shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Beryl Booker Trio with Don Byas in Paris

2018-02-17 | Jazz
 私はアナログ・レコードが大好きで、中でも普通のLPよりも一回り小さい10インチ(=25cm)盤には目がない。その一番の理由は12インチ化されていない10インチ盤のジャケット・デザインの素晴らしさにある。特に1950年代のモダン・ジャズ黄金期に活躍したバート・ゴールドブラットやデヴィッド・ストーン・マーチンといった名デザイナー達が生み出したアルバム・アートワークは眺めているだけで音が聞こえてきそうな錯覚を覚えるほどだ。
 それともう一つ、10インチにはステレオ盤がないというのも嬉しい。10インチ盤が作られていたのは1954年ぐらいまででなので、モノラル盤しか存在しないのだ。一部の例外を除けば1950~60年代のステレオ技術は稚拙そのものだったので(←ビートルズのキャピトル盤なんかもう最悪!!!)、気持ち悪いエコーのかかった疑似ステレオ盤やら不自然極まりない左右泣き別れミックスやらとは無縁の10インチ盤は安心して聴けるというワケだ。
 ヘレン・メリル盤やジミー・ジョーンズ盤の時にも書いたように、最近の私は “ビートルズ関連” と “ジャズのメガレア盤” の二刀流(笑)でレコードを買っているのだが、先日ついに手に入れた垂涎盤が今日取り上げる「ベリル・ブッカー・トリオ・ウィズ・ドン・バイアス・イン・パリス」(DL-3021)。1953年にディスカヴァリー・レーベルからリリースされた10インチ盤だ。
 このレコードの存在を知ったのはかなり前のことだが、「スウィート・ベイジル」という雑誌の「ジャズ・ボーカル10インチ展」という特集記事で、自分が持っていないレコードをチェックしていて目が釘付けになったのがこの「ベリル・ブッカー・トリオ」だった。イラストの構図といい、その色使いといい、強烈にジャズを感じさせるジャケット・デザインで、調べてみると私が敬愛するバート・ゴールドブラットの作ではないか! へぇ~、こんなレコードがあったのか... などと感心している場合ではない。これはエライコッチャである。
 このベリル・ブッカーという女性ピアニストについて私が知っていたのはビリー・ホリデイやテディ・キングのバックを務めたことがあるということぐらいで、恥ずかしながらリーダー作が出ていることすら全く知らなかったのだが、曲目を見ると我が愛聴曲である「チーク・トゥ・チーク」が入っているし、ゲストが正統派テナーのドン・バイアスとくれば悪かろうはずがない。ジャケット良し、選曲良し、メンバー良し、とくればもうコレだけで十分“買い”である。
 しかしこのレコードはかなりの稀少盤らしく、オークションにも滅多に出てこないので根気よくネット検索を繰り返す日々だったのだが、ラッキーなことに2週間ほど前にeBayに出品されたのを無事落札。盤質表記が G+ だったせいもあってライバルは誰も現れずスタート価格で落札できたのだが、一番肝心なジャケット・コンディションが良かったので何の迷いもなくビッドした。
 1週間ほどで届いたレコードを手に取ってみて、まずはジャケットを鑑賞。写真で見るよりも現物の方が数倍素晴らしい。特に色使いが秀逸で、白黒とピンク色のコントラストが絶妙だ。次に G+(難あり)コンディションというレコードを恐る恐る取り出すと確かにえげつない汚れ方で、まるで泥だらけのタイヤで轢かれたような(笑)模様になっている。うわぁ、これはアカンやつや...(>_<) と一瞬たじろいだが、盤を触ってみると単に汚れているだけで特に目立ったキズはなさそうだ。早速レコードを徹底的にクリーニングしてみたところ、ピカピカとは言わないまでも見た目VG+ぐらいまで復活したので実際に針を落としてみると、信じがたいことにEXレベルの音で鳴ったのだ。いや~ホンマにラッキーや(^o^)丿
 演奏内容の方は私の予想通りの正統派ピアノ・トリオ。A面はパリに因んだスタンダード曲をメドレーで綴るA①「パリジェンヌ・メドレー」とアーヴィング・バーリン屈指の名曲A②「チーク・トゥ・チーク」の2曲で、ブラッシュが大立ち回りを演じるスインギーなピアノ・トリオ・ジャズが展開される。いやぁ~、これはたまりませんわ!
Parisian melody- Beryl Booker


 B面はドン・バイアスが加わったカルテットになっており、絶妙なコンビネーションでモダン・ジャズの王道を行くプレイを聞かせてくれる。B①「メイキン・ウーピー」ではA面同様に瀟洒なブラッシュが演奏の根底を支え、ベリル・ブッカーがコロコロと珠を転がすようなタッチで軽やかにスイングする。軽妙な語り口の弾き語りで聴かせるB②「アイ・シュッド・ケア」も雰囲気抜群だ。そしてドン・バイアスを大きくフィーチャーしたB③「バイアスド・ブルース」でのグルーヴィーなピアノを聴けば、ベリル・ブッカーというピアニストの真価が分かるはずだ。やっぱり歌伴で鍛えられた人はモノが違いますな。ホンマにエエ買い物が出来ましたわ(^.^)
Don Byas with Beryl Booker Trio - I Should Care

Don Byas, The Beryl Booker Trio - Beryl Booker's Byased Blues

Jimmy Jones Trio

2018-01-14 | Jazz
 私にとっての2017年はビートルズ一色に染まった感があるが、当然ながらジャズや昭和歌謡といった他ジャンルの音楽も細々と聴いていた。正月ヒマだったので数えてみたところ、去年1年間に買ったアナログ盤のうちビートルズ関連が全体の70%以上を占めていたのに対し、ジャズはわずか10%にすぎなかったが、欲しい盤はほぼ買い尽くした感のあるジャズに関してはひたすら超大物盤狙いに徹し、先のヘレン・メリル盤のようにこれまで手が出なかったメガレア盤を1枚また1枚という感じで手に入れては喜んでいた。
 今回取り上げるジミー・ジョーンズという人はサラ・ヴォーンやアニタ・オデイ、ビヴァリー・ケニーといった女性ヴォーカリスト達の歌伴ピアニストとして知られているが、私が彼のプレイを初めて耳にしたのも前回取り上げたヘレン・メリル盤で、変幻自在なソロを聴かせるクリフォード・ブラウンのバックに回ってしっかりと引き立て役に徹するそのいぶし銀的なプレイを聴いて“この人、派手さはないけどめっちゃ巧いなぁ...”と感心したものだった。
 それからだいぶ経ってから、彼のリーダー作が1枚だけフランスのスウィング・レーベルから10インチ盤で出ているのを知ったのだが、色々調べてみると超のつくレア盤らしく、901さんの情報によると20万円(!)で取り引きされているというのだからディープなコレクターの世界は恐ろしい。20万円っていくら何でも盛り過ぎやろーって思った人がいるかもしれないが、ディスクユニオンのJazz Vintage Vinyl Want List Vol. 5 に載っている買い取り価格が8万円なので、実際に店頭に並ぶ時の値段(←買い取り額の3倍というのが相場らしい...)はだいたいそんなところだと思う。そういうワケで、このレコードに関してはオリジナル盤を手に入れようなどという大それた考えは微塵もなく、紙ジャケ復刻されたCDで十分満足していた。
 で、1ヶ月ほど前のことになるが、ビートルズのフランス盤をイーベイのフランス国内向けローカル・オークション・サイトである eBay.frで一通り調べ終わった後、 “フランス・ローカルなんやから、ひょっとするとインターナショナル・オークション・サイトに出てけぇへんようなフランス盤も出品されとるんちゃうか???” という素朴な疑問が浮かび、ほんの好奇心からデューク・ジョーダンのヴォーグ盤やらジョルジュ・アルヴァニタスのピリオド盤やらを検索して遊んでいた。
 その時ふと頭に浮かんだのがこのジミー・ジョーンズ・トリオである。どーせBMGビクターの日本盤しか出てけぇへんやろ... と思いながら検索してみると、案の定ビクター盤が我が物顔でバッコしていたのだが、有象無象の再発盤に混じって1枚だけ、いかにも年代モノという感じの風格を漂わせている薄汚れたレコードが出品されていた。ジャケットの上下左の縁はセロテープで補修されており、色合いも再発盤とは明らかに違う。何かめっちゃ本物っぽいけれど、VG++コンディションの盤がスタート価格€40で〆切があと1日というのに入札が無いなんてどう考えてもおかしい。不審に思ってこのレコードの再発歴を色々と調べてみたが、こんな超マイナー盤をアナログ復刻しているのは世界広しと言えども日本くらいのモンで、これが偽物である可能性は非常に低そうだ。“さては入札締め切り直前にビッドが集中して一気に €1,000超えとか十分あるな...(>_<)”などと考えながら迎えた〆切当日... しかし1時間を切ったというのに未だに入札ゼロだ。
 いつものように〆切10秒前からカウントダウンを開始し、“誰も来んなよ来んなよ...”と祈るような気持ちでスナイプしたところ、結局ライバルは1人も現れず、スタート価格の€40で落札。“来んなよ...” と言っておきながらいざ誰も来んかったら来んかったで “えっ? 何で誰も来ぇへんの? おかしいやん!” と不安になってくる。だから無競争落札に拍子抜けしながらも、稀少盤を超格安で買えた嬉しさが半分、ひょっとしてやっぱりニセモンちゃうんか???という疑いの念が半分というのが正直な気持ちで、レコードが届くまでの日々は仕事が手につかないぐらい不安だった。
 そんな私の気持ちが天に通じたのか、レコードはフランスからわずか6日で到着。はやる気持ちで梱包を解いてすぐに盤をチェックしたところ、センター・レーベルには50年代プレスの証しとも言うべきディープ・グルーヴ(DG)がちゃーんと刻まれている。おぉ、溝あるやんけ!と大コーフンしながらレコードに針を落とすと論より証拠、聞こえてきたのはまごうことなきオリジナル盤の生々しいサウンドで、A①「イージー・トゥ・ラヴ」なんかもうロイ・ヘインズの生々しいブラッシュの音にのけぞりそうになるし、腹にズシーンと響くジョー・ベンジャミンのベースもめっちゃ気持ちいい(^.^)  やっぱりピアノトリオはドラムとベースがスインギーに躍動するのが最高だ。そんなリズム隊に乗せられたのか、穏健派(?)のジミー・ジョーンズにしては珍しく時折り力強いブロックコードを織り交ぜながらコロコロと玉を転がすようなプレイで小気味よくスイングしており、例えるなら “ユンケルを飲んでパワーアップしたアーマッド・ジャマル”とでも言えばいいのか。この1曲だけで軽く元は取れたと言える、そんな名曲名演だ。
Easy to Love


