shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

What's New / Linda Ronstadt

2010-02-23 | Jazz Vocal
 リンロン・スペシャル・ウイークもいよいよ終盤に突入、今日は “ムード満点でジャジーなリンロン” だ。とまぁ今でこそこうしていけしゃあしゃあとこの「ホワッツ・ニュー」を “愛聴盤です!” と紹介しているが、この盤が出た1984年当時 “マイケル、マドンナ、ヴァン・ヘイレン” 状態だった私にとって、全曲スタンダード・ナンバーで固めたこのアルバムはまさに青天の霹靂と言ってよく、一体何がどーなってるのかサッパリ分からなかった。
 そもそも「シンプル・ドリームス」→「リヴィング・イン・ザ・USA」→「マッド・ラヴ」→「ゲット・クローサー」と徐々にロック色を強めつつあったリンロンが何でまた急にオーケストラをバックに艶めかしい声で “ホワッツ・ニュ~♪” って歌わなアカンねん?それにこのネルソン・リドルってオッサン、一体何者?ネルソン・ピケの親戚か?といった塩梅で、スタンダード・ナンバーの何たるかも全く知らなかった私にはこの珠玉の名曲集が軟弱なムード・ミュージックにしか聞こえず、大いに失望したものだった。繰り返すが何と言っても “マイケル、マドンナ、ヴァン・ヘイレン” である。そんなポップ・ロック一筋人間にスタンダードもへったくれもない(笑) 例えるなら毎日カレーやハンバーグ、ピザばかり食ってる人間にいきなり精進料理を食わせるようなものだ。それに同じスロー・バラッドでも「ブルー・バイユー」と「ホワッツ・ニュー」では明らかに曲の佇まいというか、醸し出す雰囲気が違うということだけは、鈍感な私ですら肌で感じることが出来た。結局私はこの「ホワッツ・ニュー」('84年)とその続編「ラッシュ・ライフ」('85年)、さらに続々編「フォー・センチメンタル・リーズンズ」('86年)のいわゆる “ネルソン・リドル三部作” を完全に無視、その後何事もなかったかのようにこの3枚のことはサッパリ忘れ、「サムホェア・アウト・ゼア」でポップス・シーンに復帰したリンロンに大喜びしていた。
 そうこうするうち90年代に入り、急につまらなくなった洋楽ポップスと絶縁した私は自分が熱中できる対象の音楽としてジャズを聴き始めた。ジャズにはインスト物とヴォーカル物があり、私はモードやフリーといった変な要素が入りにくいヴォーカル物に魅かれていき、初めてスタンダード・ナンバーの素晴らしさを知った。そこで改めてこの「ホワッツ・ニュー」がドーン!と私の前に屹立したのである。どーだ参ったかと降臨ましましたのである。これはもう “ハハァ~” と平伏すしかないm(__)m 思えばこのアルバムのリリースから既に10年以上が経ち、私も音楽を聴く幅が広がったのか、人間が丸くなったのか、とにかくあれほど嫌だったストリングスのサウンドが耳に心地良い。この時私はジャジーなリンロンの魅力に開眼したのだ。
 このアルバムには全9曲が収められており、そのどれもが心に沁みいるバラッドだ。第1声 “ホワッツ・ニュ~♪” の凄まじい吸引力によってこの曲のニュー・スタンダードになった感のある①「ホワッツ・ニュー」、ヴァースからテーマに入る瞬間がゾクゾクするほど素晴らしい②「アイヴ・ガット・ア・クラッシュ・オン・ユー」、渋いトーチ・ソングを切々と歌う③「ティアーズ・アウト・トゥ・ドライ」、ムード満点のテナー、ピアノ、ヴァイブの伴奏に乗った伸びやかなリンロンのヴォーカルがたまらない④「クレイジー・ヒー・コールズ・ミー」、ネルソン・リドルのユニークなアレンジが光る⑤「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァー・ミー」、リンロンの歌声が曲想とピッタリ合ったコワイぐらいの名唱⑥「ゴースト・オブ・ア・チャンス」、アーヴィング・バーリンの美曲を更に美しく歌い上げた⑦「ホワット・ウィル・アイ・ドゥ」、リンロンのエモーショナルなヴォーカルと歌心溢れるトロンボーンの絡みに耳が吸いつく⑧「ラヴァー・マン」、まるでベテランのジャズ・シンガーのように難曲を歌いこなす⑨「グッドバイ」と、スタンダード集初挑戦でよくもまぁこれだけ聴きごたえのあるアルバム作ったよなぁ... と感心してしまうような見事な内容だ。
 “ミス・アメリカ” と呼ばれるくらいポップ・フィールドで人気絶頂だったウエスト・コーストの歌姫がシナトラとの共演でも知られるネルソン・リドル・オーケストラの豊潤なサウンドをバックに渋~いスタンダードを歌ったこのアルバム、10年後にその真価が分かったニクイ1枚だ。

What's New Linda Ronstadt


Linda Ronstadt & the Nelson Riddle Orchestra I've Got A Crush On You

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2 コメント

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今更ですが、こんばんは。 (shoppgirl)
2010-02-24 21:44:14
“マイケル、マドンナ、ヴァンヘイレン”
“巨人、大鵬、卵焼き” みたいやね!

さすがにその状況下でこのアルバムは(笑)

まず、ジャケットが綺麗で
暫く部屋に飾っていました。(当時はLPでしたね)

この頃武道館公演があって、
生リンロンの「ホワッツ・ニュー」を聴いて涙がポロポロ出たのを良く覚えています。

スタンダードナンバーばかりだったので
客席の外人さんが「ロックンロールを歌って~~」とリンロンに叫んでいたのも印象的でした。

「I've Got A Crush On You」仰る通りゾクゾクしてしまう曲ですね。

やっぱりリンロンは歌姫の中の歌姫。
ロックからスタンダードまで歌いこなせる稀有な存在だと思います。

一連のリンロンの記事、とても楽しく拝見しました。
兄さま、ありがとうございました。
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なるほど... (shiotch7)
2010-02-25 20:03:24
>“巨人、大鵬、卵焼き” みたいやね!

ホンマや!語呂がエエので色々応用できそうです。
“リンロン、オリヴィア、カーペンターズ” とか、
“ミコちゃん、ミキティー、ちあきさん” とか...
他にも“ベッテル、アロンソ、シューマッハ” とか
他のジャンルにも使えそうです。

生リンロン見やはったんですね。
羨ましおまんなぁ(←関西弁コテコテ活用!)

>外人さんが「ロックンロールを歌って~~」
私も全く同じ気持ちでした。
さすがは姐さん、当時から筋金入りのリンロン・マニアやったんですね!
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