shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ビートルズのドイツDMM盤特集④

2017-02-12 | The Beatles
 ビートルズのドイツDMM盤特集パート4は後期の3枚+コンピ盤「レアリティーズ」だ。

①Yellow Submarine [04002-A1, 04002-B2]
 私にとってこの「イエロー・サブマリン」というアルバムは極論すれば「ヘイ・ブルドッグ」1曲のために存在する。楽しさ溢れる「オール・トゥゲザー・ナウ」やジョージの2曲はどーした?と言われそうだが、それら3曲はアルバムの中ではあくまでも名脇役であって決して主役ではない。一昔前のF1で言えば(←燃費を気にしながらペース配分して走らざるを得ない今のF1はクソつまらん!)ベルガーやパトレーゼ的な存在で、決してセナ、プロスト級ではないということだ。
 そんなワールド・チャンピオン・クラス(?)の超愛聴曲「ヘイ・ブルドッグ」がDMM効果によってどんな音で鳴るのかが聴きたくてこの盤を買ったのだが、結果は期待を裏切らない轟音で、自由闊達に歌いまくるポールのベース(←これホンマに凄いです!)がDMM特有のクリアーな音で聴けて大満足(^.^)  ダブル・トラック処理されたジョンのヴォーカルも実にパワフルに響くし、ガンガン打ちつけるピアノの低音もこの曲の持つへヴィネスに拍車をかけている。因みに爆音が売りの「イエロー・サブマリン・ソングトラック」の同曲とも聴き比べてみたがその差は歴然で、圧倒的にこのDMM盤の方が音が良かった。
 「ヘイ・ブルドッグ」以外では不気味にうごめくが如き低音が耳に残る「イッツ・オンリー・ア・ノーザン・ソング」やカオス状態でのハジけ方がイマイチ物足りない「イッツ・オール・トゥー・マッチ」よりも竹を割ったような潔さが気持ちいい「オール・トゥゲザー・ナウ」が出色の出来。躍動感溢れるリズムをザクザク刻むアコギの音はDMMとの相性バッチリで、この曲の魅力を上手く引き出した音作りになっている。

②Abbey Road [1042431 -A1, 1042431-B1]
 DMM盤というのは主役であるはずのヴォーカルやギターに遠慮せずに思う存分ベースとドラムスに浸りきるレコードだ。この「アビー・ロード」でもそれは同様で、「カム・トゥゲザー」や「ヒア・カムズ・ザ・サン」で聴ける肥大化したベースには言葉を失うし「ジ・エンド」におけるリンゴのドラミングも強烈なのだが、肝心のヴォーカルがキンキンして不自然に響くわ、音空間も狭くてステレオの良さが全然感じられないわではハナシにならない。DMMによって得た物よりも失ったものの方が遥かに大きい気がするのだ。
 それにこの「アビー・ロード」というレコードの本来の姿はあくまでもUKオリジナル盤で聴けるメロディアスなロック・シンフォニー絵巻の壮大なサウンドであって、バランスを崩してまで力強いビートを楽しむための盤では決してない。これはビートルズやジョージ・マーティンが意図したサウンドとは明らかに違う “デフォルメされたサウンド” であり、ベース&ドラムス好きの私ですら何回か聴くうちに飽きてきて “やっぱり耳に馴染んだUK盤の方がエエわ” と思ってしまった。UK盤を血の通った人間とするなら、DMM盤はさしずめサイボーグといったところか。そういう意味では “テクノロジーが生み出した鬼っ子” とでも言うべきこのDMM盤は万人にはオススメできない異端の1枚と言えるかもしれない。