 これに続くA②「リトル・ガール・ブルー」とA③「ラッシュ・ライフ」は原曲がスロー・バラッドということもあってカクテル・ピアニストっぽいプレイに終始しているが、B①「スクイーズ・ミー」ではロイ・ヘインズの瀟洒なブラッシュに乗ってこの人の真髄とでも言うべき歌心溢れるピアノ・プレイが楽しめる。しかし一番の聴き物はジョー・ベンジャミンのウォーキング・ベースだろう。極論を言えば、ピアノトリオはベース良ければすべて良しなのだ。
 B②「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」とB③「グッドモーニング・ハートエイク」の2曲はまたまたスロー・バラッドということであまり好みではないが、私としてはAB両面1曲目に配置された “軽やかにスイングする小粋なピアノトリオ・ジャズ” がオリジナル盤の轟音で聴けただけでもう大満足なのだ。
Jimmy Jones Trio - Just Squeeze Me

Waltz For Debby 聴き比べ (Analogue Productions編)

2017-03-12 | Jazz
 ちょっと油断して目を離した隙にリリースされたレコードがたまたま運の悪いことに限定盤で、気付いた時には時すでにお寿司...(>_<) どこを探しても中々見つからずに悶々とした、という経験はレコード・マニアなら誰でも一度は覚えがあると思う。逆にそんなブツをやっとのことで手に入れた時の喜びはひとしおで思わず飛び上がりたいたいぐらい嬉しいものだが、私にとってそんな1枚が Analogue Productions から45回転盤の2枚組LPという形でリリースされたビル・エヴァンス・トリオ屈指の名盤「ワルツ・フォー・デビィ」である。
 このレコードが45回転盤で出ていることを知ったのは去年の暮れで(←遅っ!!!)、血眼になって eBay、MusicStack、CD and LP、ヤフオクとネット上のどこを探しても見つからなかったのだが、先週たまたまディスクユニオンの通販検索をしていて池袋店に中古で入荷したことを知り、即ゲット。やはり常日頃からマメにネットで網を張って情報収集を怠らないことが充実したコレクター人生を送るのに欠かせないのだなぁと実感した次第。
 私はこのアルバムをすでにCDで4種類、LPでもオリジナル・モノ盤と1990年代に同じAnalogue Productions から33回転で出たステレオ盤の2種類持っていて今回のが7種類目の「ワルツ・フォー・デビィ」になるのだが、すべてのジャズ・レコードの中で私が最も愛する1枚を音質的に有利な45回転盤で聴けるチャンスを逃す手はない。音の良さで私が絶大な信頼を置いている Analogue Productions 盤同士の聴き比べというのも興味をそそられるところ。因みに33回転盤はダグラス・サックスが、45回転盤はスティーヴ・ホフマンとケヴィン・グレイがマスタリング・エンジニアとしてクレジットされている。
 実際に前から持っていた33回転盤(APJ009)と今回手に入れた45回転盤(AJAZ9399)とを聴き比べてみたところ、どちらも同じ Analogue Productions 盤なのに音の傾向はかなり違っていてビックリ(゜o゜)  33回転盤の方はドラムスの音がグイグイ前面に出てきてモチアンが刻むリズムがチョー気持ちいいのに対し、45回転盤の方はリーダーであるエヴァンスのピアノが主体でありドラムスはあくまでも従者という感じで控え目に後ろからトリオを支えているような印象を受けた。良識あるピアノトリオ・ファンなら後者に軍配を上げるかもしれないが、ブラッシュが刻むリズムを中心にピアノトリオを聴くことを無上の喜びとする私としては断然前者の方が好み(^.^)  この違いは回転数というよりはおそらくマスタリング・エンジニアが意図した音作りによるものだと思うが、CDも含めて私が所有している全ての「ワルツ・フォー・デビィ」盤の中で最も鮮烈な音が楽しめるのがダグラス・サックスのミックスによるこの33回転盤なのだ。
 そもそもこのレコードの一体何が私をそれほどまでに魅きつけるかというと、一にも二にもA面2曲目に置かれたタイトル曲の圧倒的なスイング感、これに尽きる。もちろん1曲目の「マイ・フーリッシュ・ハート」でのリリカルで繊細なプレイにも心を揺さぶられるが、やはりその次に入っているタイトル曲が一番の聴きものだ。ポール・モチアンがあらん限りのテクニックを駆使しながら刻んでいく軽快なリズムがえもいわれぬスイング感を生み出し、それに乗せられるような形でエヴァンスが必殺のフレーズをキメまくり、そんなエヴァンスに対してスコット・ラファロがブンブン唸るベースで挑みかかるのだ。愛らしいメロディーに凄まじいスイング、そして火の出るようなインタープレイと、まさに言うことなしのスーパーウルトラ大名演だ。
【JAZZ】Bill Evans Trio Waltz for Debby sideA ANALOGUE PRODUCTIONS【レコード】


 話がタイトル曲一辺倒になってしまったが、もちろんB面も素晴らしい。特にB面1曲目に置かれた「マイ・ロマンス」のスイング感は最高だ(^o^)丿  この曲は元々スローなラヴ・バラッドで、インストであれヴォーカルであれ原曲に忠実なスロー・テンポで演奏されるケースがほとんどなのだが(←実際、この日のイヴニング・セットで演奏されたテイク2は少しテンポが落とされていた...)、レコードの本テイクに採用されたアフタヌーン・セットのテイク1ではアップテンポでスインギーに演奏することによってひょっとすると作曲者のリチャード・ロジャースですら気づいていなかったかもしれないこの曲の新たな魅力を見事に引き出すことに成功している。そしてその絶妙なスイング感を生み出しているのがやはりポール・モチアンの変幻自在なドラミングなのだ。世間ではエヴァンス・トリオというと猫も杓子もエヴァンスとラファロのインタープレイのことしか言わないが、少なくともこの日のモチアンのプレイは私にとってはリーダーのエヴァンスやラファロをも凌ぐ大名演で、今どきの言葉で言うと “神ってる” プレイと言っていいと思う。
 私がジャズに求めるのは “クールで、軽やかで、粋なスイング” なのだが、この「マイ・ロマンス」やタイトル曲「ワルツ・フォー・デビィ」でエヴァンス・トリオが一体となって生み出す極上のスイングこそが私にとっての理想的なピアノ・トリオ・ジャズであり、そういう意味でもこのレコードはその美しいアルバム・ジャケットと相まって私が愛してやまない1枚なのだ。
【JAZZ】Bill Evans Trio Waltz for Debby sideB ANALOGUE PRODUCTIONS【レコード】

