shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Cocktail For Three / Georges Arvanitas

2018-04-01 | Jazz
 ジャズの世界には同じアーティストの作品で演奏の内容もジャケット・デザインの佇まいも似通った、いわゆるひとつの “双子盤” レコードが存在する。クリス・コナーの「シングス・ララバイズ・オブ・バードランド」と「シングス・ララバイズ・フォー・ラヴァーズ」(ベツレヘム)、ジョニー・スミスの「イン・ア・メロウ・ムード」と「イン・ア・センチメンタル・ムード」(ルースト)、リー・コニッツの「海岸のコニッツ」と「蔦のコニッツ」(ストーリービル)など挙げていけばキリがないが、困るのは運良く片方を手に入れてしまうとどうしてももう片方も欲しくなってしまうことである。これはレコード・コレクターの悲しい性というべきかもしれない。
 念願叶ってジョルジュ・アルヴァニタスの「3 a.m.」を手に入れた話は前回書いたが、私は同じレーベルから出ている「カクテル・フォー・スリー」の方も欲しくなってしまった。どちらもモダン・ジャズの王道を行く正統派ピアノトリオでジャケット・デザインの雰囲気も似ており、仲間内ではその色の違いから「3 a.m.」を“赤盤”、「カクテル...」を“青盤” と呼ばれていた、まさに絵に描いたような双子盤である。
私は早速 eBayやDiscogsで最重点アイテムの1枚としてこの盤を追いかけ始めたのだが、これほどのメガレア盤がそう簡単に手に入るはずがない。結局去年は1回だけ eBay で勝負したがモノの見事にアウトビッドされ(←どうやら日本人の転売屋に競り負けたようで、2週間ほど経ってからヤフオクで全く同じブツを見つけたのだが、eBay落札額に2万円ほど上乗せしとった...)、Discogs にも €600というボッタクリ価格のブツしかなくて万事休す...(>_<)  オリジナル盤コレクターの道は厳しいのう... と途方に暮れていた。
 だがしかし、待てば海路の日和ありとはよくぞ言ったもので、ついに念願叶う時がやってきた。今回もきっかけは「3 a.m.」の時と同じ Discogs の “1 New Item For Sale In Your Wantlist” というお知らせメール。ちょうど午前中の退屈な仕事が終わって “あ~鬱陶しかった...(>_<)” と辟易しながらパソコンを開いたところ、Discogs から “ウォントリストに入れてるアイテム出品されたよ~ (^.^)” というメールが来てて “どのレコードやろ???” と思いながら確認すると、何と「カクテル・フォー・スリー」がわずか €100 で出ているではないか! これはエライコッチャである。さっきまでの仕事の不満などどこかへ消し飛び、一気にテンションMAXへ急上昇だ。
 大コーフンしながら詳細を確認すると、盤質がVGでジャケットがVG+ というコンディション表記だが、“Cover looks great, a bit used all around. Record plays great with little surface noise. Absolute French gem!” とのことで思い切って即決。入手困難なヨーロッパのマイナー・レーベル盤が送料込みで15,000円なら御の字だ。
 届いたレコードは何故か「3 a.m.」とは違ってコーティング・ジャケットでもフリップバック仕様でもなく一瞬リイシュー盤をつかまされたのかと焦ったが、ジャケットも中袋も経年劣化でかなりくたびれているし、盤もフラット・ディスクの重量盤なので多分1st プレスで間違いなさそうだ。まぁこのレコードに限ったことではないが、本物と見分けがつかないほど精巧に作られたリイシュー盤の存在は私のようなオリジナル盤至上主義者にとっては迷惑以外の何物でもなく、特にデータの少ないヨーロッパ盤の場合は紛らわしいので要注意だ(>_<)
 中身の方はバリバリのハードバップ・ピアノトリオ。ベースがジーン・テイラー、ドラムスがルイ・ヘイズということで「3 a.m.」のダグ・ワトキンス+アート・テイラーという重量級リズム・セクションよりも格落ちな感は否めないが、リズムが軽めな分リーダーのアルヴァニタスが目立っており、まさに獅子奮迅といった感じでトリオをグイグイ引っ張っている。A①「カクテル・フォー・スリー」なんかその最たるもので、バド・パウエル直系のアップテンポで軽やかにスイングする気持ちの良いピアノトリオ・ジャズが愉しめる。A③「アルゴ・ブエノ」はディジー・ガレスピーの「ウッディン・ユー」のスペイン語タイトルで、A①同様にスピード感溢れる小気味よいピアノがスピーカーから飛び出してきて何とも言えない心地良さ(^.^)  つんのめるように滑って行く爽快感がたまらない。やっぱりピアノトリオはパウエル系がよろしいな...
Cocktail For Three - Georges Arvanitas

Algo Bueno


 B面に入ってもトリオの勢いは衰えず、ロリンズのB①「エアジン」でいきなりガツン!とやられる。ピアノ、ベース、ドラムスの三者が組んずほぐれつしながら疾走する様は痛快無比のカッコ良さだ。ミディアムでスイングするB②「ミーン・トゥ・ミー」で一息ついた後は再び急速調のB③「チューン・アップ」でアグレッシヴにガンガン攻めまくる。そしてラストはタイトル通りのブルース・フィーリング溢れる演奏が白眉のB④「ブルージー・ブルース」... トリオが一体となって生み出す圧倒的なグルーヴがめっちゃ気持ち良い(^o^)丿 センター・レーベルを見るとスピンドル・マークが盛大に付いていて高音域がビリつくところがあるのが玉にキズだが、それを差し引いてもこのド迫力サウンドを聴けば大枚を叩いて良かったぁ... と思ってしまう。ピアノ・トリオ・ジャズの鑑とでも言うべきアルヴァニタス盤を2枚とも手に入れることが出来てウッキウキなのだ(^.^)
Airegin - Georges Arvanitas

Bluesy Blues - Georges Arvanitas