一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

東海の小島の磯の……

2013-05-19 17:03:12 | 読書


     先日、人を案内がてら七里ヶ浜から由比ヶ浜まで歩
     いたのだが、ちょっとの間にこんなにたくさん貝を
     拾った。
     (この日は休日で天気もよく、家族連れやカップル
      でにぎわっていた)

     砂は白く、ところどころに打ち寄せた貝がかたまって
     いる。中にはマッチ棒の先っぽ位の小さな巻貝もある。
     
     白砂といえば、これ。

      東海の小島の磯の白砂に
             われ泣きぬれて 蟹とたはむる
                         石川啄木

     啄木は1886年(明治19)岩手県生まれ。
     小学校時代は神童と呼ばれた。
     旧制中学のときに『明星』を愛読して、与謝野晶子の
     『みだれ髪』にのめりこむ。
     当時、晶子は鉄幹と結婚して全盛期であった。

     やがて文学に心酔するあまり学業が身に入らなくなった
     啄木は、学校を中退し、上京した。
     この頃であったろうか、与謝野家に出入りして、晶子か
     ら夫婦喧嘩の愚痴を聞かされたりしている。

     啄木は19歳で詩集を出すなど名声は上がったが、生活
     は苦しい。
     いったん帰郷して代用教員となり、堀合節子と結婚、
     生活の安定のために北海道に渡ったりする。

     再び上京して朝日新聞の校正係の職を得て、家族を呼
     びよせるが、妻と姑の仲がわるく、家庭はトラブル続
     き、啄木自身の生活も乱れた。

     『一握の砂』を出したのは24歳のときである。

       ふるさとの訛(なまり)なつかし停車場の
               人ごみのなかに そを聴きにゆく 

    
       たはむれに母を背負ひて そのあまり軽きに
                      三歩あゆまず

       はたらけどはたらけど猶(なお)わが生活(くらし)
               楽にならざり ぢっと手をみる

     1912年(明治45)肺結核で死去。29歳であった。

     明治に生まれ、明治に死んだ詩人。
     天才は早死にである。
     しかし、いまでも国語の教科書に出てくるように、
     啄木の歌はちっとも古くない。

     啄木死して、今年で101年になる。      

          
     

     
 

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