Again / Eddie Higgins Trio

2010-05-21 | Jazz
 昨日仕事から帰ってきて届いたばかりの CD を聞こうとするとスピーカーから音が出ない。よくよく見ると愛器マッキン240(パワー・アンプ)の真空管に火が灯っていない。昨日までは何の問題もなく元気にアルテック・ヴァレンシアを駆動していたというのに、うわぁ... 又壊れたんか... と凹む私。2年前もやはりこんな感じで何の予兆もなく突然音が出なくなってしまったのだが、あの時は真空管が逝ってしまっていたし、その前に壊れた時はヒューズがとんでいた。そう、ウチのマッキンは2年周期で壊れる(←なぜかいつも5月!)のだ。それならばとヒューズを換えたりタマを換えたりしてみたが、スピーカーはウンともスンとも言わない。
 ヴィンテージ・オーディオは最新の機器では出せない濃厚な音が楽しめる反面、どうしても壊れるリスクが大きいので、クラシック・カーに乗るようなモンだと頭ではわかっているのだが、やはり実際に音が出なくなるとめっちゃ淋しい。この何ともしがたい喪失感は音楽ファンなら分かってもらえるだろう。私はとりあえず接点復活剤を使って自分で整備してみることにした。
 プリアンプからコンセントを抜き、ネジを外してカヴァーを開けると中はもう埃だらけだ。こんなんじゃあ音も出んようになるわなぁ... などと反省しながら丹念に掃除機で埃を吸っていく。中身がキレイになったところで今度は真空管をすべて抜いて差し込み口をエアー・ダスターで洗浄し、最後にピン・プラグのジャックをクリーニングして作業終了だ。コンセントを手近にあったタップに挿すとタマがほのかなオレンジ色に光り始めた。へぇ~効果あったんや... と感心しながら今度はコンセントをプリアンプの連動電源に挿すと電気が来ない。コレってひょっとしてプリアンプの差し込み口が壊れとったん?あ~アホくさ(+_+) もう面倒くさいのでパワー・アンプはスイッチ付きのタップに挿すことにして一件落着!私はこのようにオーディオをいじった後は必ず何枚かのアルバムで音質チェックをするのだが、今日はそんな中の1枚、エディー・ヒギンズ・トリオの「アゲイン」を取り上げたい。
 私はこれまで何度も書いてきたようにガツン!とくるピアノトリオが大好きなのだが、そんな私にピッタリのレーベルが日本のヴィーナス・レコードだ。その生々しい音作りが迫力満点な “ハイパー・マグナム・サウンド” シリーズの中でも私が最も愛聴し、しばしばオーディオ・チェックに使うのがこの「アゲイン」の3曲目に収められた「祇園小唄~京都ブルース」だ。前半部は静謐なピアノ・ソロなのだが、2分28秒あたりから剛力ベース&ブラッシュがスルスルと滑り込んできて、軟弱そうなジャケットからは想像もつかないようなエネルギー感溢れるノリノリの演奏が楽しめる。ムンムンするような好旋律を連発するヒギンズのクリアーなピアノ、重厚でありながらよく弾むレイ・ドラモンドのベース、あらゆる技巧を駆使して巧みにリズムを作り出していくベン・ライリーのブラッシュ... 組んず解れつしながら疾走する三者の絡み合いがまるで手に取るように目の前で展開される様は実にスリリングで、オーディオ雑誌でも “リスニングルームにヒギンズ・トリオが出前に来たようなリアリティー(←ピザ屋かよ!)” と大絶賛されていたが、私もまったく同感だ。以前ヴォリュームを上げ過ぎたせいでスピーカーの上に置いてあったサッチモのペーパーウエイトが振動で床に落下して突き刺さったのには本当に驚いたものだ。
 私はコレを最初通常盤で買い、その後ゴールド CD が出た時に買い直したのだが、2枚を聴き比べるとゴールド CD の方が音の透明度がアップしている半面、野放図なエネルギー感はやや後退しているように思える。これは他レーベルのゴールド CD でも共通して感じられる傾向で、少なくとも私のような猥雑な音を好む人間にはゴールド CD は向かないようだ。とにかく躍動感溢れるリズムがたまらないこのアルバム、いつか SACD で聴いてみたいなぁ、と思わせる現代ピアノトリオ・ジャズの傑作だ。

エディ・ヒギンズ・トリオ

Lester Leaps In / Lester Young

2010-05-19 | Jazz
 前回カウント・ベイシーをアップした日の晩、901さんから電話があり、 “ブログに貼ってあるベイシーの動画、見れへんでぇ!” とのこと。今まで何回か音声を無効にされたことはあったけど、見れへんなんてことはなかったのに... 早速自分のパソコンで調べてみるとちゃーんと音が出る。 “見れますよ...” と私。 “ウチのパソコンでは「この動画はもう見れません」って出とるでぇ!” と901さん。試しにログオフしてから検索してみると、アップしたはずのベイシー動画が出てこない。もう一度ログインして “マイ動画” をチェックしてみてビックリ... “あなたの動画は全世界でブロックされています” って、何やそれ...(゜o゜) ということで、心の広~い WMG さん(ワーナー・ミュージック・グループ)がライセンスを所有しているコンテンツは YouTube では見れません。ムカついたので YouTube のベイシーは削除して、代わりにニコニコ動画で再アップ。こーなったら今日もベイシーで行ったるわい!盤はレスター・ヤング名義の「レスター・リープス・イン」。今回のコンテンツ所有者は... SME(ソニー・ミュージック・エンタテイメント)さんか... 無事アップ出来るかな(笑)
 このアルバムは1936年から40年までの、レスター・ヤング在籍時代のカウント・ベイシー・オーケストラの演奏を集めたもので、いずれも超の付く名演揃いだが、まずは何と言ってもジャケットに注目だ。これはウイリアム・スタイグの “エピック猫ジャケ・シリーズ” のうちの1枚で、ジャズを聴き始めた頃に今は無き大阪の名店 “しゃきぺしゅ” の壁面を誇らしげに飾る猫ジャケLPたち...「ホッジ・ポッジ」、「ハケッツ・ホーン」、「デュークス・メン」、「テイク・イット、バニー」、「チュー」、そしてこの「レスター・リープス・イン」という6枚のアルバムを見て、ジャケットの醸し出す雰囲気の重要性を痛感したものだ。 “音楽が聞こえてくるようなジャケット” とはこういうのを言うのだと思う。昨今流行りの “楽曲ダウンロード購入” なんて私には到底考えられない。
 そのような素晴らしい器に入れられた珠玉の名演奏12連発の中でも私が断トツに好きなのが②「タクシー・ウォー・ダンス」だ。まずは何と言ってもオール・アメリカン・リズムセクションが生み出す凄まじいまでのドライヴ感、コレに尽きる。私なんかこのリズムが聞こえてきただけでもうウキウキワクワクしてしまう(^o^)丿 しかも各ソロイストの自由闊達なプレイがこれまた出色の出来で、スイングの究極奥義を惜しげもなく開陳するベイシー(←マジで凄いです!)といい、淀みなくメロディアスなフレーズを紡ぎ出すレスター(←特に「オール・マン・リヴァー」のメロディーを裏返しにしたようなアドリブからリズムへ切り込んでいくソロは絶品!)といい、ベイシーのソロのバックで絶妙なリズム・カッティングを聴かせるフレディー・グリーン(←たまりません!)といい、この時期のベイシー・バンドの充実ぶりが伝わってくる素晴らしいトラックだ。
 レスターがガーシュウィンの「アイ・ガット・リズム」のコード進行を元にして作ったというリフ・ナンバー⑦「レスター・リープス・イン」も彼の代表的名演の一つに挙げられる逸品で、滑らかなフレーズを連発しながらまるで流動体生物のように変幻自在のプレイを聴かせるレスターには言葉を失う。他にもレスターの流麗なソロに耳が吸いつく④「12番街のラグ」やバンドのノリノリの演奏に圧倒される⑤「クラップ・ハンズ・ヒア・カムズ・チャーリー」など、この時期のベイシー・バンドの充実ぶりが伝わってくる名演揃いだ。又、⑩「シュー・シャイン・ボーイ」、⑪「オー・レディ・ビー・グッド」、⑫「ブギー・ウギー」の3曲はレスターの初録音と言われるもので、この時点で既に彼のユニークなアドリブ・フレーズが完成されているのが凄い。
 人によって好みの違いは色々あると思うが、私は歴代ベイシー・バンドの中ではやはりレスター在籍時の演奏が一番好きだ。特に前回のブランズウィック盤とこのエピック盤はそんな彼らのベストの演奏を収めたビッグバンド・ジャズの金字塔だと思う。

