shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ハイ・ハイ・ハイ & ジュニアズ・ファーム / ポール・マッカートニー

2013-05-25 | Paul McCartney
 今日は「ハイ・ハイ・ハイ」と「ジュニアズ・ファーム」という70'sポール屈指のイケイケ・ロックンロール2連発だ。

①Hi Hi Hi
 「メアリーの小羊」に続くウイングスの第3弾シングル「ハイ・ハイ・ハイ」は全米で10位、全英で5位まで上がったヒット曲で、76年の「USAライヴ」でも「ソイリー」との連続コンボでコンサートのクロージング・ナンバーとして欠かせない存在だった “メジャー曲” なのだが、オリジナル・アルバム未収録ということで気にせず紹介。 “ロックなポール” が三度の飯よりも好きな私としては初期ウイングスを代表するこの痛快無比なロック・ナンバーを取り上げないワケにはいかない。
 この「ハイ・ハイ・ハイ」は1972年7月から始まるウイングスのヨーロッパ・ツアーに向けて “ライヴでウケそうなノリノリのロック曲” が必要と考えたポールが、ツアーの前にスペインに休暇に出かけた時に書いた曲で、当初は同時期に作られた「ソイリー」や「ザ・メス」路線のストレートなロックンロールだった。夏のツアーで演奏された時の音源を聴くと、いかにも “ノリ一発!” という感じの荒削りなアレンジで、後にシングルとして発売されたヴァージョンとはテンポやリズムもかなり違っているのだ。ポールによると “シングル盤用にするためにシャッフルのリズムを使ってアレンジし直し、もっとバンプにしたんだ。” とのこと。YouTube に8/20のオランダ・ハーグ公演の模様がアップされてるので聴き比べてみると “曲の進化” が垣間見れて面白い。
Paul McCartney & Wings - Hi Hi Hi [Live, The Hague - 20th August 1972]


 “キャッチーなロック曲”のお手本のようなカッコ良さを誇るこの曲のもう一つの特徴は “歌詞がめちゃくちゃエロい” ということ。“極めて卑猥”(笑)という理由でBBCはこの曲を放送禁止にしたのだが、確かに当時まだ中学生だった私が見ても “いくら何でもこれはアカンやろ...” と思うぐらい赤裸々なセックス描写が並んでいた。中でも一番強烈だったのが “I want you to lie on the bed, get you ready for my body gun♪” のラインで、“君をベッドに横たえて僕のボディー・ガンを受け入れさせたい...” ってそのものズバリやん(笑)  それに続く歌詞が “I'm gonna do it to ya, gonna do ya sweet banana♪”(君にスウィート・バナナをしてあげる)で、シメが “We're gonna get hi, hi, hi♪”(僕らはだんだんいい気持になる)とくれば、これはもう弁解の余地なしのセックス・ソングだ。ポールは “あれはbody gunじゃなくってpolygon(多角形)なのに出版社が間違えたんだ...” などと苦しい言い訳をしていたが...(笑)
 この「ハイ・ハイ・ハイ」というシングルは裏面の「Cムーン」と共に“ダブルAサイド”、つまり両A面扱いでリリースされたのだが、ポールはきっと「ハイ・ハイ・ハイ」が放送禁止を食らうことを予測してそういう措置を取ったのだろう。「アイルランド...」の前科もあることだし...(笑)  尚、日本盤シングルのファースト・プレスはジャケットに裏焼き写真を使ってしまい、ポールが右利きでベースを弾いているという珍盤になっている(←上にアップしたのは私が買った修正版)。
Paul McCartney & Wings - Hi,Hi,Hi [High Quality]


