shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

B-Sides The Beathes / The Smithereens

2010-06-10 | Beatles Tribute
 “B面”という言葉は CD 時代の今となってはほぼ死語に等しいが、私が音楽を聴き始めた1970年代は当然アナログ・レコードの時代であり、貧乏な中学生だった私は LP をホイホイ買うわけにもいかず、昼飯代を浮かせて貯めたなけなしのお金でシングル盤をパラパラと買っていた。当然のことながらお目当てはA面のヒット曲であり、ほとんどA面ばかり繰り返し聴いてB面は“せっかく買うたんやから一応聴いとこか...” 程度のノリで1、2回聴いてそれで終わり、というパターンがほとんどだった。
 そんな私のB面に対する概念を根底から覆したのが一連のビートルズ・シングルだった。初期~中期の作品群は英米とは違う日本独自のシングル・カットも多かったのだが、「赤盤」でビートルズに目覚めた私は、いきなり他のアルバムを買うお金もなく、「赤盤」から漏れ落ちた初期のロックンロール・シングルを中心に買って聴いていた。「ツイスト・アンド・シャウト / ロール・オーヴァー・ベートーベン」、「ロックンロール・ミュージック / エヴリ・リトル・シング」、「のっぽのサリー / アイ・コール・ユア・ネーム」など、“ベスト盤に入ってへん曲、それもB面でこんなに凄いなんて… ビートルズ恐るべし!” を痛感させられたものだ。中でも「プリーズ・ミスター・ポストマン」のB面に入っていた「マネー」の圧倒的な迫力には大いなる衝撃を受けたのをハッキリと覚えている。
 やがて国内盤 LP を1枚また1枚と買い始めたが、そーすると今度はオリジナル・アルバム未収録の曲が気になってくる。今では「パスト・マスターズ」なんていう気の利いた編集盤が存在するが、当時はもちろんそんなものはなく、 “シングル盤ディスコグラフィー” と首っ引きでそういう曲を調べ、買っていった。「抱きしめたい」のB面「ディス・ボーイ」(←「こいつ」って...史上最強の邦題やなぁ...笑)、「涙の乗車券」のB面「イエス・イット・イズ」、「アイ・フィール・ファイン」のB面「シーズ・ア・ウーマン」、「ヘルプ!」のB面「アイム・ダウン」etc、超ハイ・レベルなB面曲の数々に唸ったものだ。
 なぜB面について書いてきたかというと、今日取り上げるのが2回連続のスミザリーンズで、タイトルもズバリ「B-サイド・ザ・ビートルズ」なのだ。前回の「ミート・ザ・スミザリーンズ」も「ミート・ザ・ビートルズ」の完コピで、彼らのファブ・フォーに対する敬意と愛情の深さが伝わってきて嬉しかったが、ビートルズ・トリビュートというと判で押したように似たような選曲が横行する中(←めったやたらと「エリナー・リグビー」、「ペニー・レイン」、「サムシング」あたりが多いような気がする...)、今回の “ビートルズのB面曲特集” という企画はいかにもマニアックな彼ららしい発想で、私としては “参りました...m(__)m” という感じ。
 何と言っても1曲目が①「サンキュー・ガール」だ。コーラス・ワークといい、響き渡るハーモニカといい、初期ビートルズ好きの私はもうこれだけで嬉しくなってしまう。続くのは②「ゼアズ・ア・プレイス」、デビュー・アルバムのラス前にさりげなく置かれていた隠れ名曲をスミザリーンズお得意のパワー・ポップ・カヴァーで見事なヴァージョンに仕上げている。大好きな④「ユー・キャント・ドゥー・ザット」もギターのフレーズからバック・コーラスの細部に至るまでオリジナルに忠実に再現されており、彼らのビートルズ・マニアぶりがよくわかるトラックになっている。
 ⑤「アスク・ミー・ホワイ」はド素人の私が思っている以上の難曲なのか、かなり苦戦しているように聞こえる。特に曲のキモとでも言うべき “アイ、アアアイ♪” はやはりジョンにしか歌いこなせないように思う。ロックンロール・クラシックス⑩「スロー・ダウン」の “ブルルルル~♪” も同様で、天才ヴォーカリスト、ジョン・レノンの偉大さを改めて思い知らされる。まぁジョンと比べるのも酷な話だが...(>_<)
 インスト曲⑥「クライ・フォー・ア・シャドウ」は意表を突く選曲だが、このアルバムのこの位置に置かれると何故か良いアクセントになっているところが面白い。⑦「P.S. アイ・ラヴ・ユー」、⑧「アイム・ハピー・ジャスト・トゥ・ダンス・ウィズ・ユー」、⑨「イフ・アイ・フェル」と続くところなんか、まさに “初期ビートルズ隠れ名曲集” の様相を呈しているし、ビートルズ・ナンバーの中でも過小評価曲の極北に位置する⑪「アイ・ドント・ウォント・トゥ・スポイル・ザ・パーティー」でもヴォーカルやギターがさりげなく良い味を出している。ラストに⑫「サム・アザー・ガイ」を持ってくる曲配置にもニヤリとさせられるが、これがまた初期ビートルズが持っていたプリミティヴなエネルギー感を見事に体現したカッコ良いロックンロールに仕上がっていて私なんかもう大喜びだ。
 世間ではビートルズといえばすぐに「イエスタデイ」や「レット・イット・ビー」といったバラッド群に注目が集まるが、誰が何と言おうとビートルズの原点はポップ感覚溢れるロックンロールにあるのだということを再認識させてくれるこのアルバム、ビートルズ・マニアなバンドによる、ビートルズ・マニアのための、ビートルズ・マニアックな1枚だ。

The Smithereens - There's a Place


The Smithereens - I Don't Want to Spoil the Party


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2 コメント

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コメ (マーサ)
2010-06-11 16:40:17
ブログの内容と関係なくて申し訳ないんですが、貴殿は、『ビートルズ えっ!?』(原題:ペーパーバックライター)を読まれたことはありますか?
もう廃盤でしょうから、ネットオークションあたりで買うしかない代物ですが、とにかく大傑作。
ビートルズをパロってパロって、適当に出ている伝記より、こっちのほうがよっぽど事実に近いのでは、とさえ思わせます。
もし、既読であれば、ご容赦ください。
もし、まだだったら、ほんっとに面白いですから、ぜひご一読を。では失礼します。
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この本、大好きです (shiotch7)
2010-06-12 01:17:38
マーサさん、連続コメありがとうございます。
この本、既読ですが、ビートルズの話なら何でも大歓迎です♪
確か私が高校生の時に出たと思うんですが、すぐに買って読みました。
おっしゃる通り、似たような伝記本が多い中で
コレはめっちゃユニークな内容で、
引き込まれるように読みました。
特に28章のラジオ局のくだりと
自らをビル・ヘイリーに例えた29章が印象的でした。
「ディスコ・ジーザス」に「プリーズ・フリーズ・ミー」...
聴いてみたいもんです(爆)
まぁこんな妄想の類でも立派なフィクションになってしまうんですから
ビートルズって凄い存在ですよね~(^.^)
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