shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Lez ZeppelinⅠ

2013-03-30 | Led Zeppelin
 2回にわたってゼッパレラを大特集してきたが、その流れでいくと次は当然レズ・ゼッペリンだ。彼女達の2nd アルバムは「レズ・ゼッペリンⅠ」というタイトルが付けられており、“セカンドなのにワンとはこれいかに???” と言いたくなるが、ギタリスト兼バンド・リーダーのステフが下のインタビューで(5分8秒あたりから) “私達の2枚目のアルバムはゼップの原点、つまりファースト・アルバムに立ち返ろうと思ったの。それもオリジナルに限りなく忠実な形でね。だから彼らが当時使っていたのと同じヴィンテージ機材を使ってアナログ・レコーディングしたのよ。” と答えているように、何とゼップの1st アルバムを曲順から個々のソロに至るまで微に入り細にわたって完全再現しようという大胆不敵なコンセプトの下で制作されているのだ。
Lez Zeppelin - Interview and Live Concert


 ここで話は少し逸れるが、このアルバム・コンセプトの話を聞いた私は、PCM放送の「ジャズ道場破り」という番組で行われた日本チャーリーパーカー協会会長の辻バード氏とジャズ喫茶の名物オヤジである寺島靖国氏の対談を思い出した。辻バード氏が言うには、「ジャズという音楽形式はクラシック音楽がそうであるように一定のピークを越えてすでに歴史を終えている。今はその終わった形式を再現する芸術として残っている。前の人を乗り越えて新しい峰を作っていくという動きはもうない、つまり過去の偉大な人を超えようとしてももう越えられないということ。ただ、再現だからダメだというのではなく、その再現の仕方に無限の可能性があると思う。だから新人の矢野沙織に僕が期待するのは、パーカーの曲をパーカーと同じアドリブで、パーカーと同じ音色・リズム感で全く同じように吹くことなんです。」とのこと。(←この発言に対して感情的に反論する寺島氏との “かみ合わない論争” がもうめちゃくちゃ面白くって、私の音楽仲間内ではこの辻バードvs寺島論争の話題で盛り上がることが多い...)
 確かにジャズのCDはワケの分からない新譜よりも50年代モダンジャズの再発盤の方が遥かに売れているという現状を鑑みても辻バード氏の発言は的を得ているし、21世紀に入ってからのゼップを始めとする70~80年代の王道ロック、いわゆる “クラシック・ロック” というジャンルの盛り上がりを考えればロックもジャズ同様の状況にあると言えるのではないかと思う。つまり辻バード氏発言の “ジャズ” を “ロック” に、“パーカー” を “レッド・ゼッペリン” に、 “矢野沙織” を “ゼップのフォロワー達” にそれぞれ置き換えてみると、まさにこの「レズ・ゼッペリン1」というアルバムの存在意義が明確に浮かび上がってくるのだ。
 このアルバムがリリースされたのは2010年なのだが、当時はラモーンズや昭和歌謡で忙しかったし(笑)日本盤のダサいイラスト・ジャケを見てイマイチ食指が動かずにスルーしていた。しかし去年の春頃だったと思うが、USアマゾンでたまたま目にしたゼップ関連商品の中にこのアルバムのUS盤が紹介されており、ゼップの1stと同じく飛行船ビンデンブルグ号の爆発炎上写真を巧く使った意味深なジャケット(←初めて見た時はクソワロタ。コレに比べたら日本盤のジャケはホンマにセンス無いなぁ...)が気に入って今度は即買いを決めた。
 肝心の演奏内容の方は、今回ギタリストのステフ以外のメンバーを一新して臨んだというだけあってドラムスとベースのリズム隊が強化されており、彼女達のこのアルバムにかける意気込みが伝わってくるような見事な完コピぶりだ。逆に言えばもう一ひねり欲しいというか、彼女達なりの個性の主張があまり感じられず面白みに欠けると言えなくもないが、ヴォーカルがパーシーの金属的なハイトーンとは違って低くて太い女性の声なので、その点では新鮮な感覚で聴ける。聞くところによるとペイジ本人がレコーディングに立ち会ってサウンド・プロダクションに関してアドバイスしたとのことだが、何にしても先の “再現芸術” という観点から言えば文句なしに素晴らしい仕上がりである。
グッドタイムズバッドタイムズ

ハウメニーモアタイムズ


 ⑦「コミュニケイション・ブレイクダウン」は彼女達のデビュー・アルバムにも収録されていたので早速両方のヴァージョンを比較してみたのだが、1st の方がノリ一発で一気呵成に突っ走るという感じのラフでハードな演奏でライヴ感に溢れるダイナミックな音作りになっているのに対し、この2nd の方はよりオリジナルに忠実に再現することに重点が置かれており、1stに比べると幾分抑制が効いた音作りになっている。よくぞまぁここまで...と感心するのは2ndの方だが、破天荒なカッコ良さに魅かれて何度も聴きたくなるのは1stの方だ。又、前々回アップした同曲のゼッパレラ・ヴァージョンとの聴き比べも一興だろう。
Lez Zeppelin Communication Breakdown film by Dean Holtermann


 ゼップのトリビュート・バンドにとっての試金石ともいえる「幻惑されて」も必聴だ。丁寧に作り込んだスタジオ録音ヴァージョンとは言え、オリジナルの雰囲気をここまで見事に再現されるとそのマニアックなまでの拘り具合いに脱帽するしかない。この調子で「Ⅱ」「Ⅲ」「Ⅳ」...とゼップのオリジナルを順番に再現していってくれたらそれはそれで画期的というか、ある意味前人未到の偉業ではないかと思うので、ファンとしては是非とも実現してほしいものだ。尚、下に貼り付けたライヴ映像ではゼッパレラのグレッチェン・メンと同じように、ギタリストのステフがまるでペイジが憑依したかのような華麗な手さばきでお約束の “弓弾き” を披露(5分22秒~)している。
 メジャー・レーベルから2枚のCDを出し知名度でも先行するレズ・ゼッペリンとインディーズ所属ながら地道なライヴの積み重ねで猛烈に追い上げるゼッパレラ... №1ゼップ・トリビュート・レディース・バンドの座を巡る熱き女の戦い(?)が見ものである。
Lez Zeppelin - live Mannheim 2007 - b-light.TV production