追記:YouTube、今回もブロックされてしまいました(>_<) よってコレもニコニコ動画でどーぞ↓

Count Basie

2010-05-16 | Jazz
 カウント・ベイシーといえばデューク・エリントンと並ぶビッグ・バンド・ジャズの巨星として知られている。私がまだジャズのジャの字も知らなかった時でさえ、スティーヴィー・ワンダーの「サー・デューク」の歌詞に出てきたこともあって、この二人の名前だけは知っていたが、マイナーな音楽ジャンルであるビッグ・バンド・ジャズだから、たとえベイシー、エリントン級のビッグ・ネームであっても “名前は聞いたことあるけどその音楽は聴いたことない” という昔の私みたいな音楽ファンは結構多いんじゃないかと思う。
 前回クレア・マーティンの時に書いたように、私はヴォーカルもインストもスモール・コンボが好きで、手持ちのビッグ・バンド盤というのは数えるほどしかない。オーケストラの予定調和っぽいアンサンブルよりも各ソロイスト達の個性溢れるプレイを聴く方がずっと面白いからだ。そういうワケでジャズを聴き始めてからもしばらくの間は私とベイシーの接点はなかった。
 そんな私が初めて買ったベイシー盤が「ベイシーズ・ビートル・バッグ」、タイトルからも分かるようにビートルズ・ナンバーをベイシー流ビッグ・バンド・ジャズで料理してみましたという、丸ごと1枚ビートルズ・カヴァーのアルバムだった。ビッグ・バンドは苦手やけど大好きなビートルズの曲なら馴染めるかも、と思って買ってみたのだが、これがもう全然面白くないヘタレ盤で、大好きな「ヘルプ」も「ハード・デイズ・ナイト」も「オール・マイ・ラヴィング」も原曲の良さをことごとく殺すようなトホホなアレンジが施されており、ベイシーの魅力である “弾けるようなノリの良さ” が全く聞かれず、私はすぐに中古屋に売り払い “やっぱりビッグ・バンドは肌に合わんわ(>_<)” と諦めた。
 その後何年かが過ぎて私はテナー・サックスのレスター・ヤングにハマり、彼のレコードを求めて大阪中のレコ屋を廻っていた時に、 EAST の佐藤さんに “レスター聴かはるんやったらデッカのベイシーがいいですよ(^.^)” とこのブランズウィック盤「カウント・ベイシー」をススメられ、A面1曲目「ジャンピン・アット・ザ・ウッドサイド」を聴かせていただいた。私はレスターのリーダー作ばかりを追っており、初期のベイシー・オーケストラ在籍時代はノーマークだったが、この「ジャンピン...」の彼のソロはまさに天衣無縫というか、変幻自在というか、もう言葉で表現できないくらい素晴らしいものだったし、何よりもバンドが一体となって生み出す強烈無比なスイング感に完全KOされた。この1曲だけでも3,200円の価値があると思った私はその場で即買いを決めた。
 この盤をフル・ヴォリュームで聴きたいと思った私は速攻で家に帰り、ワクワクドキドキしながらターンテーブルに乗せた。1曲丸ごと “ノリの塊” のようなA-①「ジャンピン...」は大音響で聴くと更に魅力倍増、オール・アメリカン・リズム・セクションが生み出すステディーなリズムに乗って目も眩むような必殺のソロが続出する。アール・ウォーレンのホットなアルト・ソロから最小限の音数で最大限のスイングを生むベイシー・マジック炸裂のピアノ・ソロ、そして歌心溢れるバック・クレイトンのトランペットと続き、いよいよレスターが登場、意表を突いたソロの入り方がめちゃくちゃカッコイイ(≧▽≦) このように一騎当千のツワモノが集まったベイシー・バンドのドライヴ感溢れるサウンドは圧巻と言ってよく、漲るパワーに圧倒されて気持ちエエことこの上ない。
 ①以外も聴いてて思わず身体が揺れてしまうようなノリノリのナンバーが続く。まるで一筆書きのように流れるようなレスターのソロに頭がクラクラするカンザス・スイング・ナンバーA-②「エヴリ・タブ」、ズート・シムズが名盤「ダウン・ホーム」で取り上げたA-⑥「ドッギン・アラウンド」、ザクザク刻むフレディ・グリーンのリズム・ギターが快感をよぶB-①「テキサス・シャッフル」、ハーシャル・エヴァンスのウォームなテナーが心にグッとくるスロー・バラッドB-②「ブルー・アンド・センチメンタル」、心地良いスイング感がたまらない超愛聴曲B-③「チェロキー」、アドリブ・コーラスを先行させテーマのメロディーを曲の半ばまで出さずにじらすというビッグ・バンドとしてはユニークなアレンジが面白いB-④「トプシー」など、バンド・アンサンブルと各人の名人芸の両方が十分に堪能できる素晴らしい内容だ。
 単純明快なフレーズと躍動するリズムがめっちゃ気持ち良いこのアルバム、単体ではCD 化されていないが、デッカ時代のベイシー作品を集大成した3枚組CD「黄金時代のカウント・ベイシー ~The Original American Decca Recordings~」に完全収録されているので、初期のベイシーを聴くならそちらの方が手軽でいいかもしれない。




Retouch / Martin Haak Kwartet

2010-05-09 | Jazz
 私の人生の大きな喜びの一つは未知の名曲・名盤との出会いである。今でこそレコードや CD は殆どネットで買っているが、ヤフオクや eBay を知る8年前までは週に1回は必ず大阪・京都・神戸のレコード屋を回っていた。ハッキリ言って交通費もバカにならないし、よくもまあ飽きもせず毎週毎週出かけていったものだと思うが、奈良に住む私にとって当時はそれしかレコードを買う手段がなかったし、足を棒にして歩いた分、掘り出し物に出会えた時の喜びは何よりも大きかった。
 大阪の中古レコード屋で当時私が贔屓にしていた良心的なお店の殆どが今では閉店してしまったが、そんな中でも私が一番好きだったのが大阪日本橋にあった EAST というお店である。店主の佐藤さんご自身が年に何度かヨーロッパへ買い付けに行かれることもあって他店とは一味も二味も違う品揃え、しかもめっちゃ良心的な値付けがされていたこともあって私は足繁くお店に通い、そのうち顔や名前も覚えていただいて親しくお話を伺うようになった。
 佐藤さんにススメていただいた盤は100%ハズレ無しで、イザベル・オーブレのフレンチ・ボッサ盤やギュンター・ノリスのビートルズ・カヴァー盤、ペトゥラ・クラークのジャズ・スタンダード盤にジリオラ・チンクエッティのディズニー曲集など、そのどれもが私の嗜好のスイートスポットを直撃する好盤だった。そんなある時、レコード買い付けから帰ってこられたばかりの佐藤さんが “shiotch7さん、こんなん好きちゃう?” と言ってかけて下さったのがマルティン・ハークという未知のオランダ人ピアニストのアルバム「レタッチ」に入っている「アローン・アゲイン」だった。弾むようなパーカッションが刻むウキウキするようなリズムに乗って、ゴキゲンにスイングするピアノがギルバート・オサリヴァン一世一代の名曲を軽快に奏でていく。原曲の素朴な旋律の最もオイシイ部分を抽出してスインギーなジャズに仕上げているところが何とも痛快で、私は即座に “コレ下さいっ!!” とコーフン気味に(笑)叫んでいた。
 ライナーが英語じゃない(オランダ語?)のでこのピアニストのことは何も分からないが、収録曲はジャズの有名スタンダードからポップスの名曲に至るまでヴァラエティーに富んでいて、そのメロディー重視の選曲基準は実に分かりやすい。サウンドの一番の特徴はやはりパーカッション入りのピアノ・カルテットという一点に尽きるだろう。小賢しいことを一切考えず、ポップなメロディーを心躍るようなリズムに乗せてスインギーに演奏することに徹しているのが何よりも素晴らしい(^o^)丿
 まずは A面のアタマからいきなり歯切れの良いパーカッションの乱れ打ちで始まるガーシュウィンの A-①「ザ・マン・アイ・ラヴ」、もうノリノリである(^o^)丿 ギルバート・オサリヴァンの A-③「アローン・アゲイン」といい、スティーヴィー・ワンダーの B-①「ユー・アー・ザ・サンシャイン・オブ・マイ・ライフ」といい、パーカッションが入ったことによってウキウキワクワク感が増強され、聴いてて思わず身体が揺れるような強烈なスイングが生み出されている。又、デューク・ジョーダンの B-②「ジョードゥ」やジェローム・カーンの B-④「イエスタデイズ」といったジャズの定番曲でも跳ねるようなピアノを中心としたカルテットが生み出すグルーヴが絶品で、サバービアな雰囲気横溢のサウンドが耳に心地良い。
 ミディアム・スローから始まって徐々に盛り上がっていくビートルズ・カヴァー A-②「フォー・ノー・ワン」も品格滴り落ちるエレガントなピアノがエエ感じで、その絵に描いたような小粋で歌心溢れるプレイはこのピアニストが只者ではないことを物語っている。アントニオ・カルロス・ジョビンの B-③「ワンス・アイ・ラヴド」ではヴァイブの洗練されたサウンドが楽しめて、アルバムの絶妙なアクセントになっているように思う。
 確かにネットのワン・クリックで欲しい盤が自宅に届くという便利な時代になったが、その裏では信頼できるレコード店がどんどん姿を消していっている。 EAST も、 VIC も、しゃきぺしゅも閉店し、関西では神戸のハックルベリー以外はもうロクな店は残っていないので、今更レコード屋巡りを再開する気にもなれないが、お世話になったお店のご主人たちとの楽しいやり取りを経て買ったレコードを見るたびに、猟盤ツアーに熱中していた当時を懐かしく思い出す今日この頃だ。

