一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

台風一過の朝日

2013-10-28 14:21:35 | 自然


     朝の早起きしか取り柄のなかった私だが、
     ほぼ2カ月以上、風邪をひいて以来、
     体調がすぐれず、起きることができな
     かった。

     詳しくいうと、朝4時頃一度は目が覚め
     るのだが、またとろとろと眠ってしまう
     のである。

     いくらでも眠れる。
     これはおかしい。
     風邪薬やアレルギー性を抑える薬など
     飲んでいるせいかな。

     そう思って、なるべく気にしないように
     していたのだが、
     それにしても、これじゃまるで眠れる
     豚じゃないか。

     それにしても、夏の朝日の出る時間を
     むざむざ無駄にするなんて!
     とおもいながら、季節は完全に秋へ。
     でも起きられないのだから仕方がない。
     

     そして台風が去った翌日、やっとその
     瞬間を久しぶりに目にすることができた。


     夜から朝へバトンタッチする一瞬、
     時間にするとほんの1~2分なのだが、
     それは息をのむような瞬間なのだ。

 
      金子みすずの詩に、
        朝焼け 小焼け 大漁だ
     というのがあったが(「大漁」)
     思わず、そのフレーズを口にしている。

     この一瞬に立ちあうと、その日は得を
     した気がする。

     日が昇ってしまえば、いつもと同じ、
     (昨日と少しも変わらない)
     一日がはじまるのだが。


     ※ 久しぶりに部屋の窓から見た朝日
     

やなせたかしさんの死

2013-10-24 10:53:06 | 雑記


     アンパンマン生みの親のやなせたかし
     さんが先日、94歳で亡くなった。

     ご本人によると、
     アンパンマンは「世界最弱のヒーロー」
     で、空を飛び回り、自分の顔をちぎって
     ひもじい人に分けるのだそうだ。
     どうやら、戦争の体験、ひもじさなど
     が背景にあるらしい。

     さだめしアンパンマンは正義の味方、
     スーパーマンなのだろう。

     新聞には、
     この深さが幼子の心に素直に感応する。
     大人は首をかしげ、幼子は夢中になる、
     とあったが、
     全くその通り。

     わが家のチビも大のアンパンマン好き。
     写真のようなものから
     (これはボタンを押すとダンスをしたり
      手をたたいたりする)
     DVDを入れると30個近くもアンパン
     マン・グッズがあろうか。

     他にアンパンマン類の本……どれもこれも
     幼子にとっては超ヒット商品なのだ。
     なぜ、それほどまでに彼らの心を惹くのか、
     毎日眺めていても分からない。
     もっとも最近はやや、バイキンマンが好き
     になったようだが。

     かくいう私もやなせさんの
     ”手のひらを太陽に”の歌は大好き。

      ♪ぼくらはみんな 生きている
       生きているから 歌うんだ
       ---------
       生きているから 悲しいんだ
       手のひらを太陽に
       ---------♪

     みなさん御存じの歌。
     いい歌だと思う。

     どこか金子みすずの詩に似たような素直さ
     がある。
     人間の生を根本から肯定するような。

     合掌。     

     

     

木を一本、一本、植えるように

2013-10-20 07:58:19 | 読書


     秋も深まって、あちこちで文化祭花盛
     り。
     
     私も出かけたついでに近くの地区センタ
     ーなどで行われている催し物をのぞくこ
     とがある。

     先日はいつも行く図書館の隣の会館で
     ちょうど催しをやっていたので覗いて
     みた。

     油絵、墨絵、仏像彫り、手芸クラブと
     いったグループの作品が並んでいた。
     即売会ともなっている手芸品をみると
     よく出来ていて、洗面所に敷くマット
     と、手編みの(太い毛糸で編んだ)
     タワシ(?)を3つも買ってしまった。

     マットはタオル地を編み込んだ大判の
     やつで、配色もよく、洗濯も効くので
     気にいって使っている。

     それともう一つ、盆栽コーナーを覗く
     と、ここは一つの世界が出来ているの
     だった。

     よく、盆栽の趣味は最後といわれるけ 
     ど、どうだろう。
     私はとても近づく気はしないけど、
     小さな鉢が創りだすものには、
     幽玄の世界が広がるような気がして、
     見るのは決して嫌いではない。

