shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

夢で逢えたら / 森丘祥子

2012-07-23 | J-Rock/Pop
 今日は久々に音壁関連ネタのアルバムでいこう。祭りのきっかけとなった名曲「夢で逢えたら」の大本命といえるシリア・ポール盤がリリースされたのは1977年だが、私がこの曲を知ったのはそのずっと後の90年代に入ってからのことで、森丘祥子によるカヴァー・ヴァージョンが CMソングとしてテレビから流れてきたのを聴いてそのキャッチーなメロディーと彼女のキュートな歌声に KO されてしまったのだ。あの頃はまだ音楽もCMも魅力的なものが多くてホンマにエエ時代やったなぁ... (≧▽≦)
KIRIN white wine DANCE 新発売 15" 1991


 この森丘祥子という人は80年代におニャン子クラブに入る前の工藤静香らと共にセブンティーン・クラブという女性3人組ユニットを組んで本名の柴田くに子名義で活動しており、90年代に入ってから森丘祥子に改名してソロ・デビュー。この「夢で逢えたら」を含む同名のセカンド・アルバムは “おかえりなさい、あの頃の POPS たち” というコンセプトに基づいて70年代 J-POP の名曲をカヴァーしたもので、大貫妙子、アン・ルイス、石川セリ、EPO といった女性シンガーの曲からシーナ&ロケッツや YMO に至るまで、当時を知る者にとってはたまらない選曲だ。元アイドルだけあってルックスも抜群やし、艶やかで透明感溢れる歌声も私の大好きな癒し系でたまりませんわ(^.^)
 ということで早速 CD を買ってきたのだが、いざ聴いてみると自分が期待していたサウンドとはかなり違う。一言で言うと過剰にエコーのかかった軽佻浮薄な打ち込み系デジタルサウンドが彼女の歌声以上に目立っており、サバービアだか何だか知らないが、せっかくの美メロ美声が台無し。これではまるでハエや蚊である。うるさいったらないのだ(>_<)
 プロデュースはピチカート・ファイヴの小西康陽。その筋ではかなりの数の信者がいる著名な DJ 兼プロデューサーだが、私に言わせれば過大評価も甚だしい。ハッキリ言って私はこの人の単調で押しつけがましい音作りが大の苦手。例えるならソースを多用して素材本来の持ち味を殺してしまう三流フレンチ・シェフみたいなもんで、プロデューサーが歌手より出しゃばってどないすんねん!と思ってしまう。ちょうどジャズの CD を買ってライナーノーツが岩波洋三だったら損した気分になるように(笑)、J-POP の CD を買ってプロデュースが小西康陽だったらガッカリというぐらいこの人の作る音は好きになれない。
 そういうわけで森丘祥子の作品というよりも小西康陽の作品という印象の強いこの CD は普通なら即刻中古盤屋へ売り飛ばすところだが、それでも手元に置いているのはやはり彼女の艶やかな歌声と「夢逢え」という名曲の魅力によるところが大きい。ただし、さすがに全編通して聴く気にはなれず、比較的小西色の薄い②「突然の贈り物」、④「ムーンライト・サーファー」、⑥「ユー・メイ・ドリーム」、⑩「トゥインクル・クリスマス」といったトラックをつまみ聴きしている。YMO の「ライディーン」に歌詞を付けた珍品⑦はサウンド・プロダクションはイマイチだが、彼女のヴォーカル・パートは絶品だ。もしもこのアルバムを大瀧詠一や山下達郎のような人がプロデュースしていたら J-POP 女性ヴォーカルの大名盤になっていたのではないかと思ってしまうが、いずれにせよ、こんなに素敵な女性シンガーがその後フェイドアウトしてしまったのは本当に残念なことだ。
森丘祥子 / Rydeen (1991)


 タイトル曲「夢で逢えたら」はアルバムの最初①と最後⑪に入っており、①は打ち込み系サウンドをバックに彼女の語りのパートが淡々と流れるというワケの分からんリミックス・ヴァージョン。まともなシングル・ヴァージョンは⑪の方で、女性らしい優しさに溢れた彼女の伸びやかな歌声は私をひきつけてやまない。シリア・ポールといい、この森丘祥子嬢といい、「夢逢え」にはキュートな女性ヴォーカルが一番合うようで、オーヴァープロデュースのマイナス分を差し引いても、数多いこの曲のカヴァーの中で三指に入る愛聴ヴァージョンになっている。
森丘祥子 夢で逢えたら


 尚、このアルバムですっかり彼女の歌声に魅せられた私はファースト・アルバムの「Pink & Blue」も購入したのだが、そっちの方は小西某が関わっていないこともあって彼女の魅力を巧く引き出す絶妙な音作りがなされており、セカンド・アルバムよりも遥かに聴きやすい。中でもユーミンのカヴァー「冷たい雨」が絶品で、“ドン ドドン♪” と鳴り響くイントロは「ビー・マイ・ベイビー」そのまんまやし、お約束のカスタネット連打もあるしで、スペクター・サウンドへの傾倒を強く感じさせており、恐らくそれがセカンド・アルバムへの伏線になっていると思われるが、決定的な違いはそういったアレンジが決して彼女の歌の邪魔をせずにむしろその魅力を巧く引き立てているところ。興味のある方は上の音源と聴き比べてみて下さいな。
Shoko Morioka
コメント (4)