shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Jimmy Jones Trio

2018-01-14 | Jazz
 私にとっての2017年はビートルズ一色に染まった感があるが、当然ながらジャズや昭和歌謡といった他ジャンルの音楽も細々と聴いていた。正月ヒマだったので数えてみたところ、去年1年間に買ったアナログ盤のうちビートルズ関連が全体の70%以上を占めていたのに対し、ジャズはわずか10%にすぎなかったが、欲しい盤はほぼ買い尽くした感のあるジャズに関してはひたすら超大物盤狙いに徹し、先のヘレン・メリル盤のようにこれまで手が出なかったメガレア盤を1枚また1枚という感じで手に入れては喜んでいた。
 今回取り上げるジミー・ジョーンズという人はサラ・ヴォーンやアニタ・オデイ、ビヴァリー・ケニーといった女性ヴォーカリスト達の歌伴ピアニストとして知られているが、私が彼のプレイを初めて耳にしたのも前回取り上げたヘレン・メリル盤で、変幻自在なソロを聴かせるクリフォード・ブラウンのバックに回ってしっかりと引き立て役に徹するそのいぶし銀的なプレイを聴いて“この人、派手さはないけどめっちゃ巧いなぁ...”と感心したものだった。
 それからだいぶ経ってから、彼のリーダー作が1枚だけフランスのスウィング・レーベルから10インチ盤で出ているのを知ったのだが、色々調べてみると超のつくレア盤らしく、901さんの情報によると20万円(!)で取り引きされているというのだからディープなコレクターの世界は恐ろしい。20万円っていくら何でも盛り過ぎやろーって思った人がいるかもしれないが、ディスクユニオンのJazz Vintage Vinyl Want List Vol. 5 に載っている買い取り価格が8万円なので、実際に店頭に並ぶ時の値段(←買い取り額の3倍というのが相場らしい...)はだいたいそんなところだと思う。そういうワケで、このレコードに関してはオリジナル盤を手に入れようなどという大それた考えは微塵もなく、紙ジャケ復刻されたCDで十分満足していた。
 で、1ヶ月ほど前のことになるが、ビートルズのフランス盤をイーベイのフランス国内向けローカル・オークション・サイトである eBay.frで一通り調べ終わった後、 “フランス・ローカルなんやから、ひょっとするとインターナショナル・オークション・サイトに出てけぇへんようなフランス盤も出品されとるんちゃうか???” という素朴な疑問が浮かび、ほんの好奇心からデューク・ジョーダンのヴォーグ盤やらジョルジュ・アルヴァニタスのピリオド盤やらを検索して遊んでいた。
 その時ふと頭に浮かんだのがこのジミー・ジョーンズ・トリオである。どーせBMGビクターの日本盤しか出てけぇへんやろ... と思いながら検索してみると、案の定ビクター盤が我が物顔でバッコしていたのだが、有象無象の再発盤に混じって1枚だけ、いかにも年代モノという感じの風格を漂わせている薄汚れたレコードが出品されていた。ジャケットの上下左の縁はセロテープで補修されており、色合いも再発盤とは明らかに違う。何かめっちゃ本物っぽいけれど、VG++コンディションの盤がスタート価格€40で〆切があと1日というのに入札が無いなんてどう考えてもおかしい。不審に思ってこのレコードの再発歴を色々と調べてみたが、こんな超マイナー盤をアナログ復刻しているのは世界広しと言えども日本くらいのモンで、これが偽物である可能性は非常に低そうだ。“さては入札締め切り直前にビッドが集中して一気に €1,000超えとか十分あるな...(>_<)”などと考えながら迎えた〆切当日... しかし1時間を切ったというのに未だに入札ゼロだ。
 いつものように〆切10秒前からカウントダウンを開始し、“誰も来んなよ来んなよ...”と祈るような気持ちでスナイプしたところ、結局ライバルは1人も現れず、スタート価格の€40で落札。“来んなよ...” と言っておきながらいざ誰も来んかったら来んかったで “えっ? 何で誰も来ぇへんの? おかしいやん!” と不安になってくる。だから無競争落札に拍子抜けしながらも、稀少盤を超格安で買えた嬉しさが半分、ひょっとしてやっぱりニセモンちゃうんか???という疑いの念が半分というのが正直な気持ちで、レコードが届くまでの日々は仕事が手につかないぐらい不安だった。
 そんな私の気持ちが天に通じたのか、レコードはフランスからわずか6日で到着。はやる気持ちで梱包を解いてすぐに盤をチェックしたところ、センター・レーベルには50年代プレスの証しとも言うべきディープ・グルーヴ(DG)がちゃーんと刻まれている。おぉ、溝あるやんけ!と大コーフンしながらレコードに針を落とすと論より証拠、聞こえてきたのはまごうことなきオリジナル盤の生々しいサウンドで、A①「イージー・トゥ・ラヴ」なんかもうロイ・ヘインズの生々しいブラッシュの音にのけぞりそうになるし、腹にズシーンと響くジョー・ベンジャミンのベースもめっちゃ気持ちいい(^.^)  やっぱりピアノトリオはドラムとベースがスインギーに躍動するのが最高だ。そんなリズム隊に乗せられたのか、穏健派(?)のジミー・ジョーンズにしては珍しく時折り力強いブロックコードを織り交ぜながらコロコロと玉を転がすようなプレイで小気味よくスイングしており、例えるなら “ユンケルを飲んでパワーアップしたアーマッド・ジャマル”とでも言えばいいのか。この1曲だけで軽く元は取れたと言える、そんな名曲名演だ。
Easy to Love


 これに続くA②「リトル・ガール・ブルー」とA③「ラッシュ・ライフ」は原曲がスロー・バラッドということもあってカクテル・ピアニストっぽいプレイに終始しているが、B①「スクイーズ・ミー」ではロイ・ヘインズの瀟洒なブラッシュに乗ってこの人の真髄とでも言うべき歌心溢れるピアノ・プレイが楽しめる。しかし一番の聴き物はジョー・ベンジャミンのウォーキング・ベースだろう。極論を言えば、ピアノトリオはベース良ければすべて良しなのだ。
 B②「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」とB③「グッドモーニング・ハートエイク」の2曲はまたまたスロー・バラッドということであまり好みではないが、私としてはAB両面1曲目に配置された “軽やかにスイングする小粋なピアノトリオ・ジャズ” がオリジナル盤の轟音で聴けただけでもう大満足なのだ。
Jimmy Jones Trio - Just Squeeze Me

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