     多分、これにハマり込んだら抜けられ
     られないだろうなと思いつつ、
     ごくごく庶民的な草花コーナーに戻っ
     た。

     そういえば、前回から続く山崎豊子さん
     はこういっていたそうだ。
     「私は盆栽作りのような枝ぶりの良い
      小説は書けそうもない。
      はげ山に木を一本、一本、植林して
      いくような”植林小説”を書いて
      いきたい」

     これは壮大で、かつ緻密な小説を書く
     山崎さんならではの至言といっていい
     であろう。

    
     ※ 写真は盆栽コーナーの即売会で
       買った「十文字草」の鉢植
       鉢代にもならないような安さ
       だった。

     
     

長江哀歌(エレジー)

2013-10-15 17:23:26 | 芸術


     亡くなった山崎豊子さんの骨太い小説のこと
     を考えていたら、いつかみた中国の「長江
     哀歌」という映画を思い出した。

     2006年ベネチア国際映画祭でグランプリ
     を獲った作品。
     ダム建設により水没する古都の人々を描いた
     人間ドラマだ。

     長江・三峡。
     炭鉱夫の男は16年ぶりに故郷に帰ってきた。
     だが街は三峡ダムの水底に沈み、知った人は
     誰もいない。
     男は古い建物の解体作業をしながら、妻子を
     探しはじめる。

     一方、三峡を悲しみの目で眺める女性がいた。
     その名はシェン・ホン。彼女は三峡の工場に
     働きに出て2年間音信普通の夫を探しに山西省
     からやってきたのだ。

     いつくかのつてを頼りに探し訪ねると、夫は
     ある女性と親しくなっていた。
     シェン・ホンは好きな人ができたから離婚して
     欲しいと嘘をついて一人で帰る。

     さて、炭鉱夫の男は妻と再会できたが、妻は
     兄の借金3万元をかたに取られ、逃げように
     も逃げられないでいた。
     
     炭鉱夫はそのお金をつくるために炭鉱にもど
     ることを決意して港に向かう。
     そのシーンで映画は終わる。

     どこにでもあるようなドラマだが、長江とい
     う背景が壮大で、三峡で働く労働者は荒っぽ
     い反面、非常に情にもろく、人間的で面白い。

     このドラマティックでスケールの大きさは、
     山崎豊子さんの描く小説につながるとも
     思った。

     

     

山崎豊子さん、逝く

2013-10-13 07:18:23 | 読書


     社会性のあるテーマを大きく取りあげた作家
     の山崎豊子さんが9月29日亡くなった。
     享年88歳。

     「白い巨塔」「華麗なる一族」など巨大なる
     権威、金がらみの闇を暴露し、ドラマ界にも  
     たえず爆風を送りつづけたベストセラー作家
     でもある。

     「沈まぬ太陽」「大地の子」「不毛地帯」
     といった本を読むたび、私はその骨太さ、
     スケールの大きさに圧倒された。

     「小説」は文字どおり「小さな説」なのだが、
     山崎さんの著書はどれも「大説」なのでは
     ないかと思った。
     といっても決して高所からの大説を述べるの
     ではなく、あくまでも人間を描いている。

     「取材が命」といわれるくらい、その取材
     ぶりは鬼かと思うほどだったらしい。
     相手が適当にあしらう素振りなど見せたら
     「私をそこらの作家と一緒にしないでくだ
     さい! もう結構です!」
     と自ら蹴って出てしまうほどだったという
     からすごい。

     「私の作品は、万年筆の先から血がしたたる
     思いで書いている」と語っていた山崎さん。

     さいごまで執筆の意欲はなくならず、
     原稿用紙にペンを走らせながら棺桶に入る
     のではないかと思わせたとおり、
     週刊誌に連載半ばで逝かれた。

     合掌。
     

ドキッとする感覚

2013-10-09 15:14:06 | 季節



     先日、所用があって鎌倉の街を歩いていた
     ら、金木犀がどこからともなく匂ってきて
     ドキッとした。

     
     このタイトルではすでに何回か書いている
     はずなのに、それでも毎回ドキッとするの
     だから我ながら笑ってしまう。

     多分、目に入る前に匂いだけが不意にやって
     くるからだろう。
     (この匂いの元は)どこ、どこ?と思わず
     あたりを探してしまう行動も滑稽である。