マルティン・ハーク

Living Without Friday / 山中千尋

2010-05-08 | Jazz
 ジャズの曲というのは殆どがスタンダード・ナンバーかジャズメン・オリジナルである。スタンダードの素晴らしさは今更言うまでもないが、かと言ってその数にも限りがあり、毎回毎回同じようなスタンダードばかり演るわけにもいかない。そこでオリジナル曲の登場となるのだが、正直言って心に残るようなメロディーは10曲中に1曲あれば良い方で、先日取り上げたミシェル・サダビィ盤のような超名曲に出会える確率は極端に低い。ジャズのオリジナル曲で多いのが、その場でテキトーにデッチ上げたようなテーマから各プレイヤー任せの一発勝負!みたいなノリでソロを回し、最後に又テーマに戻って終り、みたいなパターンだ。もしベニー・ゴルソン級の作曲家があと10人ぐらいいたら(←テナーはやめてね...笑)、ジャズはもっと親しみやすい音楽になっていただろう。
 スタンダードにも限度がある、オリジナルはハズレが多い、となると残るは他ジャンル曲のジャズ化しかない。以前このブログでも取り上げたアイク・ケベックやジョン・ピザレリなど掘り出し物も結構多く、クラシックやポップス、歌謡曲などの必殺のメロディーをジャズ・フォーマットで聴けるのが実に新鮮で面白い。そういえば「ジャズ代官」とか「ルパン・ジャズ」なんていうのもあったなぁ...(笑) これからもこの分野はライフワークの一つにしていきたいと思っているが、そんな私が目からウロコというか、思わず唸ってしまった屈指の名演が山中千尋のデビュー・アルバム「リヴィング・ウイズアウト・フライデイ」に収められた③「ア・サンド・シップ(砂の船)」だった。
 中島みゆきが'82年にリリースした傑作アルバム「寒水魚」に収められていた知る人ぞ知る隠れ名曲を見つけてくる彼女のセンスにも脱帽だが、何よりも感銘を受けたのは、潤んだようなピアノの音色でこの曲の髄を見事に引き出し、オリジナルとは又違った彼女独自の哀愁舞い散る世界を作り出していること。そのメロディーの歌わせ方は聴く者の心の琴線をビンビン震わせる絶妙なもので、原曲を知っていてもまるで彼女のオリジナル曲のように聞こえるところが本当に凄い。私の中ではレイ・ブライアント・トリオの「ゴールデン・イヤリングス」やミシェル・サダビィの「ブルー・サンセット」のような大名演と並んで “哀愁のピアノトリオ” の殿堂入りしているキラー・チューンだ。
 私的にはこの1曲だけでも “買い” なのだが、それ以外のトラックもハンパなく素晴らしい。アルバム冒頭を飾る①「ビヴァリー」は彼女のオリジナルだが、大海原の上をゆったりと飛ぶカモメのイラストが印象的なジャケットのイメージそのもののオープニングで、陽光降り注ぐ地中海の海辺のテラスで聴いているかのような開放的なサウンドが耳に心地良い。ブリリアントな午後(笑)にピッタリの “時が止まった感” が味わえる爽やかなナンバーだ。
 アントニオ・カルロス・ジョビンのボッサ・スタンダード②「イパネマの娘」はノーテンキな原曲を換骨堕胎したかのような大胆なアレンジがめちゃくちゃカッコ良く、音の粒立ちのハッキリしたメリハリの効いたピアノに緩急自在なドラムス(←女性です!)と骨太なベースが絡んでいくという硬派な演奏が楽しめる。こんなカッコ良い「イパネマ」には他ではちょっとお目にかかれない。
 アルバム・タイトル曲の④「リヴィング・ウイズアウト・フライデイ」は哀調の③から一転してスピード感抜群の現代的なピアノトリオ・ジャズが展開されており、トリオが一体となって疾走するようなガッツ溢れるダイナミックな演奏は実にスリリング。小柄で可愛らしい外見からは想像もつかないような彼女のハードボイルドな一面が窺い知れる1曲だ。
 リズム・セクションのレベルの高さが分かる⑤「クライ・ミー・ア・リヴァー」、軽やかなリズムに乗ってメロディアスにスイングする⑥「パブロズ・ワルツ」(←これ大好き!)、エキゾチックなメロディーに涙ちょちょぎれる⑦「バルカン・テイル」、静謐な空間で繰り広げられるインタープレイに聴き入ってしまう⑧「ステラ・バイ・スターライト」、テナーのプレイは苦手やけど作曲家としては素晴らしいウエイン・ショーターの曲をピアノトリオ・フォーマットで魅力的にスイングさせる⑨「ブラック・ナイル」、そしてラース・ヤンソンの⑩「インヴィジブル・フレンズ」でアルバムのクロージングを爽やかにキメるという、今時珍しい(←といってももう9年前の録音だが...)捨て曲ナシのアルバムなのだ。
 彼女はこのデビュー盤を含め、ピアノトリオに定評のある大阪のマイナー・レーベル澤野公房から3枚のアルバムを出した後、大メジャーのユニバーサルへと移籍して6枚のアルバムを出しているが、個人的にはノビノビしたスイング感が感じられる澤野時代の盤の方を愛聴している。特にこのデビュー・アルバムは “山中千尋を聴くならまずはこの1枚から” と自信を持ってオススメできる “メロディー良し、リズム良し、スイング良し” と、まさに言うことナシの1枚なのだ。

ア・サンド・シップ


中島みゆき「砂の船」

Spanish Steps / Hampton Hawes

2010-05-06 | Jazz
 5月に入ってからというもの、大西順子に始まりキョロシー、コスタ、ジュディベリ、サダビィと、愛聴ピアノトリオ盤を取り上げてきたが、一見何の脈絡もなさそうでいて実は一つの共通点がある。どれもみなベースがブンブン唸り、ドラムス(特にブラッシュ!)がビシバシ躍動感溢れるリズムを叩き出し、その音の洪水の中からスインギーでグルーヴィーなピアノが聞こえてくるという、剛力リズム・セクション盤ばかりである。逆にリズム隊が脆弱でピアノばかりが突出したようなピアノトリオはソロ・ピアノを聴いてるみたいで全然面白くない。ということで今日は、弾けるようなリズムで “連休の谷間疲れ” を吹き飛ばしてくれるような元気が出るピアノトリオでいきたい(^o^)丿
 ハンプトン・ホーズと言えばドライヴの効いた快適なスイング感が身上のピアニストで、アップテンポの曲で聴かせる軽快でメリハリのあるフレーズは唯一無比の素晴らしさである。そんなホーズの代表作と言えば何故か世間では判で押したようにコンテンポラリー・レーベルの「トリオVol. 1」(1955年)ということになっているが、本当にみんながみんなそう思っているのだろうか?確かに良い盤には違いないが、他にもっと凄い演奏はいくらでもゴロゴロしているように思う。
 ホーズの全盛期は1952年の「ピアノ・イースト・ピアノ・ウエスト」から58年の「フォー」あたりまでで、その直後に麻薬所持で5年の刑を打たれ、復帰した時にはあのインスピレーションが迸る様なプレイはすっかり影を潜めていた。まぁ麻薬が切れたらこんなモンなのかもしれないが、シャバへ復帰後の諸作は駄演凡演の連続で、ホーズは50年代で終わったと思っていた。
 そんな彼がヨーロッパへの旅行中にドイツのSABA レーベルに世評も高い「ハンプス・ピアノ」を録音したのが1967年のこと。確かに新天地の空気を吸ってリフレッシュしたのかホーズもかなり好調なプレイを聴かせているが、収録曲の半分がベースとのデュオという眠たいフォーマットのせいでリズム派の私にはいまいちピンとこなかった。もちろん残り半分のピアノトリオではクラウス・ワイスのブラッシュがスルスル滑って気持ち良いことこの上ない「枯葉」のような名演もあるにはあったが、SABA/MPS 録音ということで音質が良すぎるせいか、アルバム全体を通して私がジャズに求めるガッツに乏しいように思えた。901さん流に言えばガツン!とこないのである。
 で、その翌年に英ポリドール傘下のブラックライオン・レーベルから出たのが何を隠そう私がホーズの最高傑作と信じて疑わない「スパニッシュ・ステップス」。このアルバムの何がそんなに凄いのかと言うと、ドラムスのアート・テイラーとベースのジミー・ウッディという2人のリズム隊が獅子奮迅の活躍で、出がらし状態(笑)だったホーズを奮い立たせ、奇跡的な名演を生み出したこと。アルバム冒頭の①「ブルース・イナフ」からもうアクセル全開状態でスリリングなピアノトリオ・ジャズが展開されるのだが、アルバム中最高のトラックはやはり必殺の③「ブラック・フォレスト」だろう。テイラーのブラッシュとウッディのベースが生み出す原始的ともいえる凄まじいエネルギーが圧巻で、私に言わせればこれこそまさにピアノトリオの理想形なのだ。
 このアート・テイラーと言う人は様々なセッションに引っ張りダコな割にはこれぞ!と言える名演がなかったように思う(←目立たないからこそフロントマンにとっては都合がよかったのかも...)のだが、この曲の後半部のドラムソロにおける狂喜乱舞の体はまさに “太鼓の乱れ打ち” という感じで、彼の一世一代の名演だ。尚、この曲は前作「ハンプス・ピアノ」の1曲目に「ハンプス・ブルース」というタイトルで収められているので、この2つのヴァージョンを聴き比べてもらえれば私の言わんとするところがわかってもらえると思う。
 このアルバムのもう一つの目玉は絶世の名曲②「ソノーラ」が収録されていること。実は前作「ハンプス・ピアノ」にも同名のジャズ・ボッサが入っており、てっきり再演かと思っていたがいざ聴いてみると全く違う曲で、こちらは哀愁舞い散るジャズ・ワルツに仕上がっているのだ。クレジットを見るとどちらもハンプトン・ホーズ作となっている。何で自分の作った2つの違う曲に同じタイトルを付けたんやろ?その辺の事情はよくわからないが、どちらも名曲名演であることに変わりはない。特にこのワルツ版「ソノーラ」は他のピアニスト達もカヴァーしているキラー・チューンだ。
 全盛期を過ぎてもう終わったと思われていたハンプトン・ホーズがヨーロッパの地で作り上げた起死回生の一発と言えるこのアルバム、大音量でかければ自宅が一瞬にしてジャズ喫茶に早変わりする必殺盤だ。

ブラック・フォレスト
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Blue Sunset / Michel Sardaby