③Let It Be [04433 -A1, 04433 -B2]
 “ロックンロール・バンドとしてのビートルズ” が好きな私はフィル・スペクターが女性コーラスやらオーケストラやらを付け足して厚化粧を施したアルバム「レット・イット・ビー」はセンチメンタルでかったるいサウンドが不満で、 “このレコードをもっとパワフルな凛々しい音で聴きたい!” との思いからPhil&Ronnie刻印入りUS盤や南アフリカ・マト1盤など色んな「レット・イット・ビー」に手を出してきたが、どれもこれも私が望む音とは程遠い中途半端なサウンドで、最近ではUKオリジ以外の有象無象盤はほとんど聴かなくなっていた。
 そういうワケで今回このDMM盤を手に入れた時もこれまでの経験から正直あまり期待はしていなかったのだが、実際に聴いてみてビックリ(゜o゜)  “軽やか” というイメージがあった「トゥー・オブ・アス」のアコギのストローク音は重厚に響くし、「アクロス・ザ・ユニバース」や「レット・イット・ビー」「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」といったスロー・バラッドですら実にパワフルで一回りスケールアップして聞こえる。ましてや「ワン・アフター・909」や「ゲット・バック」といったアッパーな曲に至ってはDMM効果で聴感上の疾走感が大きくアップしており、“やっぱりビートルズはこうでなくっちゃ!” との思いを改めて強く感じさせてくれるバリバリのロックンロールになっている。他のDMM盤とは違ってベースやドラムスだけではなくギターもヴォーカルもコーラスも、盤に刻み込まれたありとあらゆる音に力感が漲っているところが素晴らしい。
 このレコードは “「レット・イット・ビー」はUK、デンマーク、そしてこのドイツDMM盤があればそれで十分”... そう言い切ってしまいたくなるような逸品中の逸品であり、全DMM盤の中で最もターンテーブルに乗る回数が多いアルバムなのだ。

④Rarities [06867-A2, 06867-B1]
 CD時代に入ってからは「パスト・マスターズ」に取って代わられ今や完全にその役目を終えた感がある「レアリティーズ」だが、1979年にこのアルバムが初めてリリースされた当時は「アクロス・ザ・ユニバース」の通称 “バード・ヴァージョン” が聴けるとあってファンの間でかなり話題になったものだった。
 というワケでこのアルバムの目玉トラックである「アクロス・ザ・ユニバース」を1969年にリリースされたオリジナルのRegal Starline盤と聴き比べてみたのだが、これはもう圧倒的にオリジナル盤の方が音が良い。イントロの鳥の羽ばたきからしてオリジナル盤の方が鳥の数が多いんちゃうかと思えるくらい自然な広がりを感じるし、アコギのコード・ストロークの音も力強く響く。要するに他の盤で聴けるようなDMMの良さが全く出ていない凡庸なサウンドなのだ。又、「抱きしめたい」のドイツ語ヴァージョンでは右スピーカーから聞こえるヴォーカルに風呂場で聴いているかのような過剰なエコーがかけられていて気持ち悪いったらない(>_<)  ビートルズの歌声にエコーをかけるな!!!
 しかし盤をひっくり返してB面に入ると状況は一変、1曲目に収められた「レイン」はそういった不満を雲散霧消させてしまう素晴らしいサウンドで、どんよりしたA面との違いにビックリさせられた。とにかく一つ一つのアタック音が “力強い” のだ。イントロでいきなり炸裂するリンゴのスネア5連打の凄まじさには思わずのけぞってしまいそうになるし、ポールのベースもブンブン唸って力強く脈打ちながら曲を根底からしっかりと支えている。調子に乗ってアンプのヴォリュームを上げていくとリスニングルームはまさにDMMワンダーランド、サウンドの大海原と化し、ジョンの名曲数え歌、ポール掟破りのインタープレイ、そしてリンゴのスーパー・テクニックが炸裂するドラミングはアックスボンバー三つ又の槍の如し(?)で、私なんか聴くたびに完全KOされてしまう。B面の残り7曲でもA面とは打って変わってDMMらしい元気溌剌としたサウンドが聴けるのだが、私的にはパワフルな「レイン」が聴けるだけで大満足だ。