shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ビートルズのドイツDMM盤特集③

2017-02-05 | The Beatles
 ビートルズのドイツDMM盤特集パート3は中期の4枚をご紹介。初期の4枚に比べるとDMMの音作りがかなり安定してきているように思える。

①Help! [04257-A1, 04257-B1]
 ドイツDMM盤の一番の特徴はいわゆるひとつの “低域メガ盛り” だが、この「ヘルプ!」では “巨大化したベース” とか “地鳴りのように響くバスドラ” といった極端な欠点は影を潜め、同じ低音でも「プリーズ・プリーズ・ミー」のような野放図な“ボーン”ではなく沈潜的な“ズーン”に近い音へと質的な変化が感じられる。
 低域の深化によってA②やA⑦といったロック系の曲はドライで硬質な味わいが強まって押し出し感の強い強靭なサウンドになっているし、A③やB②といったフォーキーな曲では音像がひとまわり大きくスケールアップしていて聴き応え十分だ。ただし「ビートルズ・フォー・セール」ほど酷くはないものの、“高域を強調し過ぎ” という欠点が完全に解消されているとはいえず、ウチのシステムではA④やA⑤でプリアンプのトレブルを一目盛りほど絞って聴いている。DMMの音作りにおける “盛り” のさじ加減ってホンマに難しいですな。

②Rubber Soul [04115-A2, 04115-B1]
 「ラバー・ソウル」は泣く子も黙るUKモノ1stプレスのラウドカット盤の存在を抜きにしては語れない。ステレオとモノラルの違いがあるとはいえ、爆音が売りのドイツDMM盤のコンプリート蒐集を心に決めた時点から両者の比較が何よりも楽しみだった。実際に聴き比べてみると同じ爆音でもラウドカット盤の方は全帯域において音圧が高く、まるで巨大な音の塊がスピーカーから迸り出てくるような感じなのに対し、DMM盤の方は個々の楽器(特にベース)の音が強調されていてヘタをすると別ミックスのようにも聞こえかねないのだが、あくまでも許容範囲内に収まっているので聴いていて違和感を覚えるようなことは一切ない。一言でいうと、ラウドカット盤が “凄い音” で DMM盤は “面白い音”(←もちろん良い意味で...)という感じ。特にヘフナーからリッケンに持ち替えたポールのベース・ラインが他のどの盤よりもクリアーに聞き取れるので、“ここでこんなフレーズ弾いてたんか...” という発見があったりして中々楽しい(^.^)
 又、DMM盤特有の広いランオフ・エリアのおかげでラウドカット盤のA⑦で発生するいわゆるひとつの “内周歪み” に煩わされることなく音楽に浸れるのも大きなメリット。DMMならではのクリアーでシャキシャキした音はA⑤B①B③B⑦のようなアッパーな曲の魅力をアップさせているし、A④で眼前に広がる雄大な音空間もめっちゃ気持ちがいい。そういうワケで、ステレオに限って言えば両面マト2のUK盤よりもむしろこのドイツDMM盤の方がターンテーブルに乗る回数は多いかもしれない。ドイツ盤も中々やるやん(^.^)

③Revolver [04097-A1T, 04097-B1T+1]
 DMM盤の一番の特徴はでっかいベースの音であることは論を待たないが、「リヴォルヴァー」の原盤は元々低音重視の音作りがなされているせいか、他のDMM盤を聴いた時のようにベースの音のあまりのデカさに驚かされるというようなことはない(←まぁそれでも強烈な音が入っていることに違いはないが...)。それより何より印象的だったのは超クリアーな音でこのレコードが聴けることで、A②でイントロのコーラスに続いて右チャンネルから聞こえてくるポールのヴォーカルの生々しさは筆舌に尽くし難いし、左チャンネルから聞こえてくるストリングスの音もめっちゃアグレッシヴ(≧▽≦)  この1曲を聴くだけでもこのアルバムを買う価値は十分にあると思う。
 このDMM盤は音の定位もいじってあるようで、曲によってはかなりセンター寄りにヴォーカルが位置するので聴感上はモノラルに近いサウンドになっており、音が上下左右に散漫に広がらず真ん中に密集した結果、行き場を失った音が前へ飛び出してくるような感じがする。ひょっとすると担当したドイツ人エンジニアがステレオの左右感ではなく前後感を狙ったのかもしれない。この音作りはリンゴの超絶ドラミングが炸裂するA⑦やB⑦のような “リヴォッてる” 曲では特に効果テキメンで、他の盤とは一味違うカッコ良いトラックに仕上がっている。この2曲は絶対に大音量で聴くべし!だ。

④Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band [04177-A1, 04177-B1]
 手持ちの「サージェント・ペパーズ」のステレオ盤の中ではUK黄パロ盤とドイツ・ゴールド・オデオン盤、そしてこのドイツDMM盤がトップ3(←残念なことにニンバス・プレス盤は持ってない...)だ。この3枚はどれも甲乙付け難い高音質盤で、音の鮮度ではUK黄パロ盤が、ステレオ・ミックスの完成度ではドイツ・ゴールドオデオン盤が、そして音の凄さではドイツDMM盤が抜きん出ている。
 とにかくDMMのメリットを一番享受する楽器であるベースとドラムスの “音” の凄さは特筆モノで、A①やB③ではとてもリンゴとは思えないような(笑)ダイナミックなドラミングが炸裂、ビシバシ決まる一打一打が痛快そのものだし、B⑤では気合い十分のプレイで最高のビートを叩き出してバンドをグイグイ引っ張っていく。ポールのベース音も低くグワーンと下から突き上げるような感じで戦闘的に前へ飛び出してきて実に気持ちが良い。A②③ではゴムまりのように弾むベースがブンブン唸ってめちゃくちゃカッコ良いし、A⑤でズシリ、ズシリと響く様はまるで軍隊の行進のようで凄味すら感じさせる。このようにリズム隊が躍動するとバンドのドライヴ感に拍車がかかり、音楽が屹立する。まさに最高の再生芸術だ。ということで、数ある「サージェント・ペパーズ」盤の中で最もロックンロールを感じさせてくれるのがこのドイツDMM盤なんである。