベースを活き活きと躍動させているのだ。中高音域を受け持つホーンも抜群で、フィリー・ジョー・ジョーンズのスネアがスコーン!と気持ちの良い音を立てる。
 興奮した私は用意してきたCDを次々とかけていく。ジョニー・グリフィンの「The Kerry Dancers」ではテナーの音が実にゆったりと深い。朗々と鳴るのである。さすがは中低域に強いアルテックだけのことはある。テナーの表現力ではJBLに対して一日の長がある感じだ。マイルスの「Walkin'」ではケニー・クラークの高速ブラッシュ・ワークが超気持ちイイヽ(^o^)丿 このホーン・ツイーターの音はめっちゃ気に入った。「Ray Bryant Trio」ではアイク・アイザックスのグ~ンと沈み込むようなベース地の底から響いてくるような感じである。いやはやさすがは巨大ウーファーだ。ズンズンではなくズゥ~ンズゥ~ンと迫ってくるのだ。このようにどの盤を聴いても、ドライでシャープな切れ味一辺倒のJBLよりも濃厚で官能的な音を発するアルテック・ヴァレンシアの方が圧倒的に気に入り、マッキン240と共に一括購入したのだった。
 あの日から四半世紀、アルテック・ヴァレンシアは来る日も来る日も爆音を発して私を楽しませてくれたのだが、最近ラウドカット盤ばかり聴いて負荷をかけ過ぎたせいか(←もちろん冗談ですwww)長年にわたる勤続疲労で高域コンデンサーがとうとう逝ってしまったというワケだ。まぁいくら音の良いレコードを手に入れてもオーディオ機器が不調では宝の持ち腐れというもの。モノラル盤ばかり聴いて過ごしたこの1ヶ月(笑)でそのことを身に沁みて痛感させられたが、幸いなことに、交換した右スピーカー・ネットワークのエイジングもうまくいったようで、まるでスピーカーが若返ったかのように(?)パワーアップしてて快調そのもの(^.^) 今晩あたり久しぶりにブルーノートのヴァンゲルダー祭りでもやるか...(笑)