shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

可愛い花 / ザ・ピーナッツ

2011-09-14 | 昭和歌謡・シングル盤
 私はこれまでの音楽人生で何度か昭和歌謡のマイブームで盛り上がってきたが、それらはすべて “あゆ祭り” や “ちあきさんスペシャル” のように特定の歌手に絞ってCDを買って聴きまくるというやり方だった。つまりミクロ的な聴き方である。しかし今回は愛聴曲のアナログ・シングル盤をパラパラと買い、時系列に沿って整理しながら大きな流れの中でマクロ的に聴いているので、洋楽ロック/ポップスからの影響や当時の世相との関係、作詞・作曲家による特徴など、これまでは気付かなかったような新発見が一杯あってめっちゃ面白い。
 今回のターゲットは歌謡曲の胎動期と言える1960年前後から自分がリアルタイムで体験出来なかった1970年代の前半あたりまでの約15年間なのだが、実際のところ、私のスイートスポットをビンビン直撃する楽曲は、洋楽的な要素を含んだビート歌謡や筒美京平先生に代表される新感覚の歌謡ポップスであり、それらのほとんどが1967年~1972年あたりまでの約5年間に集中しているのだ。ちょうど80年代の洋楽シーンのように、次から次へと名曲が生み出される百花繚乱の時代である。
 一方、私にとっての60年代前半の邦楽シーンは一部の例外を除けば “歌謡曲” ではなく “カヴァー・ポップス” の時代であり、人形の家に棲む前のミコたんも白い蝶になる前のカヨちゃんも明るく楽しいポップスのカヴァー曲でブイブイいわしていた。当時の純粋な “歌謡曲” の主流を占めていたのはあくまでも青春歌謡や演歌という、私とは全く無縁の音楽だったのだが、そんな不毛の60年代前半において、宮川泰という天才コンポーザー兼アレンジャーを擁して独自の昭和歌謡路線を切り開いていった孤高の存在がザ・ピーナッツなのだ。
 今日取り上げるのは彼女らのデビュー曲「可愛い花」で、何と1959年のリリースだ。シングル盤のレーベル面のデザインもいかにも年代物といった風情がある。この曲はジャズ・ソプラノ・サックスの巨匠シドニー・ベシェが1952年に若い奥さんのために作った「小さな花(プティット・フルール)」がオリジナルで(←ザ・ピーナッツで出す時に邦題を “小さな” から “可愛い” へと改題したセンスはさすがやと思う...)、日本では同じピーナッツでもピーナッツ違いの(笑)ピーナッツ・ハッコーのクラリネットをフィーチャーしたボブ・クロスビー楽団によるカヴァー・ヴァージョンで有名だったらしい。
 それにしても何という名旋律だろう... 人生の晩年を迎えたシドニー・ベシェの、愛する若妻への想いがヒシヒシと伝わってくるメロディーだ。そんな名曲を素晴らしいハーモニーでまるで自分たちのオリジナル曲のように聴かせるザ・ピーナッツは本当に凄い。1959年といえば彼女らはまだ18歳、しかもこれがデビュー曲というのだから恐れ入る。この曲は1975年のサヨナラ公演のその日まで、彼女らの名刺代わりの1曲として何百回・何千回と歌われることになるのだが、このオリジナル録音では一言一言丁寧に歌い込んでいる感じの、実に初々しいハーモニーが楽しめる。尚、以前にも紹介したことがあるが、この曲は67年に斬新なボッサ・スウィング・アレンジで再録音されており、そちらも実に洗練されたカッコ良いヴァージョンに仕上がっている。まさに宮川先生会心の一発と言えるだろう。
 ザ・ピーナッツの曲はその歌声といい、アレンジといい、あまりにも完成度が高すぎるせいか他の歌手は中々手を出しにくいのだが、そんな中で絶品!と言えるのがキャンディーズによるカヴァーだ。彼女らはアルバム「キャンディー・レーベル」で「ふりむかないで」、「恋のバカンス」、「恋のフーガ」の3曲をカヴァーしているが、この「可愛い花」は公式にはレコード化されていない。唯一、レッツゴーヤング出演時にステージで歌った超貴重な映像が YouTube にアップされているが、未音盤化が悔やまれるような気品に溢れた格調高いヴァージョンになっており、いつもはギャーギャーうるさい親衛隊の連中ですら大人しく聴き入ってしまうぐらいの素晴らしいコーラス・ハーモニーが楽しめる。ザ・ピーナッツからキャンディーズまで... 昭和歌謡はこれだからやめられない(^o^)丿

☆59年のデビュー盤
ザ・ピーナッツ   可愛い花


☆宮川泰アレンジによるボッサ・スウィング・ヴァージョン’67
ザ・ピーナッツ可愛い花


☆この曲を一躍有名にしたボブ・クロスビー・ヴァージョン
BOB CROSBY--PETITE FLEUR.mpg


☆キャンディーズのポテンシャルの高さを再認識させられる絶品カヴァー
CANDIES 『 可愛い花 』
コメント (2)