一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

覚書き

2014-01-28 16:15:47 | 読書


    「覚書き」とは広辞苑によると、
    「必要な事柄を忘れないように書き留
     めたメモ。評論や論文など……」
    とある。

    昨秋、『清水紫琴 幻の女流作家がいた』
    を出版して2カ月ほど経った頃だったか、
    出版社を通して紫琴の孫の古在由秀さん
    からお手紙を頂戴した。

    孫といっても古在さんは高名な天文学者
    で、今年85歳になられる。
    (ここまでは以前にも書いた)

    不覚にも私は存じあげなかったのだが、
    古在さんは「コザイの方式」「古在共鳴」
    など、天体力学では知らない人のいない、
    世界的にも有名な方だったのである。

    古在さんは私の質問に応え、
    親戚の方に当たって古い資料を探して
    送って下さった。
    また紫琴関係の資料が藤沢市の大庭図書
    館にあることも分かった。
    実際に図書館に出向くと膨大な資料で、
    気が遠くなりそうだったが、
    なんとか精査することができた。

    驚いたことに、資料には、
    明治22、23年の船積みの荷札が
    含まれていたのである。
    そのことから、これまで不明とされてい
    た、紫琴の最初の結婚相手の名前が判明
    した。
    (紫琴は今風にいうとバツ一である)

    
    またこれまでのどの本にも載っていない
    紫琴の明治女学校教師時代の写真もあった。
    他にも生原稿や、住所録(和紙)、
    料理メモなどもあり、
    とても100年以上も前の人とは思えない
    懐かしさと温もりの感じられる資料ばかり
    であった。


    これを私だけの記憶に留めて置いてはいけ
    ない。
    何とか後世の読者や研究者に知らせたい。


    その思いで、要点をまとめて「覚書き」と
    して小冊子にまとめました。
    
    もしご興味のある方は著者にご一報いた
    だければ幸いです。
    
    
    

    


かぐや姫の物語

2014-01-23 14:50:19 | 芸術


     1月に入ってジブリ作品「かぐや姫の物語」
     の映画をみた。

     ゆるやかな音楽とわらべ歌ではじまったが、
     最初から「姫の犯した罪と罰」という副題
     が気になった。

     ある日、翁は竹を取りにいって光る竹から
     愛らしい赤ん坊を見つけた。
     抱いて帰ると、媼も大喜び。
     「でもどうやって育てるの」
     あらら不思議、もう年寄りの部類に入る媼
     の胸がウ、ウ、ウとうずき乳が出始めた。
    (一説には乳母を見つけたという説もあるが)

     かぐや姫はたった3ヵ月で美しい娘に成長
     した。
     その間、翁が竹やぶにいくたびに小判が
     ざっくざっく入り、いちやく金持ちになっ
     た一家は都に引越すことに。

     すると娘の噂を聞きつけた男どもが次々と
     現れ、いずれも吾こそは娘の婿にふさわし
     いと求婚をはじめた。

     嫁になどなる気のないかぐや姫は5人の男
     に無理難題を吹きかける。
     ここらあたりはご承知だと思うので省くが、
     なんと男たちは娘に提示された無理難題を
     手にするために一人残らず死んでしまう。

     「姫の犯した罪」とは何か。
     欲望をむき出しにした男たちを死にやった
     ことだろうか。
     そうではあるまい。

     もう一つ、帝から求婚されていたのです。
     入内すれば翁(父)も官位を受けるという
     もので、これを拒めばどういうことになる
     でしょう。

     姫は憂鬱でした。
     あかるい秋の夜、もろもろの思いに心囚わ
     れ、ぼんやり縁先に立ち……。
     姫は何年というものほとんど外出していま
     せんでした。家の外には美しい姫を一目
     見ようとする輩がうろついているからです。

     あまりの気持ちのよさに垣根の萩の花に
     ふらふらと近づいたところで、
     姫はふと袂をとらえられ、抱きすくめ
     られていました。
     
     目の前には人の顔、それも男の顔が迫って
     いた。思わず片手で顔を蔽いましたが、
     そのときはじめて、自分の胸がはげしく
     高鳴っているのに気づいたのです。

     
     その場は目をつむって消えうせるという術
     をつかって難なく逃げおおせたのですが、
     そう、姫の「罪」とは男女の性愛を(意識
     だけでも)知ったことでしょう。

     かぐや姫は悟りました。
     こんどの満月の晩に月に帰らなければなら
     ないことを。

     思えば、地上にあった20年ちかい年月の
     うち、翁、媼とともに幸せだったのは、
     最初の3ヵ月にすぎません。
     成人したとたん受難がはじまりました。
     
     かぐや姫はこの世の富や欲望、男女の性愛
     といった問題に直面するために人間界に
     堕されたにちがいありません。
     これこそ、姫の「罰」というのでしょう。

