shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Yellow Submarine / The Beatles

2009-09-27 | The Beatles
 アルバム「イエロー・サブマリン」は発売順でいけば「ホワイト・アルバム」の後に来るのだが、収録曲の録音時期はすべて「ホワイト」よりも前だし、何よりも「ペパーズ」や「MMT」時代のサイケな薫りを引きずっているナンバーもあるということで、サウンドの整合性という面からこっちを先に取り上げることにした。「ペパーズ」→「MMT」→「イエサブ」→「ホワイト」→「レリビー」→「アビロー」という流れで聴くのが私的には一番しっくりくるのだ。
 このアルバムはご存知の通り、LPのB面すべてがジョージ・マーティン・オーケストラの演奏という半分詐欺みたいな内容で、しかもA面6曲中純粋な新曲は4曲のみというからもうお話にならない。ビートルズ・ファンでこのアルバムだけは持ってないという人も少なからずいるだろうし、かく言う私もこのアルバムを買ったのは他のマトモなアルバムをすべて揃えてからだった。そういう意味ではファンからでさえ軽く見られている不憫なアルバムといえる。そもそもこの映画「イエロー・サブマリン」の制作はブライアン・エプスタインが生前に映画会社と契約してしまっていたもので、 “今更映画なんか...” とその企画に乗り気でなかったビートルズが67年のセッションで一旦ボツにしていたものを引っ張り出してきたりスタジオでササッと書いてチャチャッと録音したりと、 “まぁこんなモンでエエやろ” 的な感じで作られたアルバムだった。当初はこの新曲4曲でEPとしてリリースする予定だったらしいが、「マジカル・ミステリー・ツアー」の時と同じくアメリカのマーケットに不向きという理由で、このような形のアルバムをでっち上げることになったらしい。B面を1回しか聴いた覚えがない私(しかも退屈すぎてすぐに針を上げてしまった記憶が... CDになってからは1回も聴いてないし...)としてはEP盤の方がスッキリすると思うし、そしたら今頃は「パスト・マスターズ」に入っとったワケで、CD1枚分のムダが省けたのに、と思うのだが。
 このようにあまり期待をせずに買った「イエロー・サブマリン」だが、手抜きというか投げやり状態で作られた新曲4曲はどれも私の好みにピッタリで、中でも④「ヘイ・ブルドッグ」はめちゃくちゃ気に入ってしまった。少なくとも後期のジョン曲の中で三指に入るスーパーウルトラ愛聴曲だ(≧▽≦) まずは何と言ってもイントロがカッコイイ!初期の「マネー」を彷彿とさせるようなヘヴィーなピアノにファズ・ギターが被さり、更に縦横無尽に動き回るポールのベース(今回のリマスターでよりクリアなったので是非聴いてみて下さいな)が重なっていくところなんかもう鳥肌モノだ。ジョンのヴォーカルはダブル・トラッキングが抜群の効果を上げているし、間奏で聴ける過激なギター・ソロもたまらない。この圧倒的なドライヴ感、下半身がムズムズしてくるようなグルーヴ、重金属のようなへヴィーネス... そのすべてが圧巻で、全員が一丸となってノリまくっている様子が手に取るようにわかる名曲名演だと思う。しばらくサイケ路線を突っ走っていたジョンが久々に聴かせてくれたヘヴィーでストレートアヘッドなロックというのもめっちゃ嬉しかった。
 ③「オール・トゥゲザー・ナウ」はポールが即興でササッと書いたようなシングアロング・タイプの楽しい曲で、彼らが毎年ファン・クラブ会員向けに配っていたクリスマス・レコードのようなノリだ。ビートルズ版「ビーチ・ボーイズ・パーティー」といってもいいかもしれない。アニメ映画なんだから肩肘張らずに楽しみましょうというわけだろう。ジョージの②「オンリー・ア・ノーザン・ソング」と⑤「イッツ・オール・トゥー・マッチ」の2曲は滅多に話題にも上らないが、私は中々良く出来ていると思う。少なくとも同時期の「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」や「ジ・インナー・ライト」といったインド・レストラン用BGMよりも遙かに魅力的なサイケ曲だ。特に6分を超える大作⑤の後半の作り込みはハンパではなく、フリーキーな不協和音を生み出すフィードバックからテープの逆回転まで、ありとあらゆるスタジオ・テクノロジーを大量投下して出来上がった混沌としたサウンドが耳に心地良いし、ジミヘンをパロッたイントロやナンセンス丸出しの歌詞も効果的だ。
 「リヴォルヴァー」で既出のアルバム・タイトル曲①「イエロー・サブマリン」は私にとっては赤盤全26曲を締めくくるナンバーとしてのイメージが強い。サウンド・エフェクトのこれでもか攻撃が実に楽しいこの曲はリンゴが歌っていることもあって、最初はリンゴが書いた曲だと思っていた。それにしても「黄色い潜水艦」をテーマにしたヒット曲なんて発想は当時としては実にブッ飛んでいたと思うのだが、これなんかポールの発想の先取性を如実に示している好例だと思う。尚、例の音聴き会G3でこの曲をかけた時、plincoさんに教えていただいた空耳 “おっさんが屁ぇこきまっせぇ~ おっさんの屁ぇ~♪” (←間奏の1分33秒から)には一同大爆笑!調べてみると実際は “Full speed ahead, Mr. Boatswain, full speed ahead” と言っているらしいのだが、私の耳には “おっさんの屁” にしか聞こえない(笑) ホンマにビートルズは色んな楽しみ方がありまんなぁ(^o^)丿
 「マジカル・ミステリー・ツアー」のラストを飾った⑥「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ」はフランス国歌「ラ・マルセーユズ」からアダプトしたイントロが実にキマッている。私の知る限り国歌をヒット曲に使った例はこれだけなのだが、こーゆーのって使用許可とかどーなってるんやろ?そのあたりも含め、一国の国歌を堂々と(?)引用し、それを世界初の衛星同時中継番組で歌ってしまうあたり、さすがはビートルズだ。ストリングスや管楽器群のアレンジも絶妙で、この曲の持つ共同体的雰囲気を更にアップさせている。エンディングで怒涛のように繰り出される「イン・ザ・ムード」「グリーンスリーヴズ」そして「シー・ラヴズ・ユー」の波状攻撃は圧巻だ。こうやって聴いてくるとA面めっちゃよろしいで(^.^) 
 アップルから出たこのアルバムのUKオリジナル盤(ステレオ)は他のアルバムほど売れなかったせいか(当然だ...) eBay オークションでも結構レアで、実質A面しか聴かないLPなのに21ポンドもした(>_<) 今となっては EP盤でも何でもエエからビートルズの演奏だけで出してくれればよかったのになぁ... と思える片面愛聴盤だ。

The Beatles - Hey Bulldog in the studio

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