shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Magical Mystery Tour / The Beatles

2009-09-26 | The Beatles
 私がビートルズを聴き始めた1970年代半ばには DVD はもちろんのこと、レーザーディスクやビデオデッキすらなく、映画は映画館で見るものと決まっていた。だから見たい映画があってもどこかの映画館で上映してくれるか、あるいはテレビでやってくれるのを辛抱強く待つしかなかった。私はレコードの解説やビートルズ本を読んで、「ア・ハード・デイズ・ナイト」、「ヘルプ」、「マジカル・ミステリー・ツアー」、そして「レット・イット・ビー」といったビートルズ映画が見たくて見たくてたまらなかったが、こればっかりはどうしようもなく、ただ黙々とレコードを聴いて過ごしていた。
 そんなある時、友人が “ビートルズ復活祭” と題した上映会の情報を教えてくれた。聞けば大阪の中之島公会堂でビートルズの映画やプロモーション・フィルムを一気に上映するという。私は大喜びして早速見に行ったのだが、その時見たのがこの「マジカル・ミステリー・ツアー」だった。LP のブックレットに載っていたあの “セイウチ” や “エッグマン” が見れるとあって、私は大きな期待を抱いてスクリーンに見入った。しかしそこで私が見たのは、ストーリー展開がまったくワケのわからない、意味不明な映画だった。“何でジョンがウエイターになって太ったオバチャンにシャベルで(!)スパゲッティを盛り続けてんねん???”(←今ではこのシーンめっちゃ好きやけど...)とか、 “何で天下のビートルズがストリップ観て(;´Д`)ハアハア せにゃならんのか???” とか、 “飛行場跡でみんなで走り回って一体何がしたいねん???” とか、とにかく頭の中が混乱しっ放しで、時々挿入される音楽は素晴らしかったものの、映画を見終わった後は言いようのないモヤモヤ感だけが残った。そしてそんな想いが私だけではなかったことは、開演前にあれほど盛り上がっていた会場がシラーッとした空気に包まれていたことからも容易に想像出来た。
 この映画が初めてイギリスのTVで放映された時もボロクソに叩かれたらしいが、今にして思えば、そもそもストーリーのない映画に「ア・ハード・デイズ・ナイト」や「ヘルプ」のような完成度を求める方が無茶だったし、要するにこれは “ドラッグ体験を通して広がったイメージを映像化した実験的なフィルム” とでも呼ぶべきものであり、いくらビートルズでもクリスマスのTVスペシャルでコレを流すというのは大衆性という点から言っても(←TV視聴者がみんなマリファナでラリッてるんなら別やけど...)無理があり過ぎた。因みに最近はこの「マジカル・ミステリー・ツアー」を見直す動きがあるようなので、ぜひ早く再DVD化してほしいと思う... それもリーズナブルな価格で!(←「ヘルプ」のDVD 5,800円は完全なぼったくり価格やったもんなぁ... 東芝EMIさん!)
 このレコードのUKオリジナル盤は映画で使われた6曲を収めた2枚組EP盤(45回転)だったが、当時のシングル5曲を追加して1枚のLPに仕立て上げたUS盤が今やスタンダードとしてまかり通っているし(←結局イギリス・パーロフォンでも76年にLPフォーマットで発売してるし...)、今回のリマスターでもUS盤仕様が採用されている。しかし USキャピトル原盤の何曲かは私の大嫌いな疑似ステレオらしく、「ビートルズ・セカンド・アルバム」や「ビートルズ '65」での過剰なエコー処理(風呂場で聴くような「ロール・オーヴァー・ベートーベン」や「シーズ・ア・ウーマン」にはワロタ...)が脳裏を横切りどうしてもUS盤への不信感をぬぐい去れない私は、結局UKオリジ・モノEP2枚組(12.50ポンド)とワールド・レコード・クラブ・レーベルのオーストラリア盤(別ジャケ、全曲リアル・ステレオ・ミックスで20.80ポンド)の2種類の盤をeBayで入手した。
