shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Battles Without Honor And Humanity: The Complete Collection Blu-ray Box

2017-02-25 | TV, 映画, サントラ etc
 ビートルズのアナログ各国盤シリーズも一段落したので今回はガラリと趣向を変えて音楽から離れ、先月亡くなった松方弘樹の追悼に最近手に入れたブルーレイ・ボックスを取り上げようと思う。
 私は任侠映画の大ファンで古き良き東映黄金時代の諸作品から最新のVシネマまでほぼ欠かさず観ているのだが、これまで観てきた何百という任侠モノの中で私が最高傑作と信じて疑わないのが「仁義なき戦い」シリーズだ。そしてオールスター・キャストと言っても過言ではない超豪華な出演陣の中でも特に強烈なインパクトを受けたのが小林旭と菅原文太、そして当時若手の注目株だった松方弘樹だ。
 彼は5部作中の3作品にそれぞれ違った役柄で出演し、その3回ともに志半ば(?)にして殺されている。まさに “松方弘樹は3度死ぬ”(←007かよ...)というワケだが、それだけ深作欣二監督が彼の才能を高く買っていたということだろう。特に5作目の「完結編」で彼が演じた市岡輝吉のインパクトは強烈で、宍戸錠演じる大友勝利との絡みのシーンなんかもう最高だ。結局、彼は映画の真ん中あたりで殺されてしまうのだが、作品の途中で姿を消しても記憶に強く残る演技が出来るところに役者・松方弘樹の真骨頂があると思う。
 そんな彼の訃報は私にとっては大きなショックで、その週末は追悼のために「仁義なき戦い」を始めとして「修羅の群れ」「北陸代理戦争」「最後の博徒」「新・日本の首領」といった彼の代表作DVDを一気観。どの作品も文句のつけようのない名作だが、中でもやはり「仁義なき戦い」シリーズは異次元の素晴らしさだ。
 これらのDVDを観終わった後、ふと “大画面用にレストアしてブルーレイで出てへんかな...” と思いついた私(←去年観たシェア・スタジアム・ライヴのレストア版で味をしめた???)はすぐにアマゾンをチェック。シリーズ5作にボーナスディスクを加えた国内版ブルーレイ・ボックスを見つけたのだが、3万円はさすがにちょっと高すぎる。ヤフオクも似たようなモンで、既にDVDで持っている盤にそんな大枚を叩く気にはなれない。そこで国内がダメなら海外があるわいとeBayを覗いてみたところ、何とUS版のブルーレイ・ボックスが「Battles Without Honor And Humanity」というタイトルで出ているではないか! しかもありがたいことにリージョン・フリーで、何と英語の字幕付きらしい。あの強烈な広島弁のやり取りがどんな風に英語に訳されているのか、大いに興味をそそられるところだ。
 このUSボックスは2,500セット限定商品とのことで、発売から1年が経ちそろそろプレミアが付き始めているらしく、発売時は定価$100だったものが$250~$350ぐらいの高値で取り引きされていたが、ラッキーなことにたまたま$100の即決価格で出品されたブツを発見、送料込みでも国内版の半値以下で買える計算だ。私は迷わず買いを決めた。
 このボックスは第1作「仁義なき戦い」(Battles Without Honor And Humanity)、第2作「広島死闘篇」(Hiroshima Death Match)、第3作「代理戦争」(Proxy War)、第4作「頂上作戦」(Police Tactics)、第5作「完結篇」(Final Episode)の各巻がBlu-rayとDVD2枚組セット(共にリージョン・フリー)で、更に「総集篇」(The Complete Saga)Blu-ray 1枚が付いた13枚組セットになっており、日本語PCM音声に英語字幕が付いた美麗映像で深作欣二監督が作り上げた日本ヤクザ映画の金字塔を心ゆくまで堪能できる。
 ジャケットカヴァーはリバーシブル仕様になっており、表が描き下ろしオリジナル・イラストで、裏が日本公開時のオリジナル・ポスターという粋な作りになっているのもファンとしては嬉しい。更に「The Yakuza Papers」と題した全152ページのハードカヴァー・ブックレットまで付いており、各エピソードにおける人物相関図を始め、様々なエッセイやらインタビュー、そして貴重な写真が満載だ。
 映像は丁寧にレストアされており、大画面での鑑賞に十分耐えうるレベルまでグレードアップ。又、広島弁の英語訳も期待を裏切らない面白さで、“へぇ~、このセリフがそんな英語になるんか...” と大いに楽しませてもらった。松方絡みのセリフで特に印象に残ったものを挙げてみると...
①1作目、山守組若頭・坂井(松方)が山守親分(金子信雄)を恫喝するシーン
「あんたは初めからワシらが担いどる神輿じゃないの。組がここまでなるのに誰が血ぃ流しとるの?神輿が勝手に歩けるいうんなら歩いてみいや!」
(You're just the palanquin. We've always done the heavy lifting. Who shed the blood to get us here? You think you can make it on your own, palanquin?)
仁義なき戦い 名言「神輿が勝手に歩ける言うんなら歩いてみいや 」

