shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ワインカラーの少女 & ヴィーナス・アンド・マース~ロック・ショー / ポール・マッカートニー

2013-05-29 | Paul McCartney
 今日は私が最初に買ったポールのアルバム「ヴィーナス・アンド・マース」からのシングルで「ロック・ショウ」でも演奏されていた「ワイン・カラーの少女」と「ヴィーナス・アンド・マース~ロック・ショー」の2曲で明日届く予定の「ロック・ショウ」前夜祭だ。

①Letting Go
 ポール&ウイングス絶頂期の名作アルバム「ヴィーナス・アンド・マース」から全米№1シングル「あの娘におせっかい」(←この邦題は何回聞いても笑えるわ...)に続くセカンド・シングルとしてカットされたのがこの「ワイン・カラーの少女」だ。私は先にアルバムを買っていたこともあって最初はこのシングル盤を買う気はサラサラなかったのだが、ラジオでこのシングル・ヴァージョンを聴いてビックリ(・o・)  アルバムに入っているヴァージョンとは一聴して分かるほどミックスが異なっていたのだ。まずイントロからしてオルガンが大きくフィーチャーされていてかなり印象が違うし、全体的にエコーを抑えた生々しいサウンドが新鮮で、コレはエライコッチャとばかりにこのシングルを買いにレコード屋へと走ったのを覚えている。
 ジャケットもかなりエエ感じで、邦題にある “ワイン・カラー” をバックにまるで英国貴族のような高貴な(?)雰囲気を醸し出しながらこちらをじっと見つめるポールのアップ写真が何ともカッコイイ。この「ワイン・カラー...」という邦題は歌詞の “She tastes like wine♪” から取られたものだが、この曲を初めて聴いた時の私はまだ世間知らずでアホな中学1年生だったので、原題「Letting Go」がなぜ「ワイン・カラーの少女」になっているのか深く考えもせず “Letting Go でワインカラーっていう意味になるんか... 辞書引いても載ってへんけど(←当たり前やろが!)英語ってホンマに不思議なコトバやなぁ...” と思っていたのだからオメデタイとしか言いようがない。
 それにしてもこの曲、新加入のジミーの影響だろうがポールにしては異色とも言えるブルージーなナンバーで、あの「レット・ミー・ロール・イット」さえも凌駕するヘヴィーネスが横溢... よくまぁコレをシングルとして切ったもんだと感心してしまう。“ポップの極み” とでも言うべき作風だった前シングル「あの娘におせっかい」とこのブルージーな「ワイン・カラーの少女」の重々しさとの落差はハンパないし、軽~いサウンドが幅をきかせていた当時の音楽界の状況を考えるとラジオ・エアプレイ向きとはお世辞にも言い難い。そのせいか、全米39位、全英41位が最高という惨憺たるチャート成績だったのだが、私はこの曲が大好きなのだ(^.^)
 まず何と言ってもポールの重低音ベースがズシリ、ズシリとまるで軍隊の行進のように響きわたって気持ちエエことこの上ないし、ブラス・アレンジも絶妙にして秀逸、そこにジミーの歌心溢れるブルージーなギターが絡んでいくのだから言うことナシ。そして個人的にツボなのがリンダのバック・コーラスで、 “I want to put her on the radio, one day and there you are, Ladies and Gentlemen – a brand new star♪” のラインにおけるコンマ何秒かのタイミングのズレが原曲の持つ “揺れるブルース感覚” を増幅しており聴いててめちゃくちゃ気持ちイイ(^o^)丿 とゆーことで、スマッシュ・ヒットにはならなかったが、私にとってはこのアルバム中で三指に入る愛聴曲なのだ。
Wings: Letting Go (Single Version)


②Venus And Mars ~ Rock Show
 この「ヴィーナス・アンド・マース~ロック・ショー」は同名アルバムからの第3弾シングルで、曲単体で言えば名曲名演がゴロゴロしている70年代ポールの作品中でも1、2を争う超愛聴曲... リアルタイムで聴いた衝撃度、思い入れ等を考えれば恐らく一番好きかもしれない(←アルバム単位では「ラム」が断トツの№1)。
 この曲は “スポーツ・アリーナのスタンドに座ってショーが始まるのを待っている~♪” という出だしで始まる「ヴィーナス・アンド・マース」がそれに続く「ロック・ショー」の序曲的な役割を果たしており、「ロック・ショー」との “静と動” のコントラストが絶妙だ。
 その「ロック・ショー」は前回取り上げた「ハイ・ハイ・ハイ」や「ジュニアズ・ファーム」の系統に属するキャッチーなロックンロール・ナンバーで、この時期のポールがコンポーザーとしても、ベーシストとしても、そしてシンガーとしても絶好調だったことをうかがわせる極めつきの名曲名演だ。とにかくこのライヴ感バリバリのソリッドなサウンドはポール史上最強ではないか? 特にポールのうねるようなベースラインがかなり太い音で入っており、ちょうどシェア・スタジアム公演での「ディジー・ミス・リジー」を想わせるようなドライヴ感抜群のプレイが楽しめる。
 それと、イエロー・キャット・レーベルから出ている「ヴィーナス・アンド・マース・セッションズ」というブート盤に1975年2月と3月のセッションからこの曲の初期テイク2ヴァージョンが収録されているのだが、ちょうどビートルズの「アンソロジー」みたいに舞台裏とも言える制作途中の段階が聴けてコレが中々面白い。YouTube にアップされてたので興味のある方はどーぞ↓
Wings: "Venus and Mars / Rock Show" Rough Mixes #1st & 2nd Compilations - Feb./Mar. 1975#


 この曲のもう一つの大きな魅力はその歌詞だ。 “コンセルトヘボウ” や “マディソン・スクエア”、 “ハリウッド・ボウル” といったコンサート会場名が次から次へと登場するだけでもうワクワクするし、“It looks a lot like the one used by Jimmy Page♪” と歌詞の中にジミー・ペイジが登場するのもインパクト大。多分ポールは70年代ロックの象徴をゼップだと考え、この「ロック・ショー」の中にペイジの名前を引用することによって彼らに敬意を表したのではないかと思うのだが、この a relic from a different age ってやっぱり例のダブルネックのことなんかな... などと考えながら聴くのも一興だ。とにかくそんな歌詞も含めてこれほどロック・コンサートのオープニング・ナンバーに相応しい曲を私は他に知らない。
 このシングルは全米チャートで12位まで上がったのだが、アルバムでは2曲メドレーで6分51秒なのに対しシングル・ヴァージョンは3分46秒と、インスト・パートを大幅に削って約半分の長さに編集してあるため、この曲の最大の魅力である “ロックのダイナミズム” も一緒に削られたようで物足りないこと甚だしい。ベスト盤「ウイングスパン」にもこの中途半端なシングル・エディット・ヴァージョンが入っていたが、この曲はやはりアルバムに入っている7分近いコンプリート・ヴァージョンに限ると思う。
PAUL McCARTNEY & WINGS - LIVE 1976 - "Venus & Mars / Rock Show"
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