shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

橋本淳&筒美京平コンビ傑作選

2023-03-12 | 昭和歌謡・シングル盤
①江美早苗「涙でかざりたい」(1968.2)
 江美早苗は由美かおるや金井克子と共に“レ・ガールズ”で活躍した人だが(→別れたダンナに逆恨みされて刺し殺されたのホンマにかわいそう...)、橋本淳&筒美京平コンビが書いたこの「涙でかざりたい」は “レ・ガールズ” 関連の楽曲では異色ともいえるミディアム・スロー・テンポの哀調ビート歌謡で、同コンビによる翌年のスーパーウルトラ大ヒット曲「ブルーライト・ヨコハマ」のプロトタイプ的な雰囲気を持ったナンバーだ。彼女のシングルでは「チャカブン」や「恋のロリロリ」(←何ちゅーこっ恥ずかしいタイトル付けるねん...)といったキュート系ナンバーの方が人気があるようだが、私的にはこの「涙でかざりたい」一択だ。ポール・マッカートニーの影響をもろに感じさせるベース・ラインも愛おしい。
江美早苗(Sanae Emi)/涙でかざりたい(Namida de Kazaritai "I Want To Decorate With Tears")


②鍵山珠理「涙は春に」(1968.6)
 あくまでも私見だが、橋本淳&筒美京平コンビは①の「涙でかざりたい」とこの②「涙は春に」で様々なアレンジのアイデアを試し、満を持して「ブルーライト・ヨコハマ」を完成させたのではないか。思わずそんなことを考えてしまうくらいこれらの楽曲は雰囲気がよく似ているし、曲の完成度の高さも群を抜いている。何を隠そう、この「涙は春に」は私の昭和歌謡シングル盤コレクションの中でも最上位に位置する超愛聴盤なのだ。尚、この曲は後に安西マリアがアルバムで(←言うたら悪いけどアレンジが酷すぎて聴くに堪えない...)、また「涙は紅く」とタイトルを変えて山本リンダや山内恵美子らがカバーしているが、京平先生入魂の鉄壁アレンジを施されたオリジナルの鍵山珠理ヴァージョンには遠く及ばない。絵に描いたような名曲名演とはまさにこういう曲のことをいうのだ。
EP-1113 鍵山珠理/涙は春に


③ジュディ・オング「ブラック・パール」(1969.8)
 ジュディ・オングのコロムビア時代のシングルでは前回取り上げた「涙のドレス」とこの「ブラック・パール」の2枚が橋本淳&筒美京平コンビの作品だ。やさぐれたファズ・ギターと京平印のストリングスが全編を支配する「涙のドレス」とは対照的に、この「ブラック・パール」の方は “おっとこのこ~ はたちに なるっとぉ~♪” と一度聴いたら忘れられないようなキャッチーなメロディーをアップテンポで軽快に歌い上げ、歌謡曲の王道を行くような見事なナンバーに仕上げている。とにかくまるで一筆書きで書いたようなこのメロディー・センスは天衣無縫と呼ぶに相応しい素晴らしさである。何度聴いても唸ってしまう、実に良い曲だ。
【ブラック・パール】ジュディ・オング 1969年


④諏訪マリー「デイトのあとで」(1970.7)
 諏訪マリーの「デイトのあとで」は一般的な知名度は低いかもしれないが、橋本淳&筒美京平コンビが作り上げた “かくれ名曲” と呼ぶにふさわしい1曲だ。イントロの爽快なトランペット・アレンジからしてもう京平色が濃厚に立ち込めているが、ヴォーカルをダブル・トラック処理することによって “ひとり ザ・ピーナッツ” 的なニュアンスを加えているあたりも実にニクイし、スパニッシュな味わいのギターも絶妙なアクセントになっている。筒美京平の天才ここに極まれりといった感じのキラー・チューンだ。
諏訪マリー / デイトのあとで(Mary Suwa / Deito no Ato de "After The Date")