2010-05-05 | Jazz
 お気楽三昧でグダグダ過ごしたゴールデン・ウイークも今日で終わり、明日からまた早起きして仕事に行かなければならない。もう気分はブルーそのものだ。ということで今日はそんなムードを反映してミシェル・サダビィの「ブルー・サンセット」でいこう。
 サダビィはカリブ海の西インド諸島にあるフランス領、マルティニーク島出身で、活動の中心をパリにおいている黒人ピアニスト。1970年代に仏デブス・レーベルから数枚のリーダー作を出し、CD時代に入ってからも日本のDIWレーベルなどから何枚ものCDをリリースしているが、彼の最高傑作と言えばやはり1970年にリリースした2枚、「ナイト・キャップ」とこの「ブルー・サンセット」に尽きるだろう。
 彼の一番の魅力はピアノのプレイ云々以前にそのオリジナル曲にある。ジャズ・ミュージシャンの書くオリジナル曲と言うのは大抵の場合、器楽的というか、まず第一に演奏ありきといった感じの無機的な、分かりにくいものが多いのだが、この人の作る曲は違う。日本人好みのマイナー・チューンが多く、それが聴く者の胸を締め付けるのだ。私は彼をベニー・ゴルソンやナット・アダレイと同じく、数少ないジャズの名作曲家だと思っている。
 このアルバムの魅力は何と言ってもタイトル曲①「ブルー・サンセット」に尽きるだろう。 “哀愁のピアノトリオ” なんていう副題が似合いそうな極め付きのマイナー・チューンで、フランス系の黒人という彼のルーツのせいか、独特の間が醸し出す不思議な哀感が胸に迫ってくるのだ。彼のタッチはピアニスティックな美しさを持っており、前半部は一聴白人ピアノ風にシングルトーンでやるせなくも美しい旋律を奏でながらも、その一方でブルージーなフレーズを繰り返しながら徐々に盛り上げていき、臨界点に達したところで一気にブロック・コードの連打でたたみかけ、ラストで又何事もなかったかのように淡々としたテーマに戻るという、実に心憎い構成になっている。低~く伸びるベースも気持ち良く、プレスティッジの「レイ・ブライアント・トリオ」あたりが好きな人は絶対にハマること間違いなしの、哀愁舞い散るスーパー・ウルトラ・キラー・チューン(笑)だ。
 タイトル曲以外も聴き応え十分で、ヨーロッパ臭さを感じさせないグルーヴィーなプレイがたまらない②「オールウェイズ・ルーム・フォー・ワン・モア」(←コレ名曲!)、カリブ直系のファンキーなプレイが面白い③「エンプティ・ルーム」、弾むようにスイングするサダビィにウキウキさせられる④「ウエンディ」、スロー・バラッドを切々と弾き切る⑤「ラメント・フォー・ビリー」、一転ジャズ・ボッサのリズムに乗って気持ち良さそうにスイングする⑥「カム・フロム・ノーウェア」と、サダビィの魅力がギュッと凝縮されたような1枚に仕上がっている。
 尚、このアルバムは写真のゴールド・カヴァーが 1st プレスで海外オークションでも滅多に出てこない激レア盤(デブス・レーベルやから “金パロ” ならぬ “金デブ” やね...笑)なのだが、LP1枚に $900 も出す気などサラサラない私は、ボートラとして同時期のアルバム「コン・アルマ」を1枚丸ごと追加収録した超お徳用日本盤CD で聴いている。アナログLPでよく見かけるジャケ違いの青文字タイトル盤は 2nd プレスで、センター・ラベルがAB面逆に貼ってあるというエエ加減な作り(私の所有している1枚だけでなく全ての盤がそうらしい...)なのだが、タイトル曲①が CD に入っているの(5:35)とは完全な別テイク(4:26)なので要注意。私はより洗練された感じがする CD ヴァージョンの方を愛聴している。

ブルー・サンセット

You And The Night And The Music / Judy Bailey

2010-05-04 | Jazz
 ジャズ界ではよく “幻の名盤” とか言って入手困難な稀少盤を必要以上にありがたがる傾向がある。もちろん優れた内容の盤も多いが、中には “何でコレが名盤やねん?” と首をかしげたくなるような盤まで稀少価値だけで5桁6桁の値がつくという浮世離れした世界である。私も最初はワケがわからず傍観を決め込んでいたのだが、実際に海外オークションをやってみてだんだんそのカラクリが分かってきた。
 当時、廃盤店主の多くは年に2~3回海外買い付けに行ってオリジナル盤を仕入れてきたものだが、一部の業者はネットを駆使して eBay オークションで安く落札したものに法外な値を付け、リッチで盲信的な常連客に売りさばいて暴利をむさぼり続けた。彼らの入札競争によって落札価格が高騰し、結局それが海外のセラーを強気にさせるという悪循環を招き、人気のあるオリジナル盤は庶民の手の届かない高嶺の花になってしまったのだ。
 今日取り上げるジュディー・ベイリーはジャズ界では珍しいオーストラリアの、しかも女性ピアニストということで、これは商売になると踏んだのかどうかは知らないが上記の業者が彼女のデビュー・アルバム「ユー・アンド・ザ・ナイト・アンド・ザ・ミュージック」(1963年)を “ピアノトリオのコレクターなら持っていて当り前” とか言ってマニア心を煽った結果、コレクターの間であっと言う間に超人気盤になり、今では10万円前後で取り引きされていると聞く。もう開いた口が塞がらない(゜o゜)
 こう書いてくると値段が高いだけで中身はイマイチ、みたいに思われるかもしれないが、このアルバムに限って言えば聴き応え十分な内容で、“持ってて当り前” とは言わないまでも(笑)持っていて決して損はない名盤だと思う。私は良い音で聴けさえすれば1円でも安い方がいいので、業者連中が狙わないニュージーランド盤を16,000円で手に入れた。 NZ 盤はオリジナルの AU 盤とレコード番号が違うだけで他は殆ど同じなので、私としてはめっちゃオイシイ買い物だった(^.^)
 このアルバムはタイトルに「ナイト」が付いた曲ばかり集められており、それらがピアノトリオ・フォーマットで演奏されている。全体的な印象としては“オーストラリアの女ビル・エヴァンス” といった感じで、それもリリシズムがスベッタだの転んだだのといった内省的な演奏ではなく、エヴァンスの本質とでもいうべきハードボイルドなプレイが楽しめるのが嬉しい。しかも単なるエヴァンス・エピゴーネンでは終わらないオリジナリティーも随所に感じられるのだからもう言うことナシだ。
 私がまず気に入ったのはタイトル曲の A-①「ユー・アンド・ザ・ナイト・アンド・ザ・ミュージック」。エヴァンス・ライクなカッコ良いフレーズの速射砲といい、ヴァンガード・ライヴを彷彿とさせるようなベースとのインタープレイといい、実にテンションの高い演奏が繰り広げられる。短く切断されたブツ切りフレーズの波状攻撃やチェンジ・オブ・ペースの妙なんかもエヴァンスが憑依したかのようなプレイで、この手の音が好きなファンにはこたえられない演奏だと思う。
 先日キョロシーの名演を紹介したばかりの我が愛聴曲 B-③「ナイト・イン・チュニジア」も疾走感溢れるプレイがめっちゃスリリングで、縦横無尽にスイングしながらもピアノの鋭いアタック音が炸裂、ベースもブンブン唸りを上げて暴れ回るという理想的な展開だ。他にもスローなソロ・ピアノ風のイントロから一転して急速調のトリオ演奏で駆け抜ける A-②「イン・ザ・スティル・オブ・ザ・ナイト」や典雅にスイングする A-④「ディープ・ナイト」、威風堂々たるランニング・ベースに乗って美麗フレーズが続出する B-①「ザ・ナイト・ハズ・ア・サウザンド・アイズ」なんかかなりエエ感じ。一方スローな B-②「ナイト・アンド・デイ」や B-④「ラウンド・ミッドナイト」ではやや凡庸な演奏に終始しているように思う。
 とまぁこのようにエヴァンス好きな日本のピアノトリオ・ファンには大ウケしそうな内容なのだが、なぜか未 CD 化のままである。権利関係とか色々複雑なのかもしれないが、日本のレコード会社も毎回同じようなラインナップで再発を繰り返す暇があったら、こういう盤を CD 化してくれたらエエのに...