     この強烈な匂いは一瞬にして子供の頃を
     思い出させる。
     生家には樹齢百年にもなろうかと思われる
     金木犀があった。


     植木屋が毎年入って、松を2~3日かけて
     仕上げた後、金木犀に取りかかる。
     こんもりと大きなお椀を伏せたような型に
     作りあげて、煙草を吸って一服している姿、
     そんな光景までありありと思い出される。

     
     おそらく私がドキッとするのは、こうした
     幼い頃の原風景といったものがあるからだ
     ろう。


     私はこの感覚をあいまいな感覚でしか表現
     できないのだが、
     山田詠美の短編集『放課後の音符』の中に
     金木犀を、
     「甘くて歯が痛くなりそう」
     という一節がある。

     ※ 円覚寺の境内奥のやぐら
       ここにも金木犀の匂いが充満していた。
 

     
     

今年もあと○○日

2013-10-05 19:34:00 | 雑記


     「今年もあと○○日」といった言い方を
     する。
     (正確には明日で残すところ87日)
     云われるとドキッとする。

     自分でも分かっていて、あえて考えない
    (数えない)ようにしているからだ。

     しかし、ある人に言わせると、
     もし時間が経つのが遅いと感じるとしたら、
     それは不幸なときだというのである。

     ふ~ん、確かにそうかもしれない。
     多少幸せを感じるとき、楽しいときって、
     時間はあっという間に過ぎるものね。

     こんな仕様もないことを考えているのは、
     心身が本調子でない証拠。
     風邪っ気が抜けないというのか、
     本来の怠けクセなのか、
     栄養が足りないのか、
     (食べているのだから体というより、
      心の栄養)

     今風にいうと、
     モチベーションが上がらない、というの
     だろう。
     気合いが入らない。

     かくして、だらだらと無為な時間を費やす
     のみ。
     それなのに、時間の経過だけは速い。

     ※写真は宮城県名取市の被災地のみなさん、
      「お茶っこinなとり」の作品
       ドレスタオル
       83歳の女性の作品だそうです。
      最初見たとき、赤ちゃんの洋服?と勘違い
      した。(実際1~2歳の女児用位の大きさ
       で、襟にレースがついている)    
      1枚のタオルで作ってある。
      
    

鬼の霍乱

2013-10-01 17:15:08 | 健康


     鬼の霍乱か、先週から体調がすぐれず
     医者にいったら風邪だといわれ、薬を
     いっぱいもらってきた。

     喉の痛みから声が出なくなった。
     おまけに体がだるくて、何をする意欲
     もない。

     こういったひどい風邪をこのところ1年
     に1回はひいている。
     たいてい年末の押し迫った時期だった。
     (年末最終日に病院にいくと、もっと
      早くに来なくちゃと医者に叱られた)

     それが11月になり、いつしか10月に。
     今年は気がついたら9月末にやってしまった。
     年々、周期が早まるということはそれだけ
     身体が軟弱に、免疫力が失(な)くなった
     ということなのだろう。

     何種かの薬を飲んでウトウトしていると、
     夢を見る。
     どうでもいい夢は起きたら忘れるのに、
     遅刻しそうになったり失敗した夢はいつま
     でも覚えているのは何故だろう。
     そのためか、どっと疲れる。

     仕方がないから起きて新聞をみる。
     前々回、このブログで葬式の話を書いたが、
     さっき来た夕刊に、
     「GPS付き宇宙葬」が日本でも始まった
     という記事があった。

     1㌘の遺灰をカプセルに納めて打ち上げる
     のだそうだ。
     「あの流れ星がおじいちゃんよ」も夢では
     ないとあったが……。

     わが家の近くの林が今日、通ったら、きれ
     いに刈り込んであって、
     バオバブの木に似たのがあった。
     (これまで鬱蒼として気づかなかった)

     バオバブといえばサン・テグジュぺリの
     『星の王子さま』だ。
     そのなかで、こんなことをいっている。

   
     「心で見なくちゃ、物事はよく見えない、
      ってことさ。かんじんなことは目には
      見えないんだよ」

     いずれにせよ、しばらくわが家は静かだ。
     お喋りの私が声が出ないからだ。 
     

       ※ 写真は家の近くの林にある、
             私がバオバブと名付けた木