     最後のシーン、月から迎えにきて涙を流す
     姫。使者のもってきた羽衣をかければ
     姫の地上での記憶も失くなってしまうので
     す。

     音楽とゆったりしたわらべ歌がながれ、
     このシーンでは涙が出ました。
     観てすぐよりもしばらく経ってからいろ
     いろ考えさせられるアニメ映画です。
     
     

     

人間の能力

2014-01-18 17:45:57 | 雑記


     風邪がひどくなって(声が出ない、咳、喉
     の痛み)で病院にいったり、市販薬を飲ん
     だりの10日間。
     どうしても避けられない用事は出かけるが、
     後はほとんど寝てすごした。

     半起き、半寝の自堕落な生活で衝撃をうけ
     たのは、ジャングルから生還した小野田
     寛郎さん死去のニュース。
     91歳だった。

     小野田さんはフィリピン・ルバング島の
     ジャングルで29年間潜伏し、日本の
     冒険家によって発見された。

     はじめは終戦や日本の復興を信じなかった
     が、ついに1974年(昭和49)3月、
     元上官の任務解除命令をうけ、山を下りて
     帰国した。

     その後のことはニュースなどで報じされて
     いるので省くが、
     小野田さんのいった言葉で、人間は極限ま
     で追いつめられるとこういう状態になるの
     かと、これまた衝撃をうけたことを記す。

     「諜報(ちょうほう)要員だったので、
     万が一捕虜になったときのことを考えて、
     一切メモは取らない。すべて頭に記憶して
     おく習慣がついた。
     情報を積み重ねて次の作戦行動を組み立て
     る。情報は命にかかわる」

     「自分が極限状態に至ったとき、10㌔先
     の敵の動きや、わずかな葉の動きまで見え
     るようになった。
     10㌔先が見えるので銃弾を避けることが
     できた」

     これはもう、人間の域を超越してむしろ
     本能というか、動物的カンに近いような
     気がする。
     もはや、そうなったら現代人が日々切磋
     琢磨している人間的能力なんて何の役に
     も立たないのだろう。


     ※ 写真は小野田さんがほぼ30年近く
      も潜伏していたシャングル
      (出典:asisbiz.com)

      
     
     

     
     
     

フィジカルエリート

2014-01-12 19:40:38 | 健康


      最近、知ったのだが、
      ある一定の年齢以上で健康な人を
      をフィジカルエリートというのだ
      そうです。

      概(おおむ)ね女性だと85歳以上。
      男性は80歳以上。

      確かにこの年齢で健康であれば、
      もう立派なエリートといって良い
      でしょう。

      ところが病気を持っていても、
      その対処によってエリートになれる
      ことが分かった。

      昨日、都内のホテルで開かれた、ある
      会合でのこと。

     ①仙台から出てこられたK夫妻。
      夫88歳、妻84歳。
      そもそも東京で事業をしておられたの
      だが、70歳で大病をされて、通院に
      便利な故郷の仙台に帰った。
      (右足の病気と糖尿と脳梗塞)

      現在は通院はしているものの、週一回
      の水泳と水中ウォーキング、そして
      食事療法で病気を手なずけている様子。

      ご主人の顔つやもよく、終始ニコニコ
      して人と接しておられるのが好印象を
      持たせる。

      俳句が趣味といわれる奥さんに
      「食事の管理が大変でしょう」
      というと、奥さんは
      「もう20年近くやっているので塩分
       も、カロリーもだいたいカンで分かり
       ます」
      と事もなげにいわれた。

      
      夫が妻の作った料理に全幅の信頼をおい
      ているだけでなく、
      夫の方も好奇心がつよく、いろいろ研究
      して、それが相乗効果を招いて好結果に
      つながっているのだと思った。

      ②Mさんはある新聞広告の元社長で、
      現在は定年退職して、自分で経営コンサル
      タントをしておられる人。76歳。

      もちろんITをこなし、英語、仏語、独語
      を使って、世界中に発信している。
      困ったことは年々寝る時間が減ること。
      今は24時間ひっきりなしに情報が入り、
      夜中に入ったものを明日起きてからと思う
      と、相手によっては2日遅れになってしま
      うので、つい無理してしまうらしい。


      ③Hさんは人工透析をしているので週3日は
      病院にくぎ付けになる。
      土日は解放されるのでコンサートや美術館
      巡りを楽しむ。
      郡山から東京のみならず、奈良、京都まで、
      この行動力は驚くほどだ。

      
      ④他にも震災以降、耐震検査の依頼が殺到し
      て忙しい建築家。
      団体には入らないが、一人黙々とボランテ
      ィアに励むOさん等々。


      政府区分によれば後期(または中期)高齢者
      ばかりだが、精神的には決して老いていない。
      溌剌と日常の仕事や趣味に取り組んでいる。

      無病息災というけれど、一病、人によって
      は二病、三病でも積極的に病と向き合い、
      決して根治しない病気も上手くコントロール
      して明るく生きられることを証明してくれた。


