shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Beatles In Atlanta Whiskey Flat

2022-09-11 | The Beatles
 先日隣室のレコード棚を整理していたら中学時代に買った海賊盤レコードが大量に出てきた。CD時代に入って以来すっかりお役御免という感じで引退を余儀なくされたレコードたちだが、今とは違ってなけなしのお小遣いをためて買い集めただけに、1枚1枚に思い出が染みついている。せっかくなので久々に何か聴いてみようと思い立ち、真っ先に手に取ったのが「The Beatles In Atlanta Whiskey Flat」だった。
 このレコードは「In Atlanta Whiskey Flat」というタイトルにもかかわらず、実際はどこのコンサートの音源なのかがハッキリわかっていないという摩訶不思議な1枚である。私がまだ右も左もわからなかった中学生の頃に、ジョージア州アトランタにある “ウイスキー・フラット” という会場でのライヴだと思って買ったものだが(←普通はそう思いますよね?)、その後ビートルズ本の海賊盤特集記事に “ビートルズが初めてアトランタ公演を行ったのは1965年であって、1964年のUSツアーではアトランタでコンサートを行った事実はなく、いつどこで録音されたのかは不明” と書いてあったのを読んで “何じゃそれは???” と呆れると同時に初めて海賊盤の何たるかを教えられた思い出のレコードだ。
 やがてこの「アトランタ・ウイスキー・フラット」の名称で親しまれてきた音源は実は1964年9月2日のフィラデルフィア・コンベンション・ホールでのコンサートを収録したものだというのが定説となり、私も “そうなんか...” と納得していたのだが、最新の研究によると当日撮影された映像と合わない箇所があるとかで、まだ100%確実とは言えないらしい。
 まぁフィラデルフィアであれどこであれ、コンサートを行ってもいない “アトランタ” という言葉がタイトルに入っていること自体が意味不明。これに関しては8月30日のアトランティック・シティ公演と混同した説とかあって結構面白いのだが、詳細は松本常男氏の名著「ビートルズ海賊盤事典」のp379~381に書いてあるので興味のある方はどーぞ。
 とまぁこのように “看板に偽りあり” のレコードなのだが、私はこの「アトランタ・ウイスキー・フラット」という言葉の響きが気に入っていて、「アトランタ」と言えば真っ先に「ウイスキーフラット」という言葉が頭に浮かんでしまう。因みにさっき Whiskey Flat でググってみたが、大きなコンサート・ホールは出てこず、西部劇にでも出てきそうなカリフォルニアの小さな田舎町の画像が表示されて拍子抜け。要するにアトランタにもアトランティック・シティにも “ウイスキー・フラット” という場所は存在しないということだが、それなのにどうしてこの “Atlanta Whiskey Flat” というタイトルが付けられたのか謎は深まるばかりだ。まぁどこのコンサートのものにしろ、元になった音源は地元のFM局で中継された放送をエアチェックしたものというのは間違いないらしく、そのせいか手持ちの海賊盤レコードの中でも一二を争う音の良さなのだ。
 この音源に関して言うと、CD時代に入ってからは「Philadelphia 1964 Reel To Reel」(IMPレーベル)がめちゃくちゃ音が良かったのでずーっとそれを愛聴してきたのだが、3ヶ月ほど前にライトハウスから「Philadelphia 1964 Soundboard:Reel To Reel」というタイトルでアップグレード音源盤がリリースされ、ハムノイズとかが軽減されてこれまで以上に気持ち良く聴けるようになったのが喜ばしい。
 1964年USツアーのビートルズと言えば何といってもハリウッド・ボウルでのライヴに尽きると思うが、ライヴ・レコーディングを前提としたハリウッド・ボウルのカッチリまとまった演奏とは違って、こちらのフィラデルフィア(?)公演盤はライヴならではのラフで勢いに溢れた演奏が実に新鮮に響く。何よりもまずA①「Twist And Shout」の勢いを維持したまま間髪を入れずに次曲A②「You Can't Do That」になだれ込む展開が超カッコイイし、ジョンやポールのMCにも心なしかリラックスした雰囲気が漂う。特にジョンがめちゃくちゃ楽しそうで、A④「She Loves You」のヴォーカルなんてもうノリノリだ。B③「If I Fell」でジョンとポールが吹き出しそうになりながら歌うところは聴いてて実に微笑ましいし、続くB④「I Want To Hold Your Hand」でのバンドが一体となったノリの良い演奏も聴きどころだ。この頃のビートルズはまだライヴに全力投球しており、気合いの入ったエネルギッシュな歌と演奏が楽しめるのが嬉しい。
 映画の影響で最近はゲットバック・セッション音源ばかり聴いていたが、こうやって初期ビートルズのライヴを聴くと、その荒々しいロックンロールこそがすべての始まりであり、私の音楽人生の原点であることを改めて思い出させてくれる。ジェット・スクリームと呼ばれる嬌声は確かに凄まじいが、それをも上回るパワーでビンビン伝わってくるロックンロールのエネルギーは感動的だ。
The Beatles September 2 1964 Convention Hall, Philadelphia PA
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