 ①「マジカル・ミステリー・ツアー」は派手なホーン群が炸裂するイントロから “ララ~ッ ララッファザ ミステリ トゥウア♪” といきなり全開で飛ばすポールの勢いが凄まじい(≧▽≦) その万華鏡のようなカラフルなサウンドの奔流は圧巻の一言に尽きる。今回のリマスターでポールのベースがよりクリアになったのも嬉しい。まさにポールの才気煥発といえる1曲だ。②「フール・オン・ザ・ヒル」はいわゆるひとつの “ポールなメロディー” 横溢の名バラッドで、リコーダーの音色が何とも言えない雰囲気を醸し出し、この曲の名曲度を更にアップさせている。この曲を聴くと丘の上でスキップしたりおどけたりするコート姿のポールが目に浮かぶでしょ?
 ③「フライング」はいかにもサントラ盤らしい、映像あってのインスト・ナンバーで、特にどーってことないBGM、それ以上でもそれ以下でもないと思う。そういう意味では④「ブルー・ジェイ・ウェイ」も似たり寄ったりで曲としては大したことないと思うのだが、そのミステリアスなムードはいかにも東洋的で、何か空中浮遊のBGMにでも使ったらピッタリはまりそうな幻想的なサウンドだ。
 ポールの⑤「ユア・マザー・シュッド・ノウ」とジョンの⑥「アイ・アム・ザ・ウォルラス」はこのアルバムの中でも屈指の名曲名演で、A面ではこの⑤⑥、B面では⑦⑧⑨の連続攻撃が白眉だろう。⑤はノスタルジックな曲想に涙ちょちょぎれる超愛聴曲で、哀愁舞い散るピアノの旋律も洗練されたコーラス・ハーモニーも、そのすべてが素晴らしい!!!!! 真っ白な燕尾服に身を包んだ4人がワルツのステップで階段を降りてくるという、この難解な映画の中で唯一マトモなシーン(笑)で使われていた印象的なナンバーだ。⑥も聴きまくったなぁ... この曲だけで3千回ぐらいは聴いてるかもしれない(笑) 「リヴォルヴァー」以降のジョンの曲はポールに比べると明らかに量・質共に負けていると言わざるを得ないのだが、この「アイ・アム・ザ・ウォルラス」と「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」の2曲はポールが逆立ちしても書けないような物凄い曲だと思う。私としては “何かワケがわからんけど、めっちゃ好き!” というしかない。意味不明だがめっちゃクールでカッコイイ歌詞、凝りに凝りまくったサウンド・プロダクション、そしてジョンのヴォーカルの恐るべき吸引力... すべてが最高だ。被りものギミックの演奏シーンもインパクト絶大で、特にイントロのドラムが入る所でポールがのけ反りながらリンゴを指さす仕草がたまらなく好きだ。
 B面冒頭のシングル3連発も強烈だ。⑦「ハロー・グッバイ」は単純な歌詞をキャッチーなメロディーに乗せてポールが歌う典型的な3分間ポップス。エンディングの “クッチャッ クッチャッ...♪” がめっちゃ好き(^.^) プロモ・ビデオで彼らが襟なしスーツを着て手を振るシーンは過去の自分達へのグッバイだろう。⑧「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」はこれまた何がどうなってるのかワカランぐらい複雑なサウンド・プロダクションが施されているが、そのすべてが音楽的・必然的・有機的に結びつき、混然一体となって素晴らしい効果を上げている。目を閉じれば眼前にイチゴ畑が広がっているかのような錯覚を覚えてしまう凄いナンバーだ。⑨「ペニー・レイン」はイントロなしでいきなり “ペニレイン♪” で弾むように飛び出すポールの清々しさがいい。このワクワク感がたまらんなぁ...(^o^)丿 どことなく昔懐かしい感じを出すのにピッコロ・トランペットを使った慧眼もお見事、どこを切っても大英帝国の薫りがする名曲だ。それにしても⑧⑨で両A面シングルって... やっぱりビートルズは凄いわ(≧▽≦)

The Beatles - I Am the Walrus (STEREO) HQ

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