shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Jacksons Live

2009-06-28 | Rock & Pops (80's)
 マイケルの悲報から一夜明けて、今日は待ちに待ったオフの日なのに気分はどんよりと重い。昨日は「スリラー」や「バッド」を聴いて色々と思い出に浸っていたが、今日は「スリラー」以前のマイケル、つまりジャクソン5時代の「帰ってほしいの」から「オフ・ザ・ウォール」の頃までのソウルフルな歌声を無性に聴きたくなって、一日中ジャクソン5~ジャクソンズ時代の曲を聴いていた。
 ともすればその天才的なダンス・パフォーマンスに注目が集まり、ビデオ・クリップを始めとするヴィジュアル的な側面から語られることの多いマイケルだが、まだMTVなど存在していなかった70年代の作品の数々をガンガン聴きまくって感じたのは、「良い曲」と「彼の声」があればそれで十分だということである。ポップス、ソウル、ディスコ、R&B... たとえどんな外装、つまりサウンド・プロダクションを施そうとも彼が一声発すればそこにはジャンルを超えた “マイケル・ジャクソン” というスペシャルなジャンルが屹立する。よくあるマイケルのモノマネを見ていていつも思うのは例の “雄叫び” や “裏声” は模倣できても彼の歌声の芯の強さだけはどうしても再現できないということ。彼は素晴らしいエンターテイナーでありダンサーである以前に非常に優れたヴォーカリストなのだ。
 「スリラー」以前のマイケルといえば「帰ってほしいの」→「ABC」→「ザ・ラヴ・ユー・セイヴ」→「アイル・ビー・ゼア」という、デビュー作から4作連続全米№1という金字塔を打ち立てた頃にばかり注目が集まりがちでそれ以降は黙殺されているように感じられるのだが、75年のCBS移籍後は楽曲のクオリティーも格段に向上、72~74年頃のいわゆる低迷期の彼らに欠けていた “キャッチーな良い曲” が増え、あの名作「オフ・ザ・ウォール」誕生へとつながっていく。つまり70年代後半のジャクソンズというのはあまり話題に上らないが、マイケル好きにとっては結構オイシイ “宝の山” 的な時期なのだ。
 この「ザ・ジャクソンズ・ライブ」(81年)は80年のツアーの模様を収録した傑作ライブ・アルバム。モータウン時代のクラシックスがメドレーを含めて3曲、CBS時代のヒットが6曲、そして何と「オフ・ザ・ウォール」(79年)から4曲と、実にバランスの取れた選曲で “スリラー以前” のマイケルを一気聴き出来る超お徳用盤なのだ。
 アルバムはツアー時の最新アルバム「トライアンフ」収録のアップテンポなナンバー①「キャン・ユー・フィール・イット」で幕を開ける。長~いイントロに続いてまず他のメンバー(誰かは知らん)のヴォーカルで始まるのだが、何と言ってもマイケルが歌い始める3分4秒あたりが聴き所。それまでのモノクロの音世界がパッと鮮やかなカラーに変わるような瞬間が味わえる。そこが天才マイケルとその他4人の凡才兄弟(失礼!)の決定的な違いなのだ。マイケルが“Can you feel it?”と叫べば思わず“Yeah!!!”と答えたくなるし、“Everybody sing!”と煽れば一緒に歌いたくなる。つまりは説得力がちがうということだ。このツアーの時点で既に数百万枚売り上げていたマイケルのソロ作のタイトル・ナンバー③「オフ・ザ・ウォール」は絵に描いたようなブラック・コンテンポラリー・ミュージックの名曲で、⑬「今夜はドント・ストップ」と共に日本でもスズキのスクーターのCMソングとしてお茶の間にもガンガン流れていた記憶がある。それにしてもCMの映像で彼が見せるあどけない表情を見れば見るほど胸が痛む。この頃のマイケルは何だかんだ言いながらもまだ幸せだったような気がするなぁ...
 ④「ベンのテーマ」でダンス・ナンバーだけでなくスロー・バラッドを歌わせても超一流であることを示した後の⑤「ジス・プレイス・ホテル」は後の大ブレイクを予感させるようなドラマチックな曲想で、ダイナミックなヴォーカルを思う存分味わえる。マイケル屈指の隠れ名曲だ。⑦「あの娘が消えた」はややセンチメンタルに過ぎるというイメージがあったのだが、今日久々に聴いてその絶妙な感情表現に鳥肌が立った。こんな歌を聴かせてくれるのは彼だけだったのに...
 ⑦「ムービー&ラップ」ではステージに「帰ってほしいの」を歌う昔の映像(あの声はエド・サリバン!)が映し出され、ファンが大盛り上がりしているとマイケルが“Stop! Stop!”とそれを止めさせ、 “昔の曲を演ろうという兄弟たちvs新曲を歌いたいマイケル” という構図を作りファンをやきもきさせておいて “じゃあ君達ファンのために歌うよ” とマイケルがモータウン・メドレー⑧に突入していくというお約束の展開ながら、まさにアメリカン・エンターテイメントの王道を行く楽しさが伝わってくる。マイケルの “古いの好きなんだね... じゃあコレはどうだい!” というMCと共に始まる⑨「アイル・ビー・ゼア」にも涙ちょちょぎれる。このあたりはもうマイケルの独壇場で、その歌声に聴き惚れているとマイケルの“I think I wanna rock!” の掛け声と共に始まる⑩「ロック・ウィズ・ユー」のカッコ良さ!続いて⑪「ラヴリー・ワン」、⑫「ワーキン・デイ・アンド・ナイト」、⑬「今夜はドント・ストップ」と疾走感溢れるノリノリのナンバーが続くのだが、このアルバムは最初から最後まで名曲名演のアメアラレで、 “70年代マイケルの集大成” みたいな内容だ。
 81年に出たこのアルバムはそこそこ売れたにもかかわらず翌82年に出た「スリラー」の陰にすっかり隠れてしまい、あまり話題に上ることもない不憫な盤なのだが、内容自体は非常に素晴らしく絶好調のマイケル節が聴けるので、この盤の存在を知らない新しいファンだけでなく、すべてのポップス・ファンに自信を持ってオススメしたい1枚だ。

Michael Jackson on Japanese TVCF "SUZUKI LOVE"


Michael Jackson Suzuki Commercial (両目ウインクに注目!)


The Jacksons - This Place Hotel Live

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