shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ビートルズのドイツDMM盤特集①

2017-01-15 | The Beatles
 これまでデンマーク盤やインド盤など、UK盤以外にも様々な国のビートルズのレコードを手に入れてその音の違いを楽しんできたが、当然ながらどこの国のレコードでもいいという博愛主義者ではない。あくまでも自分が聴いて楽しめることが購入の前提条件だ。ということで音が私の好みに合わないUS盤やフランス盤は当然パス。上記3ヶ国以外で私が興味を持ったのは80年代前半にドイツでリリースされたDMM盤だ。
 DMMと聞いてまず頭に浮かぶのはDVDの宅配レンタルか、あるいは架空請求詐欺の会社名(笑)だが、アナログ・レコード・マニアにとってのDMMとはダイレクト・メタル・マスタリングの略を意味する。ネットで調べてみると、“ドイツのテルデック社が1982年に開発したカッティング技術で、銅製のメタル・ディスクに超音波を当てながら直接カッティングを行ってスタンパーを作成する方式のこと。柔らかいラッカー盤に音溝を刻んでメッキ塗装を何度も繰り返してスタンパーを作成する従来の方式よりもスタンパー製造工程がシンプルになるため、高音域のロスやプリエコーが少なく、収録時間も約10%増加する。” とある。
 そもそも私が各国盤に興味を持ったのはインド盤特集の時に紹介したバイブル本「アナログ・ミステリー・ツアー」の影響だが、色んな国のレコードがいっぱい載っているあの本を読んで私が “聴いてみたい!” と思ったのはインド盤とドイツDMM盤だけだった。とにかくDMM盤を紹介する際の表現がめちゃくちゃ面白く、“ラウドでクリアな音で再現されるのは衝撃” “リズム隊が異常に迫力ある音に仕上がっている” というポジティヴな評価と “低域高域共に音の暴力レベル” “仕上がりの音がわかっていればエンジニアがこんな音をわざわざカッティングするはずはない” というネガティヴな評価が共存しているのだ。これを読んで “聴いてみたいなぁ...(^.^)” と思わなければアナログレコード・ファンではない。
 尚、UKシルバー・パーロフォン盤にもDMMを謳ったものがあるが、あれは1990年代のプレスでCD化後のデジタル・ソースを使用しているらしく、「アナログ・ミステリー・ツアー」では “デジタル特有の痩せた音” で “聴く価値のない駄盤” とボロクソにけなしてあったし、ネット上の口コミを調べてみても評判は悪く、オークションでも二束三文で売られていたので、私はデジタル化以前のアナログ・マスターから作られたドイツ盤にターゲットを絞った。
 ということで、私はまず手始めに評価の高かった「マジカル・ミステリー・ツアー」と「ホワイト・アルバム」を聴いてみて、自分の好みの音であれば他のアルバムも買っていこうと思った。ラッキーなことに2枚共 eBayにNM状態の盤が出品されていたので即ゲット、前者は$14.99、後者は$44.99 で、どちらも無競争で手に入れることができた。

①Magical Mystery Tour [04449-A1+C, 04449-B1+C] ←[ ]内はマトリクス・ナンバー
 私のDMM初体験がこの「マジカル・ミステリー・ツアー」で、確かにデッドワックスのランオフ・エリアが普通の盤より広い(←特にB面)。手に取った感じはめっちゃ軽くて “これでそんな凄い低音が出るんかいな...” と思いながら盤に針を落とすと、いきなりA①の重~いベースのワンツーパンチとバスドラのボディー・ブロー連打で思わず腰を抜かしそうになった。本には“迫力のある音を好むリスナーの間ではMMTといえばコレ、というほど人気がある” “体力のある人にオススメ” と書いてあったが大いに納得。A面では地味な存在のA③④ですらリンゴのドラムがまるで鞭でも打つかの様にビシバシきまって実にスリリング。弾むような曲想が魅力のB①もこれまで聴いた中で一番元気な「ハロー・グッバイ」だし、B②の超絶ドラミングもDMM効果かまるでリンゴがユンケル飲んでパワーアップしたかのような凄まじいプレイが楽しめる。ハッキリ言ってこの2曲を聴くだけでもこの盤を買う価値があると思う。それにしてもビートルズの音楽をこんな強烈な音で聴くことになろうとは夢にも思わなんだ... (≧▽≦)
 まぁこの凄さは実際に聴いてもらうしかないが、あえて例えるなら昔ニンニク卵黄のCMに出ていたムキムキのお爺ちゃんみたいな感じで、古い音楽なのに音はパキパキに増強されているところが面白い。これを是とするか非とするかでDMM盤の評価は変わると思うが、私的には十分許容範囲内でこれなら日常聴きでも十分楽しめる。私はこの盤を聴いてDMM盤を全て集めてやろうと心に決めた。

②White Album [04173-A1+//D, 04173-B1+//D, 04174-A1+//D, 04174-B1+//D]
 「マジカル・ミステリー・ツアー」に続いて買ったのがこの「ホワイト・アルバム」で、盤はホワイト・ビニールでセンター・レーベルにはDMMの表記(←この表記があるのは「ホワイト・アルバム」「赤盤」「青盤」の3種類のみ)がある。ジャケットにはちゃんとナンバリングがあり、ポスターやポートレイトも付いている。左上に Pressung “WEISS” DMM という黒いステッカーが貼られているのが目印だ。
 音質に関して言うと、全DMM盤の中では一二を争うマトモな音(笑)。確かに DMMらしくド迫力なサウンドなのだが音の分離が良く粒立ちも実にクリア。中域が分厚いUK盤とはまた違った音作りだが、ポールのベースがクッキリと聞こえてリンゴのシンバルもバシャーン!と炸裂するところなんか実に魅力的だ。煌びやかでありながらドンシャリに陥る一歩手前で音のバランスを上手くまとめてあるあたりはさすがという他ない。
 個々の曲ではまずA①③のリズム隊のパワーに圧倒されるし、A②のベース音のデカさにもビックリ(゜o゜)  A④の躍動感もハンパないし、A⑦のクラプトンのソロの説得力も凄まじい。C①やC④といったロックンロールのキレ味には圧倒されるし、B②やC②で聴けるジョンのヴォーカルも凄みを増している。ヘヴィー・メタルの嚆矢とでも言うべきC⑥の “指にマメが出来ちゃったよ!” というリンゴの叫び声も実にリアルに響く(笑) 一方B③やB⑧といったポールのバラッドはクリアーで伸びやかな高域のおかげでその美しさに磨きがかかっているのだから、これはもう良いことずくめではないか。DMM云々は横に置いといても、このレコードは「ホワイト・アルバム」好きにはたまらない逸品だと思う。