一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

天守と桜 その2

2009-03-27 14:01:37 | 歴史

     お城と桜はよく似合う。
     ここから電車一本で行けるせいか、小田原城には
     何度か足を運んだことがある。
     城郭を埋め尽くすような桜並木、樹齢〇百年といわ
     れる見事な藤棚、お堀に群がる太った鯉……申し訳
     程度に史跡をたずね、気がついたら干物や蒲鉾を手
     に……という物見遊山がほとんどだった。

     しかし、こんなのどかな花見が嘘のような戦乱期が
     あったのだ。
     戦国の梟雄(きょうゆう)といわれる北条早雲が伊豆に
     進出し、小田原城を奪ったのは明応4(1495)。
     (ただし早雲は韮山城を拠点としていたので、小田原城
     を根城としたのは二代目の氏綱から)。

     そのあと氏康、氏政、氏直と五代目まで甲斐の武田や
     越後の上杉、駿河の今川と死闘をつづけ、ときには
     「政略結婚」という懐柔策に出て城を守った。
     なかで見事というべきなのは、北条家に身内同士の
     争いや紛争がなかったこと。
     血の気の多い兄弟が多かったにも関わらず、常に
     当主を立てて、一致団結した。
     それが戦国時代100年を守り抜いた大きな要因
     でもあろう。

     しかし、こんな結束も時代の変化にはついていけ
     なかった。
     秀吉の全国統一がはじまったのだ。
     九州を平定した秀吉は、残すは関東と奥羽(伊達)と
     ばかりに兵を出した。
     当時、五代目・氏直は伊達(だて)と同盟を結び、
     家康の娘を妻にしていたから安心もしていた。
     だが伊達は秀吉に屈し、時勢をよんだ家康も秀吉側に
     ついてしまった。
 
     かくして小田原城は秀吉の手によって落城し、ここに
     戦国時代は終わりを告げた。
     天正18(1590)年のことだ。
     (氏直の妻・督姫は家康のところにもどされ、のちに
     姫路の池田氏に嫁いでいる)。

     春うらら、のどかな光景のなかにいると、こんな生臭い
     ことがあったことなどおよそ信じられない。
     今年も花見客でにぎわうだろう。
     (小田原北条は鎌倉北条とは関係ありません)
     

     


     
     

天守と桜 その1

2009-03-20 17:48:51 | 歴史
     昨日の強風から今朝方にかけての大雨が一転して
     ぽかぽか陽気に。
     関東地方の桜も今日明日には開花しそうだ。

     桜といえば「醍醐の花見」
     慶長3年3月15日(旧暦)、秀吉が家臣や女
     たちを集めて花宴をひらいた。
     そのためにお寺を改造し、茶室を建て、沿道に
     豪華な幔幕をたらして飾りたてるという贅のつくし
     ようだ。
     侍女の数だけでも1300人もいたという。
 
     トップはもちろん、正室である北の政所のねね。
     それと張り合うのが秀頼を生んだ側室の淀。
     前田利家の妻のまつもいた。
     こともあろうに、花見の座をめぐって女たちが
     火花をちらした。

     秀吉が死ぬ半年前のことで、文字通り、秀吉
     最後の狂乱だ。
     その死から2年後、「関ヶ原の戦い」で東軍の
     徳川家康(ねね側)が、西軍の石田三成(淀側)
     に勝った。
     やがて「大阪冬の陣」「夏の陣」とすすみ、
     淀と秀頼母子が自刃するのはご存知のとおりである。 

     このように桜は歴史の節目や転換期に登場する
     ことが多い。
     おだやかに団子をたべ、酒をのむ、のどかな光景
     ばかりとは限らないのだ。

     写真は小田原城の天守閣と桜。
     この小田原城は「醍醐の花見」の10年前に秀吉
     によって攻められ、落城している。
     このことは次回にでも。

     

     
     
     

タンポポ(蒲公英)

2009-03-14 14:18:05 | 季節
 


     啓蟄もとうに過ぎた今頃は
     「菜虫化蝶(なむしちょうとけす)」
     というのだそうだ。
     つまり青虫が蝶と化す候ということ。

     こちらは青息吐息している間に足元はすっかり
     早春の装いを呈しており、今年は地面から感じる
     春となった。

     このタンポポ、在来種の日本タンポポは消えて、
     いまや、ほとんどが帰化した西洋タンポポだという。
     見分け方、花のしたの萼片が反り返っているのが
     日本タンポポらしいが、実際に区別できたことは
     ない。

     ありふれていて、さほど意識もされない花。
     それでも花が終わって、風のふくまま気のむくまま
     落下傘のように飛んでゆく種子には、なぜかハッと
     して、詩情をそそられるものがある。

     そこで新聞で見つけた句を。

       たんぽぽの ぽぽのあたりが火事ですよ
                    坪内 稔典  

       若くない美人でもない たんぽぽ黄
                    近藤 千雅(ちが)
   





     

世界一短いラブレター

2009-03-06 07:40:19 | 季節
    「世界一短いラブレター」
    どこかで聞いたことのあるようなキャッチフレーズだが、
    良寛さんの「天寒自愛」はまさにそれであろう。

     天寒し、自愛せよ

    良寛さんが幼馴染の維聲尼(いきょうに)に送った詩の
    ような手紙の一節。
    (晩年の恋、貞心尼宛てではない)
    友人によると、大蔵経購入のために江戸に旅立つ尼に
    書いたものであるという。
    (一衣一鉢しか残さず、雲や流れる水をたのみとして
    生きた放下(ほうげ)の僧である良寛さんのことは
    ご存知の通り)

    ここからは下世話なはなし。    
    暖冬で花粉が舞うのが早いと思ったら、先日は雪、
    季節の変わり目は要注意だが、これは季節だけのこと
    ではなさそうだ。

    ここまできてはたと気づいた。
    私の場合は「自戒せよ」ではないか。
    いろいろ私的用事が重なって、肉体は疲労の極みに。
    精神的にもバランスを崩してまさに「自戒せよ」である。
    しばらくはこの言葉を呪文のようにとなえることにしよう。
     自戒せよ。
    
     ★これを見た友人から「自戒はいいけど自壊せぬように」
      というメールが届いた。
      まさに自壊寸前!