吉本隆明が3月に他界して2カ月半。その人と仕事
をしのぶ動きが絶えないようだ。
そんななか、沖縄在住の比嘉加津夫が自らの雑誌
「Myaku」で追悼号を出し、日経新聞の「文化欄」
でも取りあげられた。(2012・5・12)
吉本のことをほとんど知らない私も、谷川雁のつな
がりで短文を書かせていただいたのだが、
他にもたくさんの方が彼をしのぶ辞を述べていて、
あらためて吉本隆明とは何だったろうと思う。
比嘉のことばを借りれば、
「流れに沿うのではなく、流れに疑問をもち、
ひとりで立っていくという姿勢」
なのだという。
そして氏は吉本にも死がやってきたことに対して、
「だから、さらに輝きを増していくのだ」といって
次の詩をあげている。
ぼくの孤独はほとんど極限に耐えられる
ぼくの肉体はほとんど過酷に耐えられる
ぼくがたふれたらひとつの直接性がたふれる
もたれあうことをきらった反抗がたふれる
ぼくがたふれたら同胞はぼくの屍体を
湿った忍従の穴へ埋めるにきまっている
ぼくがたふれたら収奪者は勢いをもりかえす
だから ちいさなやさしい群よ
みんなひとつひとつの貌よ
さやうなら
(「ちいさな群への挨拶」)
吉本隆明入門編の私にも、この詩は分かりやすく、
さいごの3行がすーっと入ってくる。