この間、所用で東京に出かけ、地下鉄に乗ったは
いいが、どうやら出口を間違えたらしく、
国会図書館前に出てしまった。
一瞬、何がなんだか分からなくなり、(私はこん
な失敗が多くて時間の無駄使いばかりする)
あることを思い出した。
それは武田百合子さんの「行くと怖い」という話。
国会図書館では、入る順番を待つときの並び方、
貸出申請書の書きいれ方、本の受け渡し、コピーの
時間、申し込み等々、そのいちいちを注意され、
聞き直すと面倒くさそうな顔をされる。
こんな経験をされた人は多いであろう。
(私も共感!)
ある日、百合子さんが目撃した話だが、概略を引用
することにしよう。
「75~6の(初めて国会図書館に来たらしい)
老人が、ああでもない、こうでもないと何度もやり
直しをさせられている。
その男性はついに堪忍袋の緒が切れてしまった
ようで、体を震わせ、口角に泡をためて、叫んだ。
『もう我慢できない、こういう権力をカサにきた放
漫無礼な態度を許しておいちゃいけないんだ!!』」
その通り。
同調した百合子さんも(館員に)こう怒鳴りたかった。
『そうだ。やたらと威張るな。口をあけて、はっきり
ものをいえ。ものを教えろ』
しかし睡眠不足の顔に口紅も差さずに出かけてきた
ことに気づいた百合子さんは、ふと弱気になり、うつ
むいてしまう。
そして、こう結んでいる。
「口紅を差すと元気が出るのだ。口論になりそうな場所
へ出かけなくてくてはならないときは勿論、交番や警察
署、税務署にいくときも、字を書くときも、口紅差して
からだ」
『日々雑記』より
これを読んたとき、私も多いに笑い、そうだ、そうだと
うなづいていました。
念のため補足するが、現在の国会図書館は改善され
て、非常に親切になっています。