shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「A Hard Day's Night」南ローデシア盤

2020-06-11 | The Beatles
 私は小学校の頃から地理が大の苦手で、この年齢になっても世界の国名とか地名とかはチンプンカンプンである。そんな私が “南ローデシア” という地名を初めて目にしたのは例のガイド本「アナログ・ミステリー・ツアー」で、その中に「ビートルズ・フォー・セール」の南ローデシア盤というのが載っているのを見つけて“南ローデシアってどこやろ? 東ヨーロッパかいな?” と思ってググってみたら何とアフリカ...(゜o゜)  ただ、その時はへぇ~アフリカねぇ... ぐらいの印象しかなく、聴いてみたいという気持ちもあまり起こらなかった。
 そもそも私はアフリカでプレスされたレコードに対して良い印象を持っていない。過去に「ヘイ・ジュード」や「レット・イット・ビー」、「エボニー・アンド・アイボリー」の南アフリカ盤が発する眠たい音にブチギレて叩き割りたくなったことがあり、それ以降アフリカ・プレスの盤は完全スルーを決め込んできたのだ。「フォー・セール」の南ローデシア盤には湯浅学氏が “独自のドライな解釈で捉えたローデシアのカッティング・エンジニアは相当なものなのではないか” と高い評価を与えておられたが、アフリカ盤アレルギーの強かった私は軽く読み飛ばし、その後は南ローデシアという言葉もすっかり忘れていた。
 そして先々週の土曜日、奈良のコロナ感染者数も0が続くようになったのでようやく巣篭り生活(←ただ単に自分の身が可愛かっただけなので“自粛”じゃないです...笑)をやめて久々にB-SELSを訪れたところ、壁面を飾るレコード群が以前来た時と結構変わっており、その中で最も私の注意を引いたのが「ア・ハード・デイズ・ナイト」の南ローデシア盤だった。その店頭ポップには “激レア!” “最難関の南ローデシア” “このレコードはかなり良い音がします!!” と、控えめな性格のSさんにしては刺激的な煽り文句が並んでいた。
 私は咄嗟に “聴いてみたいな...” と思ったが、まずはSさんとの久々の再会を喜び合い、怒涛のようなビートルズ・トークの応酬(笑)で盛り上がって、それが一段落したところでSさんが “何かかけましょう” と仰って壁面を眺めまわし、私が “南ローデシア” と言おうとしたその瞬間にサッと手にされたのが「ア・ハード・デイズ・ナイト」の南ローデシア盤だったのだ。“今、それをお願いしようと思うてましてん。何でもお見通しですね(笑)” と言うと、“これ結構良い音がするので聴いてもらおうと思ってたんです。” とのこと。早速二人で試聴を開始した。
 Sさんがレコードに針を落とすと、A面1曲目の「A Hard Day's Night」の例のイントロ “ジャーン!” からもうエンジン全開でビートルズのポップな音が弾けるようにスピーカーから勢いよく飛び出してきてビックリ(゜o゜) 同じアフリカでも南アとは正反対の、実に溌剌とした元気な音だ。60年代モノラル・サウンドの一番オイシイ部分をギュッと凝縮したような感じとでも言えばいいのか... とにかく聴いててめっちゃ気持ちがエエんである。
 私はコーフンを抑えきれず Sさんに “これ、めちゃくちゃエエじゃないですか!” と言うと “良いでしょ?” と実に嬉しそう。「I Should Have Known Better」や「I'm Happy Just To Dance With You」といったアップ・テンポの曲にピッタリの音作りなのだが、驚いたことに「If I Fell」や「And I Love Her」といったスロー・バラッドも実に良い味を出していて、思わず聴き入ってしまったほど(≧▽≦)  この日は母親を迎えに行かねばならなかったので残念ながらここで強制終了になってしまったのだが、家に帰ってからもお店で聴かせていただいた “あの音” が頭から離れず、“これはもう買うしかないな...” と思った私はその翌週の金曜日に仕事を終えてからATMでお金をおろし、B-SELSへ直行。“前の続きを聴かせて下さい!” とお願いしたら Sさんも快諾して下さり、試聴を再開した。
 私:う~ん、やっぱりエエなぁ...
 Sさん:UK盤と比べると音圧はやや低めですが、少しだけヴォリュームを上げてやるとかなり良い音で鳴りますね。
 私:まさに60年代の音、という感じです。
 Sさん:UK盤より哀愁ありますね。
 私:そうそう、何か魅かれるんですよ。
 Sさん:私もです。
 私:この音作りって、華やかなアイドル・ポップスとしてのビートルズ・ミュージックが開花した「A Hard Day's Night」にドンピシャです。その前の「With The Beatles」ともその後の「Beatles For Sale」とも微妙に違う、まさに「A Hard Day's Night」のための音ですよ。逆に「Revolver」以降のアルバムには合いませんよね。
 Sさん:そうですね。「Sgt. Pepper's」なんか絶対合わない。
 私:そういう意味ではこの盤を切った南ローデシアのビートルズ担当エンジニアの感性とその技術力はかなりのモンだと思います。
 Sさん:盤質も奇跡的なくらい良いですもんね。アフリカのレコードでこれだけキレイなのも珍しいです。
 私:おぉ、「Any Time At All」の躍動感がハンパないッスね。
 Sさん:こんなに喜んでいただけるなんて、紹介した甲斐がありました。
 私:この前帰ってからずーっとこのレコードの事ばかり考えていて、“もし売れてしもうてたらどないしよ...(>_<)” って気が気じゃなかったんです。
 Sさん:南ローデシア盤なんて誰が買いますの! そんなん狙ってるの、shiotchさんぐらいのもんですよ(笑)
 私:そんなもんですかねぇ... まぁ確かによっぽど思い入れが強くないと買いませんわね、南ローデシア盤なんて。
 Sさん:ハハハハ...
 私:とにかくこれ売って下さい。
 Sさん:毎度ありがとうございます...(^.^)

尚、これですっかり味をしめた私は Discogsで「Help!」の南ローデシア盤を見つけて衝動買いしてしまった。どんな音で鳴るのか、今から大いに楽しみだ。