一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

新制作展 6

2009-10-31 12:56:29 | 芸術

     「風弱く霧雨」 渡辺久子 絵

    10月も終わろうというのに、まだ続いている
    展覧会の話。
    この絵の季節は春か、秋か。
    「霞」ではなく「霧雨」というからには秋で
    あろうか。
    そういえば、小春日和の晩秋の日と重なって
    みえなくもない。
    (タイトルに霧雨とついているのに)
    
    お天気がよくて健康状態も決して悪くはないのに
    物憂い気持ち。
    精神のどこかが病んでけだるい。
    用事があって出かければ、それなりに充実して
    帰ってくるのに、満たされない、わが放漫な心!
    ささいなことにこだわって先に進めない脆弱な
    神経!!

    カーテン越しに見る街路樹はすでに黄色がかって
    樹木の葉は落ちているのもある。
    陽光はまぶしい。
    カレンダーだけがこちらの気持ちにお構いなく、
    どんどん疾走してゆく。
    今頃の季節に毎年味わう、私の気持ちを代弁
    しているような絵。


    

新制作展 5

2009-10-22 18:11:47 | 芸術



     キッチンの詩 竹本義子 作

    このシリーズは昨年もあったのでみた途端、
    「あッ、この絵!」と思った。
    自由でのびのびとした絵で、昨年のはこの何やら
    お調子者そうなお母さんがピザの生地をのばして
    いる光景だった。

    今年はタコ!!
    何じゃこれは、と思いながら実に楽しい。
    この子供のあんまり可愛くない、悪ガキそうな
    のもいい。

    そして、設定がキッチンなら、素材は数限りなく
    あるだろう、と思った。
    魚介類だけでもイカあり、カニあり、貝や魚の
    種類だって面白くて「詩(うた)」になりそうな
    ものがもう……。
    野菜だってなかなかどうして自己主張するものが
    少なくないのである。
    (草食男子とかいって草や菜っ葉類は一般に軽く
     みられているが)
    
    かつて台所の主であった(現在は卒業)私として
    は、作者に並々ならぬ興味を抱いているのである。

    
    
    

新制作展 4

2009-10-17 14:53:54 | 芸術
    「海と少女」 佐藤泰生 作

    これをみた時、かつて子供の言語教育活動を
    していた頃に出会った、
    「うみがたずねてきた」 らくだ・こぶに 作
             (谷川雁さんの筆名)
    を思い出してしまった。

    日曜日、ヒトデが次から次へと魚やイソギンチャク
    など海の仲間を連れて遊びにくるという、詩情ゆた
    かな作品である。
    ……思い出しただけでも磯の香りがしてきそうな
    お話でもある。

    やがて夕刻になって友だちは帰ってゆく。
    賑やかに楽しく遊んだ後にくる寂しさ、ぽっかり
    穴のあいたような虚しさ……。
    これもまた一度ならず二度三度と、子供の頃に経験
    したことでもある。

    そして出会いの後には別れが、楽しさの後には必ず
    一種の虚脱感に襲われることが分かって、大人に
    なるのだ。
    つまり、大人になるということは、何事にもそう
    期待感を持たない、セーヴする自働制御装置なる
    ものを身につけることらしい。
    それは一定の枠を越えられない、限度ということを
    知ることでもある。

    かくしてつまらない人間になるのか、と思うと
    これまた寂しいことに思ってしまう。
    

新制作展 3

2009-10-11 17:11:33 | 芸術


     「突破」 加藤有造 作

    この彫刻(人物)は何を突破しようとしたのか。
    または、しようとしているのか。
    私にはむしろ、「咆哮」のように見える。

    作者がこれを創ろうとしたとき、何か内なる要
    求、これを創らなければならない必然があった
    のだろう。
    それなくして単なる興味や手先だけを駆使した
    作品など、とても人の心をとらえることはでき
    ないのだから。

    そんなことをあれこれ考えながら絵の展覧会や
    写真展を観るのが好きである。
    また、題のつけかたにも作者の意図が感じられ
    て興味深い。
    自分の内部にある必然性ーー
    やがてそれは、絵や彫刻だけでなく、文学でも
    同じであることに気づく。
    
