shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

A列車で行こう / 美空ひばり

2010-12-12 | Standard Songs
 前回に続いて今日も G3 ネタである。毎月の定例会ではスタンダード・ナンバーの中から課題曲を決めて各人のお気に入りヴァージョンを持ち寄ることになっており、今回のお題はデューク・エリントンの「A列車で行こう」だった。
 エリントンの片腕と言われる作編曲家ビリー・ストレイホーンによって作られたこの曲は1941年の初レコーディング以降何度も再演されてきたエリントン楽団を代表するナンバーで、 “A列車” という邦題からどうしても “蒸気機関車” をイメージしてしまいがちだが、コレはニューヨーク地下鉄のブルックリンからハーレム経由でマンハッタンを結ぶ8番街急行電車のことで、“ハーレムのシュガー・ヒルに行くのなら、(停車駅が少なくて速く着く急行の)A-トレインに限る さぁ来たぞ 乗ろう” という歌なんである。
 私はジャズを聴き始めて15年ぐらいになるが、正直言って未だにエリントンの良さがよく分からない。別に彼の音楽が嫌いとかそういうのではなく、ビッグバンド・ジャズというフォーマット自体が大の苦手なのだ。私の音楽の原点はあくまでもソロを重視するロックなので、ジャズであれクラシックであれ、大人数で合奏というオーケストラ・スタイルが肌に合わないのだろう。
 しかし女性ヴォーカル・ヴァージョンとなると話は別で、今回も「A列車」と聞いてすぐに頭に浮かんだのが美空ひばり、アニタ・オデイ、そしてクラーク・シスターズの3組だった。正統派のジャズ・ファンからしたら “何じゃい、それは!” と言いたくなるようなチョイスだと思うが、私は自分が楽しめるモノしか聴かないのでコレでいいのだ。ということで、今日は私のようなビッグバンド門外漢でも楽しめる、 “A列車・ヴォーカル編” です;

①美空ひばり
 私にとって「A列車」と言えば何はさておき美空ひばりのこのヴァージョン。初めて聴いた時はそのあまりのカッコ良さにブッ飛んでしまった。日本人でこれほど強烈にスイングするシンガーを私は他に知らない。最初は日本語詞で歌い始め、途中から英語にスイッチして抜群のノリで一気に加速していくところなんかもうめちゃくちゃカッコ良い。特に1分55秒から炸裂する高速スキャットは圧巻の一言。しかも驚くべきはコレがひばり17才時の録音(1955年)だということ。天賦の才とはこういうものか。
A列車で行こう Take the 'A' Train/美空ひばり


②Anita O’Day
 スキャットと言えばやはりこの人アニタ・オデイ。人気投票でトップになったことのあるジャズメンの曲ばかりを歌ったアルバム「アニタ・オデイ・シングズ・ザ・ウィナーズ」の1曲目に収録されていたのがこの「A列車」で、彼女のジャズ・フィーリングが如何なく発揮された粋なヴォーカルが楽しめる。貫禄十分のスキャットは自由奔放というか変幻自在というか、まさに “ジャズ・シンガー歌うところのジャズ・ソング” の王道を行くヴァージョンだ。
Anita O'Day - Take The "A" Train


③Clark Sisters
 クラーク・シスターズはスイング時代の名曲の数々を見事なアレンジによって換骨堕胎し、美しい癒し系ハーモニーで楽しませてくれるコーラス・グループ。私にジャズ・コーラスの楽しさを教えてくれたのも彼女達だ。コレは1959年にドット・レーベルからリリースされた「スイング・アゲイン」というアルバムに収められていたヴァージョンで、まるで春の陽だまりにいるような心地良さを味わえる快適な「A列車」になっており、治安の悪さで有名な地下鉄にも一度乗ってみようかな、という気にさせられる(?)名唱だ。
クラーク・シスターズ


④江利チエミ
 美空ひばりと共に3人娘として一世を風靡した江利チエミ。彼女は「テネシー・ワルツ」のイメージが強いが、私に言わせればバリバリのジャズ・シンガーだ。特に白木秀雄クインテットをバックにカール・ジョーンズとデュエットした「クレイジー・リズム」を初めて聴いた時の衝撃は忘れられない。コレは彼女のデビュー30周年記念として制作された1981年のアルバム「ナイス・トゥ・ミート・ユー」の冒頭を飾る1曲で、師匠のカール・ジョーンズにヴォイス・トレーニングを受けてレコーディングに臨んだだけあって、一語一語とても丁寧に歌い込んでいるのが印象的だ。バックはひばり盤と同じ原信夫とシャープス&フラッツで、実にゴージャスな演奏をバックに円熟のヴォーカルが堪能できる。しかし出来ることなら、あのカウント・ベイシー・オーケストラと五分に渡り合った全盛期の彼女の高速スキャットで聴いてみたかったなぁ...
A列車で行こう


⑤Duke Ellington featuring Betty Roche
 私はビッグバンドは聴かないが、コレは例外的に大好きだ。ヴォーカル入りということもあるが、何よりも嬉しいのがコンボ編成で曲がスタートするというユニークなアレンジのおかげでビッグバンド臭さを感じさせない所。特にルイ・ベルソンのドラミングが最高だ。美空ひばりがお手本にしたと思しきベティ・ローシェの軽やかなスキャットも聴き所で、私がこれまで聞いてきたエリントン楽団ヴァージョンの中では文句なしにベスト。 901さんと plinco さんが偶然バッティングしたエリントン屈指の大名演だ。
Take the A Train.wmv

この記事についてブログを書く
« ラヴ・ユア・スペル・イズ・... | トップ | Psycho Therapy / Skid Row »