ジュディー・ベイリー

The House Of Blue Lights / Eddie Costa

2010-05-03 | Jazz
 5月に入ってピアノトリオが続いている。昭和歌謡やハードロックにかまけて最近あまりジャズを聴いてなかったので久々に聴いてみようという軽いノリ(←いつものパターンです)で思いついた盤をテキトーにアップしていたのだが、901 さんから “ガツン!とくるピアノ... 次はエディ・コスタかな?” とコメントをいただいたので、早速そのアイデアに便乗することにした。ということで今日はエディ・コスタの「ハウス・オブ・ブルー・ライツ」です(^.^)
 エディ・コスタという人はジャズ界ではどちらかと言えばマイナーな存在で、リーダー作もジュビリー、モード、コーラル、そしてこのドット盤と、マイナー・レーベルに4枚あるだけで若くして自動車事故で夭折してしまったのだから普通なら忘れ去られてしまいそうなものだが、彼の場合は違った。相棒のベーシスト、ヴィニー・バークと共に “50年代速弾きチャンピオン” の異名をとる天才ギタリスト、タル・ファーロウのアルバムに参加して一躍その名を知らしめていたからだ。特に「タル」収録の「イエスタデイズ」におけるスリリングなプレイは彼の才能が如何なく発揮された素晴らしいもので、中低域をハイスピードで弾きまくるタルにユニゾン奏法で絡んでいくピアノがめちゃカッコ良かった。
 彼はピアノの他にヴァイブ奏者としても知られているが、ヴァイブでは没個性で平凡なプレイに終始していたのに対し、ピアノのプレイは非凡な才能の煌めきに溢れていた。彼のピアノの一番の特徴は低音域を駆使した力強いタッチにあり、ガンガン弾きまくる左手のハンマー奏法が絶妙なドライヴ感を生み出し、メロディアスにスイングする右手とまるで対話しているかのように独自の世界を形作っていく。これは他のピアニストには見られないユニークな奏法で、聴き手は知らず知らずのうちに彼のスイングに惹き込まれていってしまうのだ。
 この「ハウス・オブ・ブルー・ライツ」は1959年にベースのウェンデル・マーシャル、ドラムスのポール・モチアンと組んで作り上げた彼の最高傑作で、何と言ってもジジ・グライス作のタイトル曲①「ハウス・オブ・ブルー・ライツ」が断トツに素晴らしい。まるでドラキュラが出てきそうなジャケットの雰囲気と相まって、妖気すら漂うハードボイルドな演奏がめちゃくちゃカッコイイのだ(^o^)丿 マーシャルとモチアンの生み出す正確無比なリズム(←コレ快感!)に乗ってコスタの左手が縦横無尽に暴れ回り、自由に歌いまくる右手と組んずほぐれつしながら一気に駆け抜け、10分という長さを全く感じさせないピアノトリオ史上屈指の名演になっている。とにかくこのユニークな低音ゴリゴリ・プレイ、ハマると癖になること請け合いだ。
 ①が凄すぎて他のトラックが霞んでしまいがちなこのアルバムだが、③「ダイアン」、④「アナベル」で聴ける圧倒的なスイング感も捨て難い。ここでもリズム・セクションの二人がめっちゃエエ仕事しており、コスタも気持ち良さそうに弾きまくっている。特に③におけるマーシャルの弾むようなベースは彼のベスト・プレイの一つに挙げていいと思う。盤石なリズムに乗ってスインギーなフレーズが続出する⑥「ホワッツ・トゥ・ヤ」も彼特有の低音域を巧く使った独創的なタッチで卓越した表現力と豊かなイマジネイションを感じさせる名演になっている。
 このアルバムはCD化されてすぐに買った記憶があるが、そのあまりの素晴らしさにどーしてもオリジナル盤が欲しくなり廃盤店を廻って値段を調べたところ、モノラル盤35.000円に対してステレオ盤が18,000円だった。何なん、この17,000円の差は?実際、50年代のステレオ盤というのはコンテンポラリー・レーベルのような一部の例外を除いては技術的にまだまだ稚拙で音像の定位に違和感を覚えるような盤が多く、 “オリジナル盤はモノラル” というのが私の家訓であり、信条であり、座右の銘だったのでかなり迷ったのだが、値段の差があまりにも大きかった(←ほとんど倍近い値段やん!)ので結局ステレオ盤をチョイス、買って帰った日に恐る恐る針を落としてみて “DOT ULTRA STEREOPHONIC” の意外なまでの音の良さに大喜びしたのを覚えている。その後、モノラル盤を聴く機会があったが、ハッキリ言ってステレオ盤の方がエエ音していた。まぁたまたまこの盤に限っての事だとは思うが、何かめっちゃ得したような気がしで妙に嬉しかった(^o^)丿

ハウス・オブ・ブルー・ライツ

Jancsi Korossy

2010-05-02 | Jazz
 ヤンシー・キョロシーはルーマニアのピアニストである。ヨーロッパのジャズと言うと世間では、クラシックの素養をベースにモードやフリーを消化してそれらをヨーロッパ的な感性で表現したような60年代後半以降の盤が主流だが、 “クラシック=眠たい、モード・ジャズ=退屈、フリー・ジャズ=精神異常” と感じる私にとってはほとんど無縁の音楽と言っていい。現にこのキョロシーにも69年にドイツのMPSレーベルからリリースした「アイデンティフィケーション」という人気盤があり、当時はキョロシーで唯一CD化されていた盤ということで興味を引かれたのと、有名スタンダードを演っているから多分大丈夫やろうと油断した(笑)こともあって、私もそのCDを買って聴いてみたのだが、これがもう聴くに堪えないフリーなアドリブの嵐で、スタンダードのメロディーをギッタギタに破壊し尽くすようなアホバカ・プレイにブチ切れた私は即刻中古屋へと売り飛ばしたものだった。
 しかしノーマから復刻されたこの 10インチ盤「ヤンシー・キョロシー」は違った。元々は65年録音のエレクトレコード盤がオリジナル(EDD 1104)で、まだモードやフリーの悪しき影響を受けておらず、良い意味での “アメリカのジャズのコピー” 的色彩が強い、清々しいバップ・ピアノが楽しめるのだ。それもそんじょそこらに転がっているようなノーテンキなバップ・ピアノではなく、異常なまでにハイ・テンションでスリリングなプレイが聴けるのだからコレはもうこたえられない(≧▽≦)
 全8曲入りのこのアルバム、まずは何と言ってもA面1曲目の①「ナイト・イン・チュニジア」、コレに尽きる。シャキシャキしたドラムスにブンブン唸るベースが絡みつき、鋭利なナイフのようなピアノ音の速射砲がスピーカーから飛び出してくるイントロを聴いただけでそのただならぬ気配、尋常ならざるテンションの高さが伝わってくる。とにかく小賢しいことは一切抜きでピアノトリオの王道を行くような直球勝負と言える演奏で、トリオが一体となって燃え上がるその様は筆舌に尽くし難い素晴らしさだ。ピアノのハネ方とアタック音のメリハリのつけ方なんかめっちゃカッコエエし、ハイ・スピードでガンガン弾きまくりながらも溢れるような歌心がビンビン伝わってくるそのプレイにジャズ・ピアニストとしての抜群のセンスを感じてしまう。漲るパワー、迸り出るエネルギー...そのすべてが圧巻だ。
 超有名スタンダード②「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は実を言うとそのメロディー展開も気だるいテンポもイマイチ好きになれない私の苦手曲なのだが、このキョロシー・トリオの演奏はすんなり入っていける。キョロシーの絶妙な間の使い方とドラムスの瀟洒なリズムが生み出す独特のグルーヴに思わず聴き入ってしまうのだ。あまり好きでもない曲をここまで聴かせてしまうのってある意味凄いことだと思う。
 ③「ブルース・フォー・ギャレイ」でもまるで黒人のようなグルーヴィーなピアノが楽しめて言うことナシ。①②③と聴いてきて、ジャズ後進国ルーマニア出身というハンデは微塵も感じさせないし、むしろ本場アメリカの凡百ピアニスト達よりも遥かにジャズを感じさせるところが凄い。ただ、④「ジュニア」、⑥「ボディ・アンド・ソウル」、⑦「ティップ・トップ」はソロ・ピアノなのでパス(笑) 誰が何を弾こうとジャズのソロ・ピアノは苦手だ。
 B面アタマの⑤「ブロードウェイ」は私の愛聴スタンダード曲の一つだが、ここでもキョロちゃん(←チョコボールかよ...笑)の端正で温か味のあるピアノと張り切りまくるベース、そして乱舞するシンバルが絶妙なバランスを保ちながらスインギーな演奏を聴かせてくれるし、ガーシュウィンの名曲⑧「バット・ノット・フォー・ミー」でもスイング感溢れるノリノリの演奏が楽しめる。まさに “ジャズは歌心とスイングだ!” と声を大にして言いたくなるような名曲名演だ。
 彼のエレクトレコード音源としてはもう1枚、4人のピアニストのトリオ演奏を集めたオムニバス盤10インチ「ジャズ・イン・トリオ」(EDD 1164)があり、そこに収められたチャップリンの「ライムライト」とナット・アダレイの「ワーク・ソング」も同好のピアノトリオ・ファンなら必聴だ。私はこの2枚のキョロシーが好きで好きでついには eBay でルーマニアのセラーから2枚ともオリジナル盤を買ってしまった(笑) どちらもピカピカ盤を結構安く買えてラッキーラララだったが、ノーマからこれらの全音源を1枚にまとめたコスト・パフォーマンス抜群のCDが出ていた(NOCD 5681...今は多分廃盤)ので、アナログに拘らないならそちらが断然オススメだ。

ナイト・イン・チュニジア
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プレイ・ピアノ・プレイ ~大西順子トリオ・イン・ヨーロッパ