②5作目、敵対関係にあった大友勝利(宍戸錠)と市岡輝吉(松方)が兄弟盃を交わすシーン
「お互い分のある縁組みじゃけぇ、受けてもエエんじゃないですか」
(If this marriage can benefit us both, why not go along with it?)
「そらぁエエがのぉ、市岡、オマエ盃ゆぅモンを軽う見とりゃせんか?牛の糞にも段々があるんでぇ。おどれとワシが五寸か? 軽う見んな!」
(Fine, Ichioka, but aren't you taking the vows of brotherhood too fucking lightly? Even cow shit has different grades, you know. Are you saying you and I are equals? Don't insult me!)
仁義なき戦い 名セリフ 完結篇「牛の糞にも段々があるんで、おどれとわしが五寸かい」

③同じく5作目、敵の縄張を荒らしに乗り込んできた市岡輝吉組長(松方)が若い衆を煽るシーン
「オゥ、オマエら、かまわんけぇ、そこらの店、ササラモサラにしちゃれい!」
(Scatter into the shops around here and have yourselves some fun.)
仁義なき戦い 名セリフ 完結篇「そこらの店ササラモサラにしちゃれい」

 私はこの「ササラモサラ」という言葉の響きが大いに気に入り(←“メチャクチャ”っていう意味の広島弁か?)、昔気質のイケイケドンドンなヤクザを演じる松方の怪演と相まって忘れられないシーンになっているのだ。去年出たVシネマ作品でも有象無象の共演者たちが霞むような圧倒的な存在感で、まだまだこれからも楽しませてくれるだろうと思っていただけに彼の死は本当に残念だ。ここに心よりご冥福を祈りたいと思う。
 尚、松方以外では、1作目のラストで菅原文太が放つ名セリフ「山守さん、弾はまだ残っとるがよう...」(Yamamori, I've still got some bullets left...)があまりにも有名だ。
仁義なき戦い 名言「弾はまだ残っとるがよう 」

又、日本映画史上屈指の名シーンと私が信じる小林旭vs 梅宮辰夫(4作目)の火の出るような言葉の応酬...
小林:「広島極道はイモかもしれんが、旅の風下に立ったことはいっぺんもないんで。神戸のモンいうたら猫一匹通さんけん、おどれら、よぉ覚えとけや!」
(We may not be very sophisticated here in Hiroshima, but we never let visitors stand upwind of us. We won't let so much as a cat get through if he's from Kobe. Don't forget that!)
梅宮:「よぉし。おんどれらも吐いた唾、飲まんとけよ。ええな。わかったら、早よ いね!」
(Fine. You guys take care your spit doesn't blow in your own faces. Got that? Now get out of here!)
... は何度聞いても鳥肌が立つくらいスリリングだ。やっぱり東映の任侠路線は最高じゃのぉ...(^.^)
仁義なき戦い 名セリフ 頂上作戦 「広島極道は芋かもしれんが旅の風下に立ったこたぁいっぺんもないんでぇ」