      一方の私はヒドイ風邪をひいて、
      昨日無理して出かけたせいか、今日は声が出なく
      なった。
      これじゃフィジカルエリートどころか、
      中期高齢者(正式な言葉ではないが)になる
      のも無理かもしれない。

      

脱・男目線 今年は……

2014-01-08 14:25:01 | 行事


      このところ、
      新年早々は賑やかな所は避けて、むしろ
      ひっそりした神社仏閣を訪れるようにし
      ている。
      ところが今年は4日に来客があって、
      客が鎌倉の八幡宮に行ってみたいと
      いうので案内することに。

      あまり混んでいたら別な所にいくつもり
      だったが、混んではいるものの一応流れ
      ている。
      後ろに並んでいたらそれなりに進んで
      20分ほどで、本殿にいたる階段下まで。
  
      階段の下では危険防止のために、一定の
      人数がロープで区切られるので整然と
      進んだ。

      (写真は目の前で区切られ、パチリ)

      善男善女の真剣にお参りする姿。
      私もそれに混じって、心身の健康(ボケ
      ないよう)祈った。


      さて、今年はどんな年になるのだろう。

      昨日の新聞によると、
      三省堂の国語辞典(通称三国)が6年
      ぶりに改訂された。

     「てか(っていうか)」「朝ドラ」「鉄
      ちゃん」「よさこい」「ガチ(本気)」
      などが新しく加わり、その中に
     「ほうれい線」が入っているので笑って
      しまった。
     (「ほうれい線」はCMなどで毎日聞いて
      いるのでとっくに入っていると……)

      更に用例が大きく変わった。

      例えば、
      「世にも」といえば、「世にもまれな美人」
      であった。
      →「世にも不思議な物語」に改訂

      他に消えたもの
     「黒目がちな美人」「すごい美人だ」
     「すこぶる付きの美人」など
      計7例が消えた。

      概して
      「三国(みくに)から7美人が消えた」
      というのだそうだ。

      つまり古めかしく感じられたり、昔の
      男性目線で書かれたものが消えたと
      いうわけ。

      なるほど、
       言葉(歌)は世につれ
       世は言葉(歌)につれ
      ということですか。

      

      
      

生きた正身(しょうみ)

2014-01-05 21:01:52 | 雑記


      これでまあ
      七十年生きてきたわけやけど
      ほんまに
      生きたちゅう正身のとこは
      十年ぐらいなもんやろか
      いやあ
      とてもそんだけはないやろなあ
      七年ぐらいなもんやろか
      七年もないやろなあ
      五年ぐらいとちがうか
      五年の正身……
      ふん
      それも心細いなあ  
      ぎりぎりしぼって
      正身のとこ
      三年……

      底の底の方で
      正身が呻(うめ)いた

  
      ーーそんなに削るな

          天野忠詩集『私有地』より

     新年にあたり、この詩は心に響いた。
     過ぎた年月の多くを無駄にしてきた
     わが身としては。

     今年もまた、正身の乏しい時間の経過
     をやり過ごすことになるのではないだ
     ろうか。

     ※ 愛嬌のあるエイの顔(?)

何となく~

2014-01-03 18:46:36 | 雑記


     2014年が明けた。
     今年もよろしくお願いします。
     新年にあたって殊更大きく誓うこともな
     いが、年々衰える体力と、(あるともい
     えない)知力の減退を少しでもゆるやか
     にいって欲しい、と願うのみ。

     そこで石川啄木の句を。

     「何となく 今年はよい事あるごとし
           元旦の朝 晴れて風なし」

     このとき啄木は病が進行し、朝日新聞社
     への出社も途絶えがちだった。
     これまでの辛酸を振り切りたい気持だ
     ったろうか。

     「正月の4日となりて あの人の
           年に一度の葉書も来にけり」

     函館の小学校の元同僚の教師・橘智恵子
     から葉書がきた。「一握の砂」に対する
     お礼と、前年結婚したことが書いてあっ
     て、啄木は大きな驚きと失望をいだく。

     「何となく 明日はよき事あるごとく
            思ふ心を 叱りて眠る」

     1月8日に東京朝日新聞に載った句。
     よき事のあるのを願って打ち消す。
     厳しい現状から逃れられない。
     事実、2月初めには慢性腹膜炎のため、
     医科大に入院となった。

   
     啄木はわずか26歳で亡くなっている。
     この早熟、この早世。
     天才は早死になのですねえ。


     ※ 写真は暮れに行った江の島水族館の
       大水槽。
       ダイバーの右横はサメ。