shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Born To Run」RLカットのリマスター盤

2022-09-04 | Rock & Pops (70's)
 私は「リイシュー(再発)盤」「リマスター盤」と聞くと “どーせ薄っぺらい音しかせぇへんのやろ... そんなモンにいちいち金かけてられるかい!” という偏見・先入観をもって見下す悪い癖がある。実際のところ、リマスターやリミックスでいくら現代的な装飾を施そうが、音楽自体が持つチカラにおいてオリジナル盤を凌駕した例は「ペパーズ」のニンバス・スーパーカット盤という例外中の例外を除けばほとんど記憶にない。
 だからビートルズ(→もうすぐ出る「Revolver」のボックス・セット楽しみ~♡)以外の再発盤には目もくれずにスルーしてきたのだが、先日ネットで “ボブ・ラドウィックがリマスターした「Born To Run」がどーのこーの...” という記事を目にして居ても立ってもいられなくなった。
 ボブ・ラドウィックとはもちろんあの「Led Zeppelin Ⅱ」の “Hot Mix” 盤で有名な世界屈指のマスタリング・エンジニアのこと。そのRL刻印はジャズ界における RVG(ルディ・ヴァン・ゲルダー)刻印に匹敵するくらいの威光を放っており、ネット・オークションでRL刻印ありの盤にビッドが集中して値が吊り上がるのをこれまで何度見てきたことか。実際にそのロック魂溢れるサウンドを聴いてみれば、何故RL刻印盤がこれほど人気なのかがわかるだろう。
 そんな彼がロックのバイブルとでも言うべき「Born To Run」をリマスターしているとは知らなんだ... 私としたことが何たる不覚(>_<)  大慌てで調べてみると、確かに2014年にスプリングスティーンの全カタログをリマスターしているではないか! これはえらいこっちゃである。特にLPの方は8年前に限定盤でリリースされたこともあって、いつ廃盤になってもおかしくない。私はとりあえずまだ在庫のあるアマゾンで「Born To Run」を購入して一体どんな音に仕上がっているのか聴いてみることにした。
 そもそもこのレコードはその邦題をこのブログのタイトルにするぐらいの愛聴盤なのだが、その音質に関しては、“ブルースが敬愛するフィル・スペクターを意識して音を重ねたためにモコモコ感が拭えない、霧がかかったような音” とその筋では揶揄されてきた(←私はそうは思わないが...)という曰く付きのアルバムだ。今回せっかくの機会なので手持ちの「Born To Run」の聴き比べをやってみた。

①US盤
 私が持っている「Born To Run」のUS盤LPは、カタログ№がJCではなくPCで始まっていてマト末尾が 1A/1A、更に裏ジャケのプロデューサー名にスペルミス(→Jon Landau がJohnになっとる...)がある最初期プレスだ。そのせいか、音の鮮度は抜群で、Eストリート・バンドが生み出す圧倒的なグルーヴが実に気持ち良い。各楽器の音が混然一体となって襲い掛かってくるようなプリミティヴなサウンドはまさにロックの王道という感じで説得力抜群! これのどこに “霧” がかかっているというのだろう? この音が気に入らない人はきっとオーディオ的にどうこうと言いたいのだろうが、少なくともロックンロール的にはこの野太い音で全く問題ないと思う。

②UK盤
 私の「Born To Run」UKプレスはマト A1/B1盤で、ビートルズのUKオリジナル盤で言えば “1G” に相当する、こちらも最初期プレスである。当然裏ジャケもUS盤と同様にJohn Landau 表記だ。音の方は中低音がしっかりしたUK盤ならではの腰の据わったサウンドで、武骨なUSオリジナル盤よりも抜けが良く、クリアーで派手な音作りが印象的だ。ちなみにこのレーベル・デザインは Sunburst Label というらしい(←勉強になるわぁ...)が、ネット・オークションでたまに見かける赤CBSレーベルのUK盤はレイター・プレス(A5/B4)なのでご注意を!

③2014リマスター盤
 で、いよいよ2014年にボブ・ラドウィックがリマスターした盤である。まず手に持った感触がズシリと重くて(180g!)期待に胸が高鳴る。針を落とした数秒後に静寂を破ってリスニングルームに響き渡るA①「Thunder Road」のイントロのピアノとハーモニカの音からしてめちゃくちゃクリアーで驚かされるが、私が何よりも凄いと思ったのは各楽器の音をクリアーに響かせながら、なおかつ音全体のエネルギー感が格段にパワー・アップしているところ。ただ単に音圧を上げただけの “なんちゃってリマスター” とは激しく一線を画す “高品位な爆裂サウンド(?)” なんである。上記のUS盤とUK盤の “良いとこ取り” という感じの、真にあらまほしき音なのだ。いやぁ、やっぱり巨匠の技は凄いですわ。
 ということで、もうこーなったらスプリングスティーンだけでなく、ありとあらゆるロック名盤をRLカッティングで聴いてみたい... と思わせるくらいこのリマスター盤の音には感銘を受けた。手持ちの音源をRLカッティング仕様とかニンバス・スーパーカット仕様、インドのチューブ・カッティング仕様(笑)みたいな感じで自在に調節できる高性能イコライザーとかあったらエエのになぁ...
Bruce Springsteen - Born to Run (Official Video)
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