    
    
    

    

    
   

    
    

閑話休題 台風

2009-10-08 16:54:08 | 雑記
     「新制作展」の途中だが、ここで台風の話を。
     
     「非常に強い」と怖れられた台風18号が日本
     列島を縦断して駆けぬけた。
     各地に死者を出すほどの被害をもたらしたが、幸い
     ここ南関東では予想していたより速く抜けてくれて
     午後には台風一過の青空となった。          

     天気予報でははやくから「飛ばされるようなものは
     家の中に入れて」といっていたので、夏中そとに
     出しておかれた我が家の観葉植物たちも、ようやく
     室内に入れられた。

     だが、そとに出てみると、落ちてる落ちてる。
     ばったばったと柿が。
     どうせ甘柿のはずなのに渋がぬけず、毎年鳥のエサに
     なってしまう柿なのだが……。
     (写真は落ちた柿と、紅葉した病葉ーーわくらば)

     子供の頃から、
     「南の海上○〇キロ沖で台風が発生しました」
     と聞くと、不思議でならなかった。
     台風のはじまりは何か?
     どうやって発生したのが分かるのだろう?

     小学校の理科的に解説するとこういうことらしい。

     日本のはるか南方、赤道に近い暑い海の上。
     強い太陽が照りつけて海水の温度が高いために、
     しめった熱い空気がたちのぼり、上昇気流が生まれる。
     その海面に向かって周りから、うずを巻きながら
     風が集まってきて、台風が発生する。
     
     こうしてできた台風は回転しながら移動するのだが、
     海水の熱によって、どんどん大きくなっていくの
     だという。
     ここまでくるとようやく天気図の台風のうず巻きと
     つながるのだが、この秋もあと何回か、天気予報の
     「台風発生」にドキッとするだろう。

     台風が去って静かになった今夕、
     金木犀の香りがいっせいに匂ってきた。

      

新制作展 2

2009-10-06 20:32:25 | 芸術
 



    「遺されしものへ」 木下 和
      ナイル 月光 ルクソール

   「遺された」というタイトルからして、なにか
   月と生命とのつながりというか、神秘的なもの
   を感じた。
   そういえば、赤ん坊の生まれるのと月の満ち欠け
   が関係あるという説もあるくらいだ。
   (本当かどうか分からないけど) 

新制作展 1

2009-10-05 20:41:56 | 芸術


    芸術の秋、六本木の国立新美術館でおこなわれて
    いる「新制作展」のお誘いをうけて行ってきた。

    もともと小野かおるさんによるゲーテの「ライネケ
    狐」(連作銅版作品)を観るのが目的であったが、
    それは昨年完結とかで、今年は小野さんの作品は
    なかった。

    絵、彫刻、スペース部門の3つがあって、どの作品
    も「新制作展」にふさわしく最先端をゆくものばかり。
    何の知識もない私は、製作者のエネルギーを感じれば
    それでいいのだと思った。

    それでも好きなものや気になる作品がいくつかあって、
    それらを順次載せていきたいと思う。
    
    
    
    

ブラジル移民百周年

2009-10-01 14:59:40 | 雑記
    昨年(2008)は日本人がブラジル移民として渡って
    ちょうど100年、今年は正確にいうと101年目  
    ということになる。
    群馬県大泉町には「日伯交流センター」というのが
    あって、そこの責任者であるT氏が時々その様子を
    知らせてくれる。

    ブラジル人学校「日伯学園」もあって季節毎の行事や
    スポーツを通じての交流がさかんなのだが、悩みは
    このところ学費が払えなくて学校をやめたり、
    ブラジルに帰らざるを得ない親子が急増しているの
    だという。

    日本は今やそれこそ100年に1度という不況下。
    学校に行かなくなったり、さらに帰郷したからと
    いって、子供たちに明るい未来は用意されている
    のだろうか。
    T氏はそれを心配している。

    写真は不況で職を失った子供たちの就学支援のために
    おこなわれたイベントの1つ。
    100時間ぶっ続けのギネスに挑戦したのだという。
    サンバの陽気さからはとても暗いニュースは想像で  
    きないが、せめて子供たちの夢は奪って欲しくない
    ものだ。