shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【フェロモン・クイーン】渚まゆみ特集

2023-06-18 | 昭和歌謡・シングル盤
 私は渚まゆみの大ファンで彼女のレコードはいっぱい持っているが、ターンテーブルの乗る回数が多いのはやはり彼女が浜口庫之助と結婚した1973年以降のハマクラ作品だ。デビューした大映レコード~キャニオン時代の彼女の歌は “女優の余技” の域を出ない生硬なヴォーカルで “歌詞をなぞっている”感が強かったが、彼と出会ってからは歌い方がガラリと変わり、歌詞の内容を “表現する” 歌い手へと大きく成長しているのだ。今回はそんな彼女のフェロモンが横溢するCBSソニー時代のシングルを取り上げよう。

① 「奪われたいの」
 渚まゆみの代表曲であると同時に “フェロモン歌謡で五指に入る大傑作” と言っても過言ではないのがこの「奪われたいの」だ。これはもう言葉で説明するよりも実際に聴いてもらった方が早いが、もしも “フェロモン歌謡って何?” と誰かに訊かれたら、私なら黙ってこのレコードを差し出すだろう。この曲に関して私が凄いと思うのは何よりもまずその歌詞だ。“あげるのはイヤ”→“奪われたい” →“なぜならあげてしまうと愛がわからないから” →“奪われた時に初めてあなたの愛を感じられる” という、非常に起承転結のハッキリした論理的(?)な展開が3番まで繰り返されるのが実に斬新で、露骨な表現で聴き手を引きつけようとする単純なパターンのフェロモン歌謡とは激しく一線を画している。彼女の歌い方もまるで水を得た魚のように活き活きとしており、それまでのシングルとはまるで別人のようだ。大人の色香を感じさせるジャケットも素晴らしい。
「奪われたいの」 唄:渚まゆみ
   

②「わたし半人前」
 浜口庫之助という人の一番の魅力は誰にでも楽しめるシンプルで親しみ易いメロディー展開と、ユニークな発想から生み出される軽妙洒脱なユーモアのセンスにあると思うのだが、大ブレイクした「奪われたいの」に続くこのシングル「わたし半人前」でもハマクラ節は絶好調。“わたし半人前 あなた半人前 二人合わせてやっと一人前になるってことね...” という単純明快さや “二人になったら なったとたんに ハッチャル チャッチャルするの...” というコミカルな面白さはハマクラさんの真骨頂だ。彼女のヴォーカルも堂に入っており、“全然元気がない~♪”の少し鼻にかかったような声色表現は彼女ならでは。ドレミファンという女性グループによるカヴァー・ヴァージョンと聴き比べてもその差は圧倒的だ。ただ、ジャケット写真がオバサン風の化粧で少しガッカリで、同日に撮影されたと思しき同名LPの裏ジャケ写真の方が私は好きだ。
「わたし半人前」 唄:渚まゆみ


③「夜の虫」
 このシングルは何よりもまずゴージャスな雰囲気を湛えたジャケット写真に目がいってしまうが、中身の方もそれに負けず劣らずの素晴らしさで、まゆみ姐さんはデビュー時からは想像もできないくらい堂々たる歌いっぷりで聴く者をグイグイ引き込んでいく。その表現力にはますます磨きがかかり、本職の歌手顔負けのヴォーカルを聴かせるところが凄いと思う。歌詞の内容はいわゆるひとつのフェロモン系ではなく、酒と煙草と女が大好きで夜な夜な酒場で過ごす男の話で、昭和歌謡の王道を行くメロディー展開と相まって、男女問わずにカラオケなんかで歌うのにピッタリのナンバーだ。
渚まゆみ 夜の虫