shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

グルーヴ歌謡の名盤特集①

2023-03-19 | 昭和歌謡・シングル盤
 1960年代後半のビート歌謡革命をきっかけに、バタ臭い歌謡曲から脱却して洗練された歌謡ポップスへと向かう大きな流れが生まれたが、当時の洋楽の影響を上手く吸収して日本独自のスタイルへと昇華させたグルーヴ歌謡の楽曲には特に魅力的なナンバーが多いので、このブログでも特集していきたいと思う。

①太田とも子「恋はまっさかさま」(1970.9)
 太田とも子という歌手の歌を初めて聴いたのは「歌謡曲番外地~悪なあなた~」というコンピCDで、小山ルミや沢知美といった錚々たる顔ぶれの中でひときわカッコいいグルーヴで他を圧倒していたのが他でもないこの曲だった。 “この太田とも子って初めて聞く名前やけど一体何者なんや???” と大コーフンしながらネットで調べてみたら何と梶芽衣子の実妹でビックリ(゜o゜) 確かにその声質といい、節回しといい、お姉さんに実に雰囲気が似ているが、良い曲に恵まれたこともあって、寡作ながら名曲名演の数ではお姉さんを凌駕しているのではないか?
 そんな彼女の全シングル中でも屈指の人気盤がこの「恋はまっさかさま」だ。特に転調を繰り返しながら疾走するところなんかもう痛快そのもので、宇崎竜堂の最高傑作と言っても過言ではないキラー・チューンだと思う。“幸せか幸せでないか 女の気持ちをそんな言葉で 訊かないで下さぁい~♪” で始まるちあき哲也の歌詞も聴きごたえ十分。“苦い酒を甘く 甘い酒を苦く 女はできる 魔法使いなの~♪” のラインなんかも実にユニークで唸ってしまう。シングル・ヴァージョンは軽やかな女性コーラスがフィーチャーされているのに対し、CD化されたのは映画「野良猫ロック マシン・アニマル」の中で使われていた別ヴァージョンで、チープなオルガンやウネウネしたサックス、そして縦横無尽に弾けまくるベースが独特のグルーヴを生み出している。どちらかを選べと言われれば僅差で前者だが、クラブなんかでめっちゃウケそうな後者にも捨てがたい魅力があって悩ましいところだ。
 このレコード、シングル盤にもかかわらず今では1万円近い値段で取り引きされているようだが、私が買った頃はまだ真っ当な値段で手に入れることができた。これは昭和歌謡だけでなくビートルズでもジャズでも言えることだが、状態の良いアナログ・レコードのオリジナル盤は年々値が吊り上って入手困難になっているので、好きな盤を早目に買っておいてホンマに良かったと思っている。
太田とも子 - 恋はまっさかさま(シングル・ヴァージョン)

太田とも子 - 恋はまっさかさま(映画「野良猫ロック マシン・アニマル」劇中ヴァージョン)


②市地洋子「髪を染めたの」(1970.6)
 市地洋子と言っても “誰、それ?” となるのが関の山だと思うが、“ミラーマンに出ていた野村隊員” といえば私と同世代の方なら覚えておられるかもしれない。まぁ同じ特撮物の女性ヒロインでもセブンのアンヌ隊員のようなセクシー系ではなくちょっと地味目な大人の女性という感じだったし、ミラーマン自体がどちらかというとマイナーな存在なので、やっぱり知名度は低いかもしれない。しかし、彼女のこのデビュー・シングル「髪を染めたの」は “聴かずに死ねるか、この1曲!” レベルのスーパーウルトラ大名曲であると声を大にして言いたいくらい大好きな曲なんである。
 この曲は私が敬愛する鈴木邦彦氏の作品中でも屈指のグルーヴ歌謡で、ホーンとストリングスのアレンジが絶品! ウネりまくるベースのラインが圧倒的にカッコイイのだ。こういう隠れ名曲名演との出会いがあるから昭和ガールズ歌謡マニアはやめられないヽ(^o^)丿  彼女のヴォーカルはあくまでもニュートラルで耳に心地良く、時折聴かせるちょっと甘えたような歌声とフェイクを交えた歌い方が男心をくすぐるのだ。一度聴いたら脳内リフレインが止まらなくなるメロディーとビートと歌声の三位一体攻撃の前に私はなす術もなく完全KOされてしまった。いやぁ... これホンマに最高ですわ(≧▽≦)
市地洋子 / 髪を染めたの