shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Some Time In New York City」のアイルランド盤

2019-11-22 | John Lennon
 今年の2月にジョンの「ロックンロール」でアイルランド盤の音の良さを知ってからというもの、私はビートルズ関連レコードのアイルランド盤を狙うようになった。元々プレス枚数が極端に少ないので高音質が期待できるのと、ポールの「アイルランドに平和を」のアイリッシュ・プレスにおけるアグレッシヴな音作りに見られるような、イギリス人とは又違った感性を持ったアイルランド人エンジニアのカッティングが生み出すユニークなサウンドに魅かれたからだ。
 残念ながらビートルズ本体のアイルランド盤はまだ1枚も買えていないが、ソロ・アルバムの方は何枚かゲットできた。今回手に入れたのは「サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ」で、ジョンのアイルランド盤としては「ロックンロール」「ジョンの魂」「イマジン」に次いで4枚目である。このアルバムにはアイルランド問題を扱った歌が2曲も入っているので、果たしてどんな音作りがなされているのか興味があった。
 見つけたのは eBayで、€25スタートからどこまで上がるのか不安だったのだが、アイルランド盤なんて誰も注目していないのか、それともこのアルバム自体が不人気なのか、はたまたその両方なのか、結局ライバルは誰も現れずスタート価格のまま落札できた。送料込みでも4,000円ちょっとだから、まぁとりあえずはラッキーだ。
 届いたレコードは盤もジャケットもピッカピカで申し分なしのNM状態。センター・レーベルは例のジョンの顔がヨーコの顔に変わっていくUK盤やUS盤とは違い、ごく普通のシルバー・パーロフォンだ。マトは 1/2/2/1で、字体のサイズ(マト1は大きくマト2は小さい...)もフォントもUK盤と同じだ。
 このアルバムはジョンならではのロック魂を感じさせてくれる曲がいくつも入っていて大好きなのだが、「ダブル・ファンタジー」や「ミルク・アンド・ハニー」と同じくジョンとヨーコのトラックが混在しており、ヨーコの曲の前でいちいち針を上げるのが面倒くさいのが玉にキズ。だから先の2枚とこのアルバムに関してはLPではなくヨーコ曲だけカットした自家製CD-Rを聴くことが多いので(←ヨーコのトラックはホンマに邪魔...)、LPのアナログ・サウンドで聴くのは久しぶりだ。
 音の方は期待を裏切らないというか、アイルランド盤らしいガンガンくる音作りで、特にA⑤「New York City」なんかもうめっちゃアグレッシヴ。B-SELSのSさんにも聴いていただいたのだが、“パンクっぽいというか、尖がった感じがする音ですねー!” と驚いておられた。折角なのでその場でUK盤やUS盤とも聴き比べてみたのだが、ヴォーカルとバックの演奏がハッキリしていて聴きやすいUK盤やUS盤とは明らかに異質な、ラウドでパンキッシュなその音作りは “ロックなジョン” が好きな人にはたまらないと思う。私はこの「New York City」がジョンのソロ曲の中では三指に入るほど好きなので、このカッコイイ1曲のためだけでもアイルランド盤を買って良かったと思っている。
 B面は例の“血の日曜日事件”を扱ったB①「Sunday Bloody Sunday」がどんな音作りなのか興味津々だったが、こちらの予想の遥か斜め上を行く激しいサウンドで、特にドラムの音がめちゃくちゃデカくてビックリ。UKマト1盤と聴き比べても、こちらの方が音が立体的に屹立して眼前に迫ってくる感じが強い。ちょうどポールの「Give Ireland Back To The Irish」のアイルランド盤シングルにドラムがバン!バン!とまるでアイルランド人エンジニアの怒りが乗り移ったかのような強烈な音で入っていたのと同じである。それにしてもマト2でこの音は凄いわ... (≧▽≦)
 同じくアイルランド問題について歌ったB②「The Luck Of The Irish」は “歌詞を聴かせる” ことに重点を置いたメッセージ・ソングとしての音作りで、ギターを中心にフルートやピアノが一致団結してジョンのヴォーカルを引き立てているかのようだ。
 アイルランドに直接関係のないB③「John Sinclair」もB①②からの流れからか実にダイナミックなサウンド・プロダクションで、リゾネーター・ギターの突き抜けるようにクリアーな音が実に気持ちイイ(^o^)丿 この曲はB①②と違ってヨーコという異物が混入していないのが何よりも嬉しい。
 ライヴのC①「Cold Turkey」はジョージやクラプトン入りのプラスティック・オノ・バンドによる演奏。この曲は何故かモノラル録音でイマイチ音が良くないせいもあってかUK盤やUS盤との音の違いは感じられなかったが、怒涛の勢いのようなものだけは十分に伝わってきた。
 D①「Well(Baby Please Don't Go)」はフランク・ザッパ軍団との共演で、性懲りもなくキチガイみたいな奇声をあげるヨーコがめっちゃウザいが(←ヨーコの奇声をかき消すように大音量でギター・ソロをブチかますザッパにクッソワロタwww)、そんなマイナスポイントを差し引いてもお釣りがくるくらい素晴らしいのがジョンのヴォーカルで、このアイルランド盤はジョンの翳りのある太いシャウト・ヴォイスの魅力を存分に味あわせてくれる。いつか「Live Peace In Toronto 1969」とこのディスク2の “ヨーコ抜き” ミックスを出してくれへんかなぁ... 少々値段が高くても喜んで買いまっせ!
 D③「Scumbag」はテキトーにデッチあげたようなワケのわからない曲だが、バックの演奏が思いのほか素晴らしく、バンド全体が一体となってパワー全開で突っ走る疾走感がたまらない。ヨーコがわめきちらすライヴ音源ということで敬遠されがちなD面だが、心頭滅却して(←修行僧かよwww)ヨーコの奇声を無視し、ジョンとザッパ軍団が生み出すカッコ良いロックンロールに神経を集中すれば十分楽しめるレコードだと思う。