②Junior's Farm
 私がビートルズを聴き始めた1970年代半ば頃というのは “ジョンはロックでポールはバラッド” というアホな俗説が世間に蔓延しており、ポールと言えばすぐに「イエスタデイ」だ、「レット・イット・ビー」だ、「マイ・ラヴ」だと喧伝されていたように思うのだが、私にとっては “キャッチーでありながらバリバリにロックする” という一見誰にでも出来そうで実際には中々出来ないことをサラッとやってのけるところがポール最大の魅力であり、甘~いバラッドよりも「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」や「バック・イン・ザ・USSR」、「レディ・マドンナ」に「バースデー」といったノリノリのロックンロール・ナンバーを歌うポールが一番好きだった。
 そういう意味でもこの「ジュニアズ・ファーム」はポールのソロ・キャリアにおいて上記の「ハイ・ハイ・ハイ」や「ジェット」、「ロック・ショー」etcと並ぶスーパー・ウルトラ愛聴曲なのだが、なぜか世間での評価は信じられないぐらい低い。まぁ全英チャートでは16位までしか上がらなかったし、全米チャートでも最高3位と健闘はしたものの、ヘレン・レディやバリー・マニロウ、スリー・ディグリーズといった軟弱な音楽(←ファンの方、ゴメンなさい...)が主流だった当時のアメリカ音楽界に風穴を開けるほどのヒットにはならなかったので、世間的にほとんどスルー状態なのもしゃあないが...(>_<)
 この曲はポール、リンダ、デニーの3人編成だったウイングスに新たにギタリストのジミー・マッカロクと空手家ドラマー、ジェフ・ブリットン(←「ワン・ハンド・クラッピング」では空手着でドラムを叩いてる姿が笑えた...)を加えてナッシュビルでレコーディングしたもので、「バンド・オン・ザ・ラン」と「ヴィーナス・アンド・マース」の谷間を埋めるかのように1974年末にリリースされたのだが結局オリジナル・アルバムには収録されず(←確かに「ヴィーナス・アンド・マース」の中にこの曲の居場所は無いわな...)、そのこともこの曲の過小評価に繋がっているのかもしれないが、私は自分の感性だけを信じて音楽を聴いているせいか、この曲の不当なまでの低評価が納得いかない(>_<) こんなウキウキワクワクするようなロック・チューンにはそう簡単にお目にかかれないと思うのだがどうだろう? 軽快なビートを刻んでバンドを根底からロックさせるジェフとキラリと光るメロディアスなフレーズを連発するジミーの魅力(←ポールの “Take me down, Jimmy!” に続いてジミーがソロに入るタイミングが最高!)が全開のソリッドなロックンロール... 最高ではないか!
 そんな二人に触発されたのかポールも気合い十分で、“ハッ!” という掛け声を連発しながらノリノリのヴォーカルを聴かせてくれて気持ちエエことこの上ないし、彼お得意の “よく歌うベースライン” も思う存分堪能できて言うことナシ。まさに “絶好調!” という感じのポールがここにいるのだ。又、ウイングスならではの “追っかけコーラス” を巧く使ったコーラス・アレンジもこの曲の名演度アップに拍車をかけている。そもそもリンダってアホバカ・クリティックどもからボロクソに言われていたが、彼女のバック・コーラスはウイングスに欠かせない大きな魅力だと思う。この曲のビデオではちょっと白塗り化粧が濃すぎるけど...(笑)
 歌詞に関しては取り立てて意味のない凡庸なものだが、唐突にエスキモーが出てくる歌詞が当時中学生だった私にはインパクトがあったし(笑)、 ParliamentとPresidentを始めとする強烈な韻の踏み方も実に面白かった。それと、この曲に関する個人的な思い出なのだが、大学を受験した時の英作文の問題で “以前より物価が上がったので人々は云々...” というのが出題されたのだが、私は迷わずに “The price is higher than the time before...♪” とこの曲の歌詞の一部をそのまま借用して見事合格できたことが今でも忘れられない。 “学校の英語の授業はクソやけどビートルズの英語はホンマに役に立つわ(^o^)丿” と大喜びした18歳の春だった。
Paul McCartney - Junior's Farm
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