2010-05-01 | Jazz
 私がジャズを聴き始めたのは1993年頃だった。ビルボード誌の集計方法改悪によって全米チャートがラップやヒップホップといったワケのわからんブラック・ミュージックだらけになり、それまで愛聴してきた80’s系のポップなロック曲が激減したため、洋楽に愛想を尽かした私は何か夢中になれる音楽はないモンかと色々なジャンルの音楽を聴き漁り、私を夢中にしたロックのノリに近いものをジャズのスイングに感じたのだ。非常に乱暴な言い方になるが、私にとっては AC/DC のタテノリ・ロックもアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズのファンキー・ジャズも、思わず身体が揺れてしまうという点では似たようなモノだった。
 ジャズを聴き始めて私が最初にハマったのがいわゆるひとつのピアノトリオというフォーマットで、最初の1年ほどは “寝ても覚めてもピアノトリオ” 状態が続いた。管が入らない分、大好きなブラッシュやアコースティック・ベースの音が堪能できるし、何よりもサックス界の一部に蔓延していたシーツ・オブ・サウンドとかいう暑苦しい奏法につきあわされるリスクが無くなるからだ。
 まだインターネットも何もなかった当時、ジャズ・ド素人の私にとっての情報源はスイング・ジャーナルというジャズ専門誌だけだった。そんな SJ 誌で当時大プッシュされていたのが大西順子という日本人ピアニストで、ちょうどデビューしたてでいきなりセンセーションを巻き起こしていたこともあり、私も早速彼女のデビュー・アルバアム「Wow」を買ってきて聴いてみた。コンテンポラリーなジャズ・ピアニストの多くはエヴァンス派といってパラパラと流麗に弾くタイプが主流なのだが、彼女のピアノは力強くガンガン弾きまくるスタイルで、まるでデューク・エリントンの「マネー・ジャングル」を聴いているかのような錯覚にとらわれるほど豪快なプレイが楽しめ、私はいっぺんに彼女のファンになった。
 その後の彼女は数々の名盤を生んできたジャズの聖地、ニューヨークのクラブ “ヴィレッジ・ヴァンガード” でのライヴ盤を始め、破竹の快進撃を見せるのだが、そんな彼女のキャリアのピークを記録したライヴ盤が1996年にリリースされたこの「プレイ・ピアノ・プレイ ~大西順子トリオ・イン・ヨーロッパ」である。この盤は96年7月にヨーロッパで行われたモントルーを始めとする3つのジャズ・フェスティバルに彼女が出演した時のセット・リストの中からベストのプレイを収録したもので、トリオが一体となって展開するスリリングなプレイがたまらないピアノ・トリオ・ジャズの名盤だ。
 特に気に入っているのがアルバム・タイトルにもなった①「プレイ・ピアノ・プレイ」で、エロール・ガーナーの隠れ名曲を探し出してくる嗅覚も大したものだが、それを完全に消化し、さらにパワーアップさせてまるで自分のオリジナル曲のように弾きこなしてしまうあたり、もうさすがと言う他ない。そのか細い腕からは想像も出来ないようなパーカッシヴなピアノのドライヴ感、ドラムスのシャープな切れ味、ベースのゴリゴリした押し出し感... それらが渾然一体となってライヴならではの生き生きした空間を感じさせてくれるところが何よりも素晴らしい。大西順子のベスト・プレイの一つに挙げたい名曲名演だ。
 有名スタンダード②「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」はいきなりアドリブから始まる大胆な展開で、最初は何の曲を演っているのか???なのだが、このアドリブが又凄まじく、火の出るようなインプロヴィゼイションの連続に言葉を失う。その眼も眩むようなスピード感は圧巻だ。残りの5曲はすべて彼女のオリジナル曲だが、これが又甲乙付け難い出来の良さ。ダイナミックなプレイに圧倒される③「スラッグス」、急速調で変幻自在のプレイを聴かせる④「トリニティ」、唯一のバラッドでありながら緊張感溢れるモンク風ナンバー⑤「ポートレイト・イン・ブルー」、端正な導入部から一気に順子ワールドへ突入し凄まじいインタープレイの応酬を聴かせる⑥「クトゥービア」、そして彼女の代表曲の一つ⑦「ザ・ジャングラー」ではスタジオ録音ヴァージョンを凌駕するスリリングなプレイが楽しめてもう言うことナシだ。
 エレピやシンセサイザーに手を出して失速してしまう前の、オーソドックスなフォービート・ジャズを演っていた頃の大西順子は本当に凄かった。それを如実に物語っているのがこのライヴ盤なのだ。

モントルーの大西順子・ジャズ名曲メドレー


プレイ・ピアノ・プレイ

The Last Concert / Modern Jazz Quartet

2010-02-17 | Jazz
 ジャズにしてもロックにしても、アーティストの音楽性というのはまずそのルーツに根差した確固たるサウンドがあり、それを橋頭保にして様々なエッセンスを取り込んでいくというパターンが多いのだが、ごく稀なケースとして、相反する二面性を同時に保持しているユニークなアーティストがいる。私にとってそんなアンビバレントなグループの筆頭に挙げられるのがモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)である。
 MJQ はどんなジャズ入門用ガイド本にも載っていると言ってもいいぐらいの人気コンボで、ジャズ初心者の頃の私もご多分にもれず、推薦盤として紹介されていた「ジャンゴ」や「コンコルド」を買いこんだ。その抑制の効いたクールなサウンドは唯一無比なもので、特に哀愁舞い散る「ジャンゴ」やメロディアスにスイングする「ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ」なんかはめちゃくちゃ気に入って聴いていた。しかしその一方でピアニスト、ジョン・ルイスの導入したクラシック的な要素には本能的に違和感を覚え、全く聴く気にならないトラックもいくつかあった。
 ポジティヴ思考の私は “まぁ全曲楽しめへんでも何曲か当たりがあればそれでエエわ(^.^)” と自分に言い聞かせ、第2第3の「ジャンゴ」や「ソフトリー」を求めてやはりジャズ本で推薦されていた「フォンテッサ」と「たそがれのベニス」を買ってきた。しかし聴いてみてビックリ、どちらもスイングのスの字もない、とてもジャズとは思えないような眠たいサウンドで、私は “コレのどこがジャズやねん!” と怒りのあまり盤をブチ割りたくなった。今から考えれば音楽評論家の提灯記事を信じた私がアホだったのだが、結局割らずに(笑)中古屋へ即、売り飛ばしたが、あの非ジャズ的な響きを持ったクラシックもどきのサウンドがトラウマになって、その後しばらく MJQ を聴かなくなった。
 そんな私の眼を開かせてくれたのが彼らの解散コンサートの模様を録音したライヴ盤「ザ・ラスト・コンサート」だった。ライヴだからか、あるいは “MJQ としてはこれが最後” という特別な想いからか、スタジオ録音盤では端正な演奏が売り物だった彼らが実に熱いプレイを展開しているのだ。これには本当に驚いた。ヴァイブのミルト・ジャクソンはグループを離れたソロ作品の数々でファンキー&ブルージーなプレイを聴かせてくれていたので元々大好きだったが、鼻持ちならないクラシックかぶれ野郎と思っていたジョン・ルイスまでもが火の出るようなアドリブを連発している。ベースのパーシー・ヒース(←私的には最も過小評価されているジャズ・ベーシストだと思う...)とドラムスのコニー・ケイのリズム・セクションは文句ナシにスイングする第1級のリズム・セクションだ。そんな4人が一丸となって繰り広げるハイ・テンションな演奏が圧巻で、私はこの盤を聴いて “MJQ はライヴに限る!” と確信した。
 Disc-1 では兎にも角にも①「ソフトリー...」に尽きる。この曲はこれまでも何度も繰り返し演奏され、レコード化されてきてそのどれもが名演なのたが、ここで聴ける「ソフトリー...」はそれらの存在が霞んでしまうぐらいの素晴らしさ。いや、世に存在する全ての「ソフトリー...」の中で断トツの私的№1がこのヴァージョンだ。⑥「ブルース・イン・A・マイナー」は起承転結のハッキリしたドラマティックな構成を誇る8分近い大作ながら、そのスインギーなプレイの波状攻撃で一気呵成に聴かせてしまう。ただ、ライナーにジョン・ルイス作って書いてあるけど、どう聴いてもテーマになってるメロディーは「朝日のあたる家」そっくりだ。まぁ別にどっちでもエエねんけど...笑
 チャーリー・パーカーの⑦「コンファメーション」ではグループが一丸となって疾走するようなホットでファンキーなプレイが楽しめるし、⑫「イングランズ・キャロル」もめちゃくちゃスイングしていて、コレがあの眠たい「フォンテッサ」を作ったコンボかと耳を疑いたくなるぐらい素晴らしい。アドリブ・フレーズとかも含めた全体の雰囲気は①「ソフトリー」の弟分みたいな感じの曲だ。
 Disc-2 では⑨「ジャンゴ」でスタジオ録音ヴァージョンとは全く違うアドリヴを聴かせるミルトの凄さに改めて驚愕。無尽蔵と思えるかのように汲めども尽きぬアドリヴ・フレーズの連続は圧巻の一言だ。⑩「バグズ・グルーヴ」で渾身のベース・ソロを披露するパーシー・ヒースのプレイにも耳が吸いつくが、私が何よりも好きなのはテーマのメロディーに合わせてオーディエンスが手拍子するところ。 S&G の「バイ・バイ・ラヴ」でも感じたことだが、これこそライヴの醍醐味ではないか!何度も繰り返すが MJQ はライヴで最高に輝くジャズ・コンボなのだ。

↓再結成後の1982年ライヴ。ラスト・コンサート・ヴァージョンよりテンションが低いのはしゃあないか...(>_<)
"Softly as in a Morning Sunrise"Modern Jazz Quartet in London.