しかし、
次第に画家への道をあきらめ、
田舎教師に甘んじる夫に久女は失望。
たまたま出会った俳句に没頭します。
「足袋つぐや ノラともならず 教師妻」
ノラはイプセンの『人形の家』のヒロインですね。
自立に目覚めたノラとちがい、
家出もせずに せっせと家庭を守る久女。
「花衣ぬぐや まつわる 紐いろいろ」
これには日常にあきたらない、女としての
苦悩、煩悶、怨念……が籠められていますね~。
最初こそ、虚子にホメられ、
女流俳句界をけん引するほどの久女でしたが、
突如『ホトトギス』を除名処分に。
理由は明らかにされていません。
それでも久女は、
句集を出すことを唯一の希望として
歯を食いしばります。
しかし、
どう懇願しても、虚子は序文を書くことを黙殺。
当時、師匠の推薦なしに女性が本を出すことなど、
考えられません。
戦中、戦後の混乱のなかで、
久女は精神病棟で死去。
「狂死」ともいわれています。
(死後、娘さんによって「久